石破 茂 です。
今週、ウクライナ情勢に関する党内会議では、「プーチン大統領の非道を許さないために、更に毅然とした経済制裁を加えるべきだ」「ロシアと敢然と戦うゼレンスキー大統領の演説を日本の国会でも(映像で)聞くべきだ」「我々日本人はウクライナ国民と共にあり、避難民の積極的な受け入れを行うべきだ」などの意見が主に出されました。
留意点としては、ロシアをSWIFTから切り離すだけではなく、二次制裁が必要となるであろうこと(例えばロシアの銀行をアメリカが制裁対象とし、対象銀行と取引をした銀行はアメリカ国内市場でのライセンスを失う、などの仕組み)と、天然ガスの多くをロシアに依存している欧州諸国のダメージをどのように補うか、ということがあります。
以前も触れたことですが、東部ドンバス地方に紛争を抱えるウクライナは、現状においてはNATOには加盟できませんし、そのことはウクライナ政府自身もよく承知していたことです。「ウクライナをNATOに入れないことを約束することが中立化であり、これが停戦の条件である」という交渉がロシアに対して有効かどうかは見通せません。
しかし、アメリカが最初から軍事力の使用を明確に否定してしまったことが、結果的にプーチン大統領に誤ったメッセージを送った可能性は高いと言わざるを得ないのではないでしょうか。
たしかにウクライナはNATO加盟国ではないので、「防衛する義務」はどこも負わないのですが、それがすなわち「防衛しない」ということには直結しません。湾岸戦争の際は、アメリカはクウェートと条約上の同盟関係がないにもかかわらず参戦しました。これは国連安保理決議に基づくものだった、今回はロシアが当事者なので安保理決議が出るはずがない、という方もおられますが、それでもイラク戦争のような「有志連合」の可能性はあり得ます。
もちろん、私もこの戦争が拡大することをなんとか阻止すべきだと思っています。
しかしウクライナが核兵器を撤去する際に交わされた「ブダペスト覚書」にはロシアと共にアメリカ、イギリスもウクライナの「安全を保障する」当事国となっています。今回、ロシアは「覚書によって負う義務は核攻撃をしないことだけだ」などという意味不明の解釈で自国の主張を正当化していますが、「安全の保障」とは一体何を意味するものだったのか、と考えると、暗澹たる思いがします。
ウクライナを日本に置き換えてみれば、日本で核保有や核の持ち込みに関する議論が提起されているのは、ある意味当然と言うべきであって、条約や覚書の実効性は厳しく問われなくてはなりません。
今週、自民党内では拡大抑止について議論する機会がありましたが、時間的な制約もあり深く立ち入ることがありませんでした。
外務省北米局長や国連大使を歴任された佐藤行雄氏は、その著書「差し掛けられた傘」(時事通信社刊・2017年)の中で、核の傘の信頼性を維持するためには
① 米国が、第三国が日本を攻撃した場合には、米国自身が核報復を受ける危険を冒してでも核兵器を使用する、という強い決意を予め示すこと
② 日本を攻撃しようと考える第三国が、日本を攻撃すれば米国から核を含む報復を受ける、と考えること
③第三国が日本を攻撃した場合には、アメリカが核の使用も辞さずに反撃する、と日本が信じること
という三つの条件が必要となる、と論じておられますが、この三条件が日・米・第三国において現在どれほど満たされているのか、思考停止に陥ることなく検証してみなければなりません。
故・清水幾太郎教授は、著書「日本よ、国家たれ」(文藝春秋刊・1980年)の中で、日本の核保有の必要性を説いて世の囂々たる非難を浴びましたが、これももう一度よく読み直してみたいと思います。片山杜秀・慶大教授は「『日本よ、国家たれ!』この名セリフは『改憲』と『反米』と『愛国』と『核』を強力に接着する。『清水幾太郎の時代』が再び巡ってくるのではないか、どうもそんな気がする」と述べておられ、この言葉は随分と示唆的であるように思います。
13日日曜日には自民党大会が開催されました。「ウクライナを支持し、ロシアには毅然と対応する」「デジタル田園都市構想を推進する」等のスローガンを強調した、参議院選挙に向けた決起大会的な色彩が濃い大会であったように思います。
「皇位の安定的継承についての早急かつ真摯な取り組み」と、「『政治とカネ』の問題について自ら襟を正す姿勢」を示せればなお良かったのに、と感じたことでした。
明日19日土曜日は親族の集まりである「盤山会」総会・国政報告会(午前11時・鳥取市内。「盤山」は亡父の雅号)。
20日日曜日は鳥取市長選挙・深沢義彦候補予定者出陣式(午前9時・鳥取市新町事務所前)、倉吉市長選挙・広田一恭候補予定者街頭演説会(午前11時半・打吹回廊・倉吉市明治町、12時45分・JA関金支所・関金町大鳥居)ならびに街頭宣伝移動、という日程です。
選挙区内に二つしかない市の市長選挙が同日に行われます。深沢氏は3期目の挑戦。新人の広田氏は3期12年の間、安定して誠実・実直な市政を運営された石田耕太郎市長の後継者で、鳥取県中部総合事務所の元所長です。
両市とも、現市政を安定的に継承していただけるようにと望んでいます。
三連休には、「日本よ、国家たれ」「差し掛けられた傘」の他、「国際連合という神話」(色摩力夫著・PHP新書・2001年)も読み返してみたいと思っています。以前に読んだ本でも、その内容を正確に記憶していないものが多くあり、きちんと理解していなかったことを深く反省させられます。
今日の都心は冷たい雨の降る夕刻となっています。
明日から三連休の方も、お仕事の方も、どうかご健勝にてお過ごしくださいませ。