憲法53条改正など

 石破 茂 です。
 11日木曜日、今国会において初めての衆議院憲法審査会が開催されましたが、議論は今までの延長線上で何らの進展もなく、実に虚しい思いが致しました。
 何の理由かさっぱりわかりませんが、開催時間は午前10時から11時半の1時間半で、最初に自民党から有志の会まで各会派の7人の幹事が1人5分ずつ意見を述べて40分以上が経過、その後委員の自由討議に移るのですが、これも審査会長が与党と野党各会派を交互に指名するため、人数の多い自民党の委員は発言意思を示す名札を立ててもほとんど指名されないままに「まだ発言を希望されている委員もあるようですが、時間も参りましたので本日はこれにて閉会と致します」との審査会長の終了宣告でジ・エンド。これで議論が深まるはずもなく、このようなことで国民に国会の本気度が伝わるなどとはとても思えません。
 日本維新の会は立憲民主党が意図的に審議を遅らせていると口を極めて非難していますが、確かにそのような面はあるにしても、意見の分かれる第9条や教育無償化に拘泥することなく、すべての改正に絶対反対の立場である共産党は除き、立憲など他の野党も乗れるような条項から先に議論するという手法もあってしかるべきだと思います。自民党として党議決定した平成24年憲法改正草案と野党の主張には、いくつかの共通点もあるのです。

 例えば、憲法第53条は、衆参いずれかの議院の総議員の4分の1以上の要求があった時、内閣が臨時国会の召集を決定しなければならないことを定めますが、その期限が設定されていないために、要求があっても内閣が召集を引き延ばす例が過去に何度か見られました。自民党の平成24年草案では、「内閣は要求があった日から二十日以内に臨時国会の召集を決定しなければならない」としており、これなどは与野党の多くが一致できる例の一つだと思います。
 昨年9月12日、最高裁第三小法廷は、2017年に安倍内閣が臨時国会の召集要求に98日間応じなかったのは違憲だとして野党議員らが起こした訴訟(憲法53条違憲国家賠償等請求事件)の判決で、憲法第53条は個々の国会議員の権利を保障したものではないとして請求を棄却しましたが、宇賀克也裁判官(行政法学者出身))は「臨時国会での審議を妨げられるのは議員の利益の侵害」として反対意見を付けました。学説も「臨時国会の召集があまりに遅れては、召集要求権の制度は無意味になる」として「国会開会の手続きのために客観的に必要とみられる相当の期間内で、できるだけ速やかに召集されることが決定されなければならない」と論じています(清宮四郎・憲法Ⅰ新版・法律学全集3・有斐閣)。臨時国会の召集要求は国会議員の権利であるとともに、主権者である国民の権利でもあるはずで、この行使が内閣の恣意で妨げられることは民主主義の根幹にも関わることだと思います。
 憲法は改正できるのだ、という、一種の成功体験を、主権者である国民と、その代表である国会議員がともに経験することができれば、日本国憲法の捉え方は大きく変わると思います。ですから、迂遠なようでも、まずは国民の理解と賛同を得やすい条項から始めるべきだと私は思っております。

 台湾の地震で被災された方々に心よりお見舞いを申し上げます。
 それにしても、地震発災から3時間で個室テントや簡易ベッド、シャワー用のテントなどが完備された避難所が開設されるなど、今回の地震の被災者に対する台湾の迅速な対応、官民の連携は実に見事なものだと感心させられました。台湾やイタリアでできることが何故日本ではできないのか、防災省(名称は防災庁でも国民保護庁でも何でも構いませんが)設置の必要性を改めて痛感させられたことでした。

 今回の日米首脳会談において、日米の連携強化が確認されたことは意義あることだったと思います。ガザ情勢についてハマスのテロ行為を強く非難したことは当然ですが、イスラエルの軍事行動も明らかに自衛権の範囲を逸脱したものがあり、この点についての言及がなかったことは残念に思いました。
 かつて大平正芳内閣の伊東正義外相は1980年の国連総会演説において、「我が国は、公正かつ永続的な中東和平の実現のためには、イスラエルが全占領地から撤退し、かつ国連憲章に基づき、パレスチナ人の民族自決権を含む正当な諸権利が承認され、尊重されなければならないと考える」「パレスチナ情勢の悪化の第一次的原因は占領地におけるイスラエルの入植地の建設など、イスラエルの占領政策に起因していることは非常に遺憾なことであり、イスラエルが国際社会の声に素直に耳を傾け、平和的な話し合いに応じる勇気と柔軟な態度を示すよう切に願う」と述べており、ここには日本国の決然たる意志が感じられます。
 今から半世紀近くも前のことだ、時代が違う、と言ってしまえばそれまでですが、ここには積極的に平和国家たろうとする日本国の矜持が明確に示されているようで、改めて感動に近いものを感じたことでした。

 来週火曜日16日には東京、島根、長崎において衆議院の補欠選挙が始まります。東京と長崎は自民党が不戦敗の様相ですが、隣県の島根だけは何とかがんばりたいものです。強い逆風の吹く、極めて困難な情勢の中ですが、山陰から日本国と自民党の再生を図るため、応援遊説など、出来る限りの支援をして参りたいと考えております。

 久しぶりに憲法学の教科書を読んでみると、かつて学んだことをほとんど忘れてしまっていることに愕然とします。赤線が引いてあるので確かに読んだはずなのですが、49年の月日の経過がなせる業なのか、それとも実は全然理解できていなかったのか、なんとも悲しいことではあります。

 今週前半の春の嵐で都心の桜はほとんど散ってしまいました。今年もお花見をする機会はありませんでしたが、いつかは楽しんでみたいものです。この時期になると麗美の「花びらの舞う坂道」(1985年 作詞・作曲:松任谷由実)を聞いてみたくなります。あまりヒットはしませんでしたが、この季節に相応しい佳曲です。
 皆様、ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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