貧困の連鎖を断ち切る
低所得であるなど、生活をすることに精一杯で教育などにお金をかけることができない家庭で暮らす子ども達が、教育を十分に受ける機会が奪われ貧困から抜け出すことができない「貧困の連鎖」。
とりわけ深刻なのがひとり親家庭の貧困。OECD諸国の中でひとり親の子どもの貧困率50%をこえ、先進33か国の中で最下位。つまり、諸外国と比較しても、日本における子どもの貧困問題は看過できないレベルに達していると言える。
■ 大学進学率(令和3年度:名古屋市)
男子 60.3%
女子 64.6%
総計 62.5%
・大学進学率は高等学校卒業者のうち、大学の学部・通信教育部・別科、短期大学の本科・通信教育部・別科、放送大学、高等学校・特別支援学校高等部の専攻科へ進学した者の割合
・文部科学省 「学校基本調査」による。
・対前年比0.8%増え進学率は過去最高を記録
・進学率は政令市20市のうち10番目
一方、生活保護世帯出身者の大学進学率は年々改善されているものの、生活保護家庭における大学進学率は依然厳しい。
■ 生活保護世帯出身者の大学進学率の推移(令和3年度:名古屋市)
令和2年度 39.3%
令和3年度 41.8%
以前に比べかなり改善は進んだものの、以前格差は歴然としている。もちろん、大学に進学しなければ貧困が連鎖すると短絡的に述べるつもりはないが、大学に進学する機会を誰もが均等であるためにも、貧困家庭に対する財政的な支援はより拡充されるべきだ。
そして、私自身が子育て支援施設の運営をする中で、財政的支援だけで貧困がなくなるとは到底思えない事案が散見されることを申し述べたい。いわゆる親の養育能力不足の問題。ご家庭でお風呂に入ることができない子どもの体を保育園で洗ったり、朝ご飯を食べることができない子どもたちには特段の配慮をしながら保育園で給食を提供したり、保育園まで送迎できないご家庭にはご自宅まで子どもをお迎えに行ったりなどに腐心している保育園は決して少なくない。子どもの保育料や小学校の教材費等を公費で支援するなどの財政的支援だけでは貧困の連鎖はけっしてなくならないことも私たちは十分理解する必要がある。
「貧困の連鎖」を断ち切るには、財政的な支援とともに保護者の養育能力を補完する家庭支援のあり方、子どもの自己肯定感や意欲の喚起なども今後課題となるだろう。