慶應義塾高校優勝など

 石破 茂 です。
 先般の台風7号による鳥取県東・中部の被災に対し、多くの方々からお見舞いの電話やメールを頂戴しましたことに厚く御礼申し上げます。
 先週末に鳥取市佐治町、八頭郡八頭町上私都地区、東伯郡三朝町の被災現場に、谷公一防災担当大臣や現地首長・県議さん方とともに入ってまいりましたが、橋の崩落や道路の損傷などの惨状を目の当たりにして、早期復旧への思いを強くしたことでした。
 本県はかなり早くからダム建設や河川改修などの防災対策に取り組んでおり、今回もこれに加えて完成後初の佐治川ダムからの事前放流を適宜行うなど、相当に的確な対応をしていたのですが、それでもこのような被害が出てしまうことに衝撃を受けています。災害発生の頻度が急速に上がり、復旧がやっと果たせたと安堵したらまた次の災害が発生するという事態となっており、ダムの能力向上や河川改修(それでも膨大な資金と長大な時間を要します)だけでは済まないのかもしれません。
 一昨年10月、横浜国立大学に日本初の台風研究専門機関である「台風科学技術研究センター」が開設され、台風制御の可能性を追求する「タイフーンショット計画」がスタートしたとの記事に接しました(雑誌「経済界」2023年10月号)。このような研究に対し、国家として可能な限りの支援をしていく必要性を痛感しております。
 ラジウム含有量日本一を誇る三朝町の三朝温泉では、名所である河畔の共同露天風呂や歴史的な建築で有名な大橋旅館の浴場が大きな被害を受けましたが、現地の方々やボランティアの皆様の懸命な努力により、9月初旬には河畔の露天風呂が再開されそうです。風評の払拭は容易なことではありませんが、嘆いてばかりいてもどうにもなりません。
 特産二十世紀梨のシーズンでもある鳥取の初秋は、本当に爽やかで素敵な季節です。全国の皆様、三朝温泉をはじめ、鳥取県は元気です!台風被害に負けずに頑張っている鳥取県に是非お越しくださいませ。

 昨日より福島原発のALPS処理水の放出が始まりましたが、これまた風評被害による水産物の価格が下落気味でいささか気がかりです。モニタリングを丁寧に行い、安全性を強く発信するとともに、価格に対する補償を迅速に実行することによって、漁業者の生活を守ることこそが政府・与党の使命です。中国の、ためにするとしか思われない輸入制限にも決して負けてはなりません。「漁業者に寄り添う」という言葉が実感していただけるように、最大限の努力を致してまいります。

 24日早暁の北朝鮮による衛星発射は、失敗に終わったとはいえ、我が国や周辺地域に対する大きな脅威です。同じ弾道ミサイルの技術を用いてはいても、ミサイルと衛星の発射とは大きく異なるものであり、国民に対する情報の発信にはより緻密さが要求されると感じております。宇宙空間で第一宇宙速度に達し、衛星となって地球を周回する軌道に乗るためには、弾道ミサイルとは初速等々が大きく違うはずで、「正しく怖れる」ためにもここをよく説明していく必要があります。
 一昨日午前4時からのニュースでは、沖縄県地方に向けて「頑丈な建物に非難し、近くにない場合は出来るだけ窓の近くから離れるように」との政府からの指示が繰り返されていました。ほかに手立てはなかったのでやむを得ないものだったのでしょうが、この指示の発信方法についても、一つ間違えれば大パニックにもなりかねないものであり、更なる工夫が必要です。大きな拒否的抑止力となるシェルターの整備の緊要性について、機運が高まるように努めてまいります。

 私の母校である慶應義塾高校が107年ぶりに優勝し(前回1916年は、慶應義塾普通部として第2回全国中等学校野球大会で優勝。甲子園球場はまだ建てられておらず、会場は豊中球場だったとか)、卒業生として本当に嬉しく思うとともに、半世紀も前の高校時代を懐かしく思い返したことでした。年間の半分近くがお休みで、特段の禁止事項はない代わりに自己責任が厳しく問われる、という実にユニークな(いい加減な?)学校でしたが、後輩諸君は文武両道に励んでいるようで、実に立派なものだと思いました。
 甲子園で流される「慶応高校校歌」は、幼稚舎(小学校)から大学院までの「慶応義塾塾歌」であって、「慶應義塾高校の歌」は別にあるのですが、結構いい歌なのに在校生の多くがその存在すら知らず、体育会の試合でもセレモニーでも全く歌われることのない、実に不思議な歌です。今は知りませんが、私が高校生時代、音楽を選択した者は一年生の4月にポピュラーな「塾歌」「若き血」「慶応賛歌」から「丘の上」「三色旗の下に」、果ては「福沢諭吉ここにあり」に至るまで、徹底的に慶應義塾の歌を教え込まれたもので(音楽の教師が女優の紺野美沙子さんの父上であったことは大学卒業後に知りました)、超マイナーな「慶応義塾高校の歌」が歌えるのはこのような人々に限られるのです。
 慶應社中総出の感もあった甲子園での応援ぶりがあまりに盛大かつ強烈であったことが一部で批判の対象となっています。神宮球場の春秋の早慶戦では当たり前の光景ですし、そこまで目くじらを立てることではないようにも思われますが、他人様に不快な思いをさせてはならず、品位の問題との指摘もあることですから、今後よく検討するに越したことではないのでしょうね。

 厳しい残暑が続いております。今年はこの時期になっても夏の終わりを知らせるつくつく法師の鳴き声が聞こえず、異様な感じがしております。夏の終わりの寂寥感が好きで、荒井由実の「晩夏 ひとりの季節」(1976年)を聴いてみたくなるのですが、晩夏も初秋もないままに季節が移っていくとすれば、なんとも味気ないことです。
 皆様、ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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石破茂
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