新型コロナウイルスなど

 石破 茂です。
 武漢から帰国された方々のこれまで、そしてこれからのご苦労は大変なものと思いますし、人権尊重の重要性も理解しているつもりですが、それを十分に承知の上で敢えて言えば、帰国された方々が精密検診を受けた後、国が用意したホテル以外に自宅でも待機が可能という対処方針が採られているのはどうにも釈然としません。
 潜伏期間が14日あり、現在発症しておられない方が自宅待機中に発症され、ご家族が罹患し、それが拡がる事態は容易に想定されるのではないでしょうか。コメント欄でもご指摘のようにホテル(あるいはクルーズ船)などに離隔(りかく)し、十分な休養と栄養を取って頂き、潜伏期間が了して無事が確認された後にご自宅にお帰り頂く方がより望ましいのではないか。風評被害も懸念されますが、これには政府による補償などで可能な限りの対応をするしかありません。
 決定的な対処法はまだ発見されておらず、今のところ免疫力を高める他はないようです。かつてペニシリンの発見前の結核の対処法がサナトリウムなど環境の良いところで療養して免疫力を高めるしかなかったことと類似するのかもしれませんが、結核と比して期間ははるかに短く、感染拡大のリスクと比べればまだ負担は少ないように思います。このようなことは政府内で散々議論され、その上の結論なのでしょうが、危機管理という点で万全なのかどうか、常に気を配り不断に検証する必要があります。1918年から1919年にかけて世界的に爆発的に流行し、全世界で5億人が罹患して5000万人が死亡し、日本でも48万人が死亡したと推計されるインフルエンザ(スペイン風邪)の例もあり、感染症を甘く見るべきではありません。人権と危機管理、これは憲法の緊急事態条項を設ける議論とも通底するものです。

 国際経済に与える影響で2003年のSARSとの比較が論ぜられることがあります。その時の世界全体のGDPに与えた影響は-0.1%と比較的軽微なものだったのですが、当時と比較して中国経済の世界全体に占めるシェアは当時の約4倍の15.8%となっており、この点注意が必要です。国内経済に与える影響は2500億円にもなると推計されており(大和総研)、現金取引の割合の多い観光・料飲業は特に深刻です。政府は状況を早急に把握し、緊急融資などの支援策を講じなければなりません。韓国からの訪日客激減に加え、今回の中国からの訪日客激減はダブルで影響を与えています。感染拡大阻止が第一であることは当然ですが、担当部局は異なるのですから対応を急がなくてはなりません。

 27日、28日の衆議院予算委員会は、一部の傾聴すべき議論の他は「桜を見る会」やIR問題に終始し、残念なものとなりました。テレビ中継を観ていた国民も呆れ果てているように思います。
 経済・財政・社会保障・外交・安全保障・災害対策等々、令和元年度補正予算を審議するにあたって予算委員会で議論すべきことは山積しており、このような問題に徒に時間を費やすことは国会の国民に対する背信にも等しいものです。しかし一方、総理が「間違っていた、すまなかった」と最初に一言仰れば、その後の展開は相当に異なるものとなったのではないか、という思いもあります。
 この世に無謬の人など存在せず、誤りも当然ありますし、ご自身の後援会の方々を慰労して晴れ姿を見てもらいたいというお気持ちがあったとすれば、同じ議員としてはよくわかります。しかしそれは「桜を見る会」の本来の趣旨とは異なっており、招待基準が曖昧なことが原因ではなかったかと仰れば、総理はさすがに潔い、と評価が高まるのではないでしょうか。それでもなお野党が執拗に追及を続けるようであれば、今度こそ批判の矛先は彼らに向かうことになるでしょう。
 予算案の審議を国会にお願いしているのは政府なのであり、誠心誠意、あらゆる手立てを講じて予算案の内容を審議できる環境を整える責任は政府側にあります。予算は成立すればそれでよいのではなく、内容を国民にご理解いただくことこそ肝要であり、予算委員会は本来そのための場なのです。政権のためでも、自民党のためでもなく、日本国のためにそうあってほしいと切に願います。

 昨年の参議院選挙の前に河合前法相夫妻に1億5000万円もの資金が渡されていたとのこと、それ自体は全く違法ではありませんが、その巨額の資金は一体どのように使われたのでしょうか。一度でも国政選挙を体験した者なら疑問に思うはずですが、ウグイス嬢への支払い(たとえ倍額払ったとしても)や事務所設置費用などにそのように巨額のお金がかかるものなのでしょうか。数度にわたる宣伝文書の全戸配布に巨額の資金がかかったとの見方もありますが、自ら疑念を払拭する努力をしていただきたいものです。
 自民党本部の世論調査の正確性には定評があり、接戦区は特に頻繁・綿密に調査を行います。その結果、確かに河合案里候補は序盤劣勢だったのでしょうが、他にも劣勢が明らかで、実際に落選してしまった有為な公認候補も多くいたはずです。そのような状況の中でなぜ彼女に破格の厚遇が与えられたのか、なんとも腑に落ちません。
 各地を廻っていると「自分たちの納めた党費があのように使われていたのならもう党費は払いたくない」とのお声を何度か聞き、これは由々しい事態だと思いました。自民党にとってはコアの支持層の離反が一番恐ろしいことであり、何としても避けなければなりません。政党の運営には国民の税金を原資とする政党助成金も含まれているのであり、説明責任を果たすことは党員のみならず納税者に対する責任です。日本では憲法にも政党の規定はなく、政党法すら存在していませんが、総務会で出た多くの意見に幹事長はじめ執行部が賢明な対応をしてくださることを期待します。
 自民党の平成24年憲法改正草案では、第4章「国会」に第64条の2を新たに設け、政党に関する事項を法律で定めることとしています。自民党内でも全く議論になってはいませんが、憲法改正に当たって政党の位置づけは極めて重要な論点です。

 週末は、2月1日土曜日が公明党鳥取総支部 新年賀詞交歓会(東部会場・午前11時・鳥取市内、西部会場・午後3時・米子市内、中部会場・午後6時・倉吉市内)、小川家住宅・庭園訪問(午後1時・倉吉市内)。
 2月2日日曜日は北九州市折尾地区訪問(午前11時・北九州市八幡西区)、九州共立大学「水と緑とまちおこし」シンポジウムで講演(八幡西区自由ケ丘)、自民党八幡西支部研修会で講演(午後3時半・こどもの館・八幡西区黒崎)、関係の皆様との夕食懇談会(北九州市内)という日程です。3日月曜日はBS-TBS「報道1930」に出演の予定です(午後7時半~)。
 この冬、鳥取市は1961年の観測開始以来初の降雪ゼロの日が続いています。もしかすると今年は生まれて初めて雪を見ない年になるのかもしれませんが、なんだか気味の悪い気が致します。
 私が子供の頃(昭和30年代~40年代)は70センチ程度雪が積もるのは毎年のことで、大雪の日は小学校が休校となり、鳥取砂丘へのスキー遠足に切り替わったことは懐かしい思い出です。異常気象は夏から秋にかけてだけではありません。夏の水不足で日常生活や農業に影響が出ることに今から対策を考えておく必要があります。
 今日で1月も終わります。皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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石破茂
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