石破 茂 です。
横浜市長選挙は立憲民主党や社民党の推す元横浜市立大学教授の山中竹春氏が当選し、前国務大臣の小此木八郎氏は大差で敗れるという結果となりました。
知名度も低く、政治的実績も無く、手腕も未知数の山中氏が当選したのは、偏に「候補者中唯一のコロナ専門家」という謳い文句と、コロナ感染急拡大に対する政府の対応への不満が大きな相乗効果をあげ、候補の人柄や能力・識見はほとんど等閑視されたことによるものと思います。「誰も市長選に出ないのなら自民党神奈川県連会長の自分が責任を取って出る他はない」「統合リゾート(IR)には『カジノで負けた人の負担で街づくりを推進することは望まない』との市民の声が多いことを考えれば反対せざるを得ないが、中止によって不足する街づくりの財源を作るための具体的な方策を示さなければならない」という小此木氏の、自らの損得を度外視した決断が、ほとんど評価されなかったことはとても残念なことでした。
今まで自民党は、野党に対する有権者の評価の低さに助けられてきたのですが、実際にどうであるかはともかく、「代わり得る」と目される勢力が出てくれば今の優位は脆くも崩れ去る、ということが明らかになりました。
「野党が駄目だから自民党、という消極的支持では駄目で、自民党がいいから、という積極的な支持を得なければならない」と政権奪還時から言い続けてきたのですが、あまりの野党の無気力ぶりに助けられているうちに、自民党の実力も、有権者に対する怖れの気持ちもじわじわと低下し続けてきたのは間違いありません。
「菅政権に痛手」「自民党内で次の総選挙が菅総理で戦えるのかとの声高まる」的な報道が開票日以来とても多くなっているのですが、選挙の本質であったはずの「横浜市が今後どうなるのか」という視点が欠けていることに、政治家の孤独と民主主義の恐ろしさを改めて感じています。
この選挙の応援を通じて感じたのは、東京都議会議員選挙と同じく、有権者の政治に対するむき出しの怒りでもなく、もちろん熱狂的な激励でもない、冷ややかな視線でした。一方、投票率は横浜市長選挙としては平成に入ってから二番目に高いものでした。これは、有権者の「政治を変えるのだ」という強い意志の表れだったに相違なく、政治家や政党のその場しのぎに映る対応は、見事に見透かされていると言えるでしょう。甘い楽観的な希望的観測は絶対に禁物です。
総選挙や自民党総裁選挙について、多くのご意見やご指摘を全国各地の自民党支部組織や党員、一般の有権者から頂戴しております。有り難うございます。今は己の立場や利害得失を一切捨てて、沈思黙考、熟慮を重ねなければなりません。
皆様、ご健勝にてお過ごしくださいませ。