丸由百貨店など

 石破 茂 です。
 旧統一教会についての議論が続いています。
 宗教法人法第81条に基づいて「著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」「宗教団体の目的を著しく逸脱した行為」を為した宗教法人に対して裁判所が解散命令を発出することは、宗教法人が持つ様々な特権を剝奪するものであって、憲法によって保障された基本的人権である「信教の自由」を侵害するものではありません。一方で「著しく」の認定は難しいのですが、これは社会通念による他はありません。
 旧統一教会に対する本条の適用の是非について、法治国家としてきちんとした結論を出さなくてはならず、ここを曖昧にしてはなりません。自民党が解散命令発出の是非について議論をしないのは、旧統一教会と抜き差しならない関係にあるからだ、などと言われるのは極めて迷惑なことです。
 以前も述べたとおり、「日本は(旧約聖書にあるアダムとイブの物語に言う)原罪を負ったエバ(イブ)国であり、アダム国である朝鮮(韓国)に対して贖罪として献金すべきは当然である」との考えは、わが国において「真の保守」を標榜する勢力の立場とは本来全く相容れないもののはずですが、この両者が単に「反共」という一点において結びついていたのなら、ご都合主義の典型のようなものでしょう。
 アメリカにおける統一教会系の新聞である「ワシントン・タイムス」がレーガン大統領の愛読紙であったのは有名な話ですが、トランプ氏に至るまで連綿と続く同教会とアメリカの保守層との関係も看過すべきではありません。
 自民党として、今後一切、旧統一教会とは一切の関係を断つ、そうあるべきものですが、宗教法人に限らず、いわゆる反社会的勢力との関係について、この際明確な基準を設けることが必要です。ここに曖昧性を残してしまえば魔女狩り的な権力闘争に利用されかねません。警察や検察などの国家機構が権力者あるいは世論に対する阿りや忖度などによってその機能を歪めると、法的安定性や法による社会正義は実現されなくなります。旧統一教会の弊害に目を向けるあまり、国家権力の肥大化や変質に多数の国民が賛成してしまうような風潮になることを危惧します。

 岸田首相は、国会(おそらく議院運営委員会)において、安倍元総理の国葬を執り行う理由を説明されるそうです。国葬の決断をしたのが首相である以上当然のことですし、国民の納得の得られるような説明を期待しています。賛否両論が交錯する中では、故人を静かに見送る、というあるべき環境が失われかねないのですから、総理の「話す力」が遺憾なく発揮されることを望みます。その意味でも、国会における説明はより早い方が、費用も含めて内容はより詳細である方が望ましいと思っておりますし、最終的な責任は、選挙によって我々与党が負うべきものです。

 一昨日、テレビ朝日のワイドショーの企画で台湾有事に対する我が国の対応について意見を求められたのですが、コメンテーターの玉川徹氏から「台湾有事において米軍基地は中国の攻撃対象となり、その存在によって我が国も戦争に巻き込まれる」との古典的な主張が展開されて、いささか驚愕致しました。玉川氏は主婦層を中心としてかなりの人気を集めておられる方と伺っており、今後の議論の容易ならざることを痛感したことでした。
 集団的自衛権の国際法的な行使が憲法上できない、としているからこそ、日米安保体制は双務条約ではあるけれど非対称的であり、我が国の領土に基地を置くことを条約上の義務として履行せざるを得ない、というのが物事の本質です。ここから長らく目を背け続けてきたことのツケは極めて大きく、暗然たらざるを得ませんが、誤魔化したり逃げたりせずに正面から語っていかねばなりません。憲法第9条の改正を熱心に唱える方々も、米軍基地反対を熱心に唱える方々も、ほぼ一貫してこの点をスルーしておられることが、私にはどうしても解せません。

 昭和24年以来、73年にわたって鳥取駅前で営業してきた「鳥取大丸」が、商号・商標権に関するライセンス契約の終了により、新たに3日土曜日から「丸由(まるゆう)百貨店」として再スタートすることとなり、週末土曜日は開店セレモニーに出席する予定です。
 県都鳥取市は人口が18万人余の都市ですが、鳥取大丸の存在は市民のささやかな誇りでもあっただけに、今回の商号変更には一抹の寂しさを感じています。昭和30年代の終わりから40年代初めのころ、鳥取大丸の玩具売り場を覗き、最上階にあった食堂でお子様ランチ(ケチャップ味のチキンライスには必ず小さな日の丸の旗が立っていました)を食べ、屋上の遊園地でコーヒーカップやメリーゴーランドに乗るのは、鳥取の子供たちにとって憧れのハレのひとときでした。あれから60年近くが経ち、時の流れを感じずにはいられません。世の中は今よりもはるかに貧しかったのですが、そこにはきらきらと輝き、希望と活気に満ちた地方の姿が確かにありました。
 1937年創業のころの名前にもう一度戻って再スタートする「丸由百貨店」が、百貨店が持っていた楽しさやワクワクを取り戻し、そのキャッチフレーズどおり「鳥取を笑顔の溢れる街にする」ことを楽しみにしています。

 九月に入り、朝夕は涼しさを感じる日々となりました。
 皆様、ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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石破茂
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