「VERDAD」連載「田中康夫の新ニッポン論」Vol.97 「帰納法 弁証法」

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帰納法的挑戦こそ、弁償法的思考の基本です。こういう具合の社会になったら嬉しいな、と市井(しせい)の老若男女が願っていた事柄(コンテンツ)を、「的確な認識・迅速な決断と行動・明確な責任」で為政者や経営者が実現する際、法律や経験等の「実績」を踏まえて解法を見出す従来型の演繹法的思考は逆に、海図なき激動の時代に於いて袋小路の隘路(あいろ)へ陥る蓋然性(がいぜんせい)が高いのです。

「地方自治法を一行も読んでいないから、田中康夫は田中康夫たり得る」。「敢えて法律を読まずに寧ろ自分の勘を大切にし、一生懸命に暮らしている人の姿を見ながら政策を考え、既成概念や固定観念から自由である」。

人口1500人、高齢化率40%。予算総額20億円。天竜川が穿入蛇行(せんにゅうだこう)する伊那谷南端に位置する“寒村”の泰阜村(やすおかむら)で、努力を重ねて捻出した年間1億円を全て訪問介護、在宅福祉に振り向けた畏兄・松島貞治(まつしまていじ)前村長。『「脱・談合知事」田中康夫』(扶桑社新書2007年)に於ける彼の述懐です。

長野冬季五輪“宴の後”の利息返済額だけでも1日辺り1億4812万円に達し、財政再建団体転落寸前だった信州・長野県。在任6年間、全国47都道府県で唯一、毎年度の借金を計923億円減少。基礎的財政収支(プライマリーバランス)も連続黒字化。全国初の小学校30人学級を全学年導入。実質経済成長率5%を達成。

それは不毛な二項対立「緊縮財政(ざいむしょう)VS放漫財政(MMT)」を超えた、「人が人のお世話をして初めて成り立つ福祉・医療・教育への積極投資こそ、地域に確かな雇用と活力を生み出す」との直感的信念(フィロソフィー)に基づく取り組みでした。他方で近時、演繹法的OS(おつむ)「意識高い系」がAI(どれい)、DX(めくらまし)と惹句(じゃっく)を羅列しても、収集力と分析力の「勘性」を併せ持たぬ輩は咀嚼(そしゃく)出来ずに大海原「データサイエンス」で“溺死(できし)”の羽目に陥ります。

全国20政令指定都市で唯一、市立中学校に給食が未導入。「第2期食育推進計画」を掲げるも昼食時間は僅か15分。今春から「デリバリー型給食」と銘打って導入の「パソナ案件」とも囁かれる常温以下の弁当を、市議会の日本共産党も肯定的だった横浜市にこそ帰納法的挑戦が不可欠です。

シャンソン歌手として知られ、ガラス張り知事室で対談したイヴ・デュテイユ村長の招きでW嬢と呼ばれし妻の惠とパリ東方のプレシー・シュル・マルヌ村を訪れたのは2003年11月17日。何れも人口500人前後の近隣3村が共同で同村に設けた木造の給食堂に感銘します。その前年にフランス政府の依頼で「子どもの権利条約」の歌を発表していた彼は設立理由を解き明かしてくれました。

昼休みは1時間半。自宅へ戻って食する選択を認めた上で、作り手の相貌が見えないから子供達の残飯も増える給食センター方式を採らず、他の2村の児童は専用バスに乗って集い、調理担当者から献立の説明を受け、温かい給食を愉しむのです。個人に立脚した地域自律性。経済性と人間性の止揚(アウフヘーベン)を図る取り組み。新自由主義の走狗(そうく)と揶揄されるエマニュエル・マクロンすら「文化は明日の経済の支柱」と述べるのがフランス。

日本は文部科学省が牛耳る全国学校給食会連合会=全給連傘下の都道府県学校給食会が食材の供給を一手に握る、組織に拘泥(こうでい)した中央集権性。彼我(ひが)の違いを痛感した僕は、県下120市町村の同意を得て月に1度、全て信州産で賄う「地域食材の日」を設けました。

而(しか)して今や1人当たりGDPも労働生産性も日本を凌駕する韓国ではソウル市を筆頭に小中高校の給食無償化が実現。一人の栄養士(キム・ミンジ)が考案した画期的なメニューも全国に伝播。翻(ひるがえ)って横浜市。豈図(あにはか)らんや田畑が総面積の18%を占め、農家戸数も3400戸以上。が、地域連携の動きは杳(よう)として知れません。

「田中康夫の新ニッポン論」Vol.96 「#横浜市長選挙」
https://tanakayasuo.me/archives/29501
「田中康夫の新ニッポン論」Vol.95 「消費者資本主義」
https://tanakayasuo.me/archives/29037
「田中康夫の新ニッポン論」バックナンバー
http://tanakayasuo.me/archives/category/verdad


市長選投開票8月22日会見文字起こし「横浜の方々の閉塞感に覆われた心の叫び」
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動画
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「ソトコト」連載浅田彰氏との「憂国呆談」で横浜市保土ケ谷区に存在する英連邦戦死者墓地を訪れた2018年11月号
黒澤明『天国と地獄』の舞台となった初黄・日ノ出町を訪れた2019年5月号、更には横浜市長選挙直前の2021年9月号をお読み頂けます。
横浜市長選挙を語る最新回は10月5日発売後にアップします。
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「憂国呆談」バックナンバー
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宇沢弘文さんに触れた「田中康夫の新ニッポン論」Vol.56「社会的共通資本」
「現代思想」に寄稿した「『怯まず・屈せず・逃げず』宇沢弘文さんとの想い出」等も再録
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