訴 状
令和2年2月13日
大阪地方裁判所 御中
原 告 籠 池 康 博
原 告 籠 池 康 博
被 告 酒 井 康 生
訴訟物の価額 3000万円
貼用印紙 11万円
請求の趣旨
1 被告は、原告に対し、金3000万円及び平成29年3月14日から支払い済みまで年5%の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
との判決並びに仮執行宣言を求める。
請求の原因
第1 当事者
1 原告は、学校法人森友学園(以下「森友学園」という)の理事長だった者である。原告は、2017年3月10日に同学園の理事長を辞任表明した。(甲1)。
2 被告は、2015年夏から同法人と下記の内容にて顧問契約(以下、単に「顧問契約」という)を締結していた弁護士である。
被告は、2017年3月14日、原告に対し、一方的に顧問契約を解除するとの意思表示をし、現在では森友学園の顧問弁護士ではなくなっている。
なお、顧問契約の詳細については、同契約書を提出して明らかにしたいところではあるが、検察庁に押収されており提出することができない。被告から提出していただきたい。
第2 不法行為
原告は、被告が、森友学園との顧問契約を一方的に解除することで原告に多大な精神的苦痛・負担が発生することを認識しながら、森友学園との顧問契約を解除したこと等により、精神的苦痛を受けたことを理由として不法行為に基づく損害賠償を請求する。
1 森友学園は、大阪市淀川区に本部があり、幼稚園を運営する私立の学校法人である。
2014年当時、同学園の理事長であった原告は、森友学園の小学校運営を視野にいれ、小学校建設のため大阪府豊中市にある国有地(以下「本件土地」という)の利用を検討するようになった。2014年8月20日には、小学校設置計画書を大阪府に提出し、同月29日に大阪府が同設置計画を正式受理した。また、同年10月31日、森友学園は小学校認可申請書を大阪府に提出し、これも受理された。
小学校設立に当たり、大阪府私学課との交渉や、本件土地の利用に当たっては近畿財務局との折衝が必要となった。
しかし、原告は法的には素人であり、法的な問題をすべて一人で判断することは困難であった。また、近畿財務局が原告との直接の面談ではなく、弁護士を通じてもしくは弁護士同席のもと交渉するよう申し入れてきたこともあり、主だった交渉を森友学園の顧問弁護士である被告に依頼するようになった。
2 2014年8月当時、本件土地につき、10年以内に売買契約を締結することを予定して2015年5月29日に定期賃貸借契約が締結された。その結果、森友学園は将来的な本件土地の購入を検討することになった。
森友学園は、2016年3月11日に本件土地の地下から新たなゴミが出てきたことをきっかけに、本件土地の売買契約成立を目指し、購入代金を含めた購入の交渉を近畿財務局や財務省を相手に始めたが、条件面の折衝は全面的に被告に任せていた。
2016年6月6日、森友学園はこれまでの折衝の結果、購入可能な金額の見込みがたったので、被告とともに近畿財務局に本件土地を買い受けたいと正式に申し入れ、同月20日に価格を1億3400万円とする売買契約(以下「本件売買契約」という)が国と森友学園の間で締結された(甲2)。
3 2017年2月ころ、本件売買契約の売却代金が不当に廉価なのではないかという報道が目立つようになった。その他にも現職の内閣総理大臣の妻をとりまく疑惑等が報道されるようになった。
同年3月9日には、大阪府教育長私学課による「学校用地・建物・視察」が行われた。森友学園の理事長であった原告は同日時点でも、まだ小学校の開校を望んでいたが、被告から小学校認可申請を取り下げるよう強硬なアドバイスを受けた。
被告は再三にわたり、①小学校の校舎建築を森友学園から請け負っている藤原工業が倒産するので、建物の建築が未完成となり小学校の開校は難しいこと、②加えて松井大阪府知事が「許可しない。」と記者会見で何度も述べたこと、③小学校の認可申請を取り下げても本件売買契約書第22条により用途指定契約が解除でき、ひいては学校運営以外にも使用できるようになるので、建築途中の校舎と本件土地を国と交渉して任意売却し、森友学園は民事再生申立をするのがよい、というものであった。
ちなみに、被告の小学校の認可申請を取り下げても本件売買契約書第22条により用途指定契約が解除できるという説明は誤っており、小学校運営の為以外に本件土地を利用することはできなかった。
また、小学校認可申請を取り下げないのであれば、今すぐ顧問契約を解除するとも伝え、さらに、被告や被告が所属している法律事務所は民事再生手続きの経験が豊富なので、森友学園の役に立てる、とも述べた。
原告には、被告が述べる①や③が本当のことであるのかは判断がつかなかったが、これまで本件土地購入に当たり、全面的に近畿財務局や財務省大阪府と折衝を重ねてきた被告がそこまでいうのであれば、合理的な理由は理解出来なかったが、被告に全幅の信頼をよせていたのでそれが最善の方針だと思わざるをえなかった。原告はそれほどまでに追い込まれていた。よって、原告は小学校認可を取り下げる決断をするしかなかった。
4 同年3月10日午前中に、原告は塚本幼稚園の保護者への説明会を行った。また、この保護者説明会を行っている間に被告は森友学園の小学校の認可申請の取り下げ手続きをとった。
午後3時過ぎ、被告は、突然原告に対し、小学校の認可取り下げをしたことを世間に報告するため、記者会見を一刻も早く行うべきだとアドバイスをし、被告自身がマスコミ各社への通知を行った。原告は、被告から、記者会見での発言内容について注意すべき点等についてアドバイスを十分に受けることもないまま、急遽設けられた記者会見を行うことになってしまった。なお、突然のことで会場を見つけることもできなかったので、塚本幼稚園で行った。
被告は会場内には居たが、同席を求める原告の要請を理由無く断り、記者からの質問に対する原告の回答にアドバイスすらせず、早く帰りたいとしきりに言っていた。
なお、同日、原告は森友学園の理事長を辞任したので同会見で会わせて報告した。
5 2017年3月14日、被告は一方的に森友学園との顧問契約を解除すると原告の携帯電話に架電し一方的に通話を切った。解除理由として、原告がマスコミに被告との打ち合わせなく話してしまうので被告が想定している方向性と違うということを挙げていた。
2017年3月9日に「小学校の認可申請を取り下げないのであれば顧問契約を解除する」「同申請取り下げ後の民事再生手続きには協力する」と言っていた被告のアドバイスに従って同認可申請を取り下げた原告にとっては寝耳に水であった。
また、2017年3月10日の記者会見のときにも同席せず、マスコミの矢面に一人で立たせておきながら、マスコミに被告との打ち合わせなく話してしまうという理由は納得できなかった。
また、同年3月10日の記者会見以降、原告や原告が森友学園の理事長を辞任後に理事長に就任した原告の長女(以下「新理事長」という)は、被告からマスコミへの対応につき具体的な注意やアドバイスを受けたことはなかった。被告から、弁護士との打ち合わせなくマスコミに情報を流さないようにという注意もなかったし、原告も新理事長も被告との打ち合わせなくしてマスコミに情報を流さないという約束もしていなかった。
かかる事情があったにもかかわらず、顧問契約の解除を渋る森友学園の意向を汲まないまま、被告は強硬に顧問契約の解除を申し入れ、森友学園が同意しないまま顧問契約は解除されてしまった。
6 解除後の混乱
被告が顧問契約の解除の意思表示をした2017年3月14日時点では、本件土地の売却価格が不当に廉価であること等が連日マスコミで取りざたされていた。
原告自宅や塚本幼稚園には記者がたくさん押しかけ、森友学園の元理事長である原告に事情の説明を求めた。しかし、原告は本件土地の売買契約に当たり、主要部分はほぼすべて被告を信頼して被告の判断に任せていた。また、突如の顧問契約解除がなされ解除後のフォローは一切なかったので、被告が折衝していた近畿財務局や財務省との折衝内容は同契約解除前に原告や新理事長に引き継がれることもなかった。突然の解除だったので原告や新理事長から折衝内容につき詳細に質問することもできなかった。
本件土地売却価格が相当であるかどうかを記者らから問われても、売買契約締結に至る経緯をおぼろげに認識しているだけの原告は相当価格であるという具体的な説明ができなかった。
合理的な説明ができず不自然な答弁に終始する原告に対し、世間は疑惑の目をむけるようになり、批判・バッシングにさらされた。
被告が、近畿財務局や財務省との折衝内容について原告や新理事長に伝えたり、同人らから被告に質問する機会すら与えることなく突如一方的に顧問契約を解除したことにより、原告はマスコミから不当に廉価で本件土地を購入するよう仕向けたとの批判・バッシングにさらされ、多大な精神的苦痛を被った。
原告の精神的苦痛を慰藉するのに必要な額は3000万円をくだらない。
第3 結論
よって、原告は、被告に対し、不法行為に基づき、金3000万円及びこれに対する平成29年3月14日から支払い済みまで年5%の割合による遅延損害金の支払いを求める。
以上
添付資料
1 訴状副本 1通
証拠資料
1 甲第1号証 全部事項証明書
2 甲第2号証 国有地財産売買契約書