スナク首相メッセージなど

 石破 茂 です。
 日本ではあまり報道されませんでしたが、先日の英国議会において、総選挙で大敗北を喫して政権を去るスナク首相が最後の演説でスターマー次期首相に対して送ったメッセージは感銘深いものでした。議席を失った多くの保守党議員に謝罪しながらも、それが国民の意思であることを謙虚に受け止めるべきと述べたうえで、スターナー氏との意見の違いを認めつつも同氏を心より尊敬しているとし、新政権が有権者の意思で誕生したことに敬意を表し、良い働きが出来ることを祈ると語ったそうです(立川福音自由教会・高橋秀典牧師のブログによる)。有権者に対する畏れの気持ちを持ち、争った相手を敬う謙虚さは、すべての政治家が持つべき姿勢だと強く思います。

 

 前回の当欄で、1944年8月5日にオーストラリアで起こった日本人捕虜集団脱走事件である「カウラ事件」について書いたところ、「オーストラリア兵も残虐だった」とのコメントをいくつか頂きました。オーストラリア兵だけではなく、米兵などによる日本兵に対する残虐行為があったことも指摘されており、研究もされています。それも含めて、戦場とは「平時の人間の常識を遥かに超えた狂気の世界」であることは間違いのない事実であり、それは今後も変わることがないのだと思われます。綺麗事を言うつもりも、安易な「パシフィズム」に与するつもりもありません。こういった「戦争の狂気」をよく認識した上で、冷静かつ徹底的に抑止論を追及し、政策として具体化するべきものだと痛感しています。
 オーストラリア関連では「カウラ事件」の他に、1942年2月、シンガポールとインドネシア間の海峡にあるバンカ島で発生した「バンカ島事件」(日本軍によってオーストラリア兵や陸軍従軍看護婦らが殺害されたとされる事件)も、最近知りました(インドネシア領であるバンカ島は今、リゾート地として賑わっているそうです)。
 日豪関係はいま、「理想的な二国間関係」と言われるまでに発展していますが、ここに至るまでには大変な先人たちの尽力があったことを決して忘れてはならないと思っております。私は個人的には、防衛庁長官在任中から、アメリカ・オーストラリア・ニュージーランド三国からなる「UNZUS(アンザス)条約」に日米安保を加えた集団安全保障体制(仮に「JUNZUS(ジャンザス)と呼んでいました)が構築できないかと考えています。もちろんこれには、我が国の集団的自衛権についての考えの再考が必須です。

 

 昨8月1日、自民党青年局の役員が岸田総裁に対して、総裁選挙の期間は長くとること、自民党が行なっている「全国車座対話」の総括を党本部の政治刷新本部において行うこと、等について申し入れたとのことです。彼らの主張は誠にもっともだと思いますし、前回当欄で述べたことと共通するところ大ですが、これを執行部がどのように取り扱うのか、自民党の地方組織はこれを注視しているものと思います。
 33年前、当時当選二回であった我々も、青年局のメンバーとして何度か当時の海部俊樹総理・総裁に申し入れをしたものでした。政治改革本部長であった伊東正義先生から「キミ達若い者こそが国民の一番近いところに居るのだ。キミたちが行動しないで国民の声が政治に届くことはない」と叱咤されたことを思い出しました。

 

 今週は「縮んで勝つ 人口減少日本の活路」(河合雅司著・小学館新書・最新刊)を大変面白く読みました。同氏の一連の著作における主張をコンパクトにまとめたもので、極めて示唆に富むものです。
 今月7日に、倉重篤郎氏が私との対談をまとめた「保守政治家」が講談社より発売になります。ご高覧頂ければ幸いです。
 酷暑の折、皆様ご自愛のうえ、ご健勝にてお過ごしくださいませ。

 

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石破茂
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