大学ゼミ講義など

 6日木曜日、政治資金規正法改正案が衆議院で可決されて参議院に送付され、今国会中の成立が確実となりました。「抜け穴だらけの欠陥法案」と世の中の評価は散々ですが、一歩前進ではあると思います。ただ、これで事成れりなのでは決してなく、事務所数やスタッフ数の制限など「よりカネのかからない政治活動」のあり方、政治資金パーティの開催頻度や非常識な利益率の制限などの「資金集めの適正化と透明化」、政党の公的な存在を明確にし、ガバナンスを律する「政党法の制定」、主権者の意思をより尊重する「選挙制度の改革」等が議論され、結論を得なくてはなりません。
 今回の政治改革が国民の関心も共感も呼ばなかったのは、最初から最後まで「政治家の論理」でしか議論されず、国民には「どうせカネに執着する薄汚い政治家たちが自分たちに都合の良い制度しか作ろうとしていない」としか映らなかったからでしょう。
 パーティ券の公開基準の引き下げに自民党が最後まで消極的だった理由は、「公開基準を現行の20万円から5万円にまで引き下げてしまえば、名前が表に出ることを嫌う企業や個人がパーティ券を買わなくなり、集金力の弱くなった議員がますます党に頼るようになって、その自立性が失われる」というそれなりに理屈の通ったものだったのですが、これはプロの政治家や関係者には理解されても、国民にはほとんど共感されないものだったように思います。

 

 これは憲法改正も同様で、憲法改正の機運が国民に全く盛り上がらないのも、テーマを「衆議院が解散された際に、有事や大規模災害が発生して、衆議院議員選挙の実施が困難になった場合、特例的にその任期を延長する」という、重要ではあっても極めてテクニカルな、かつ現行憲法に定めのある「参議院の緊急集会」との整合性が問われるものに絞ったため、国民には一体何のことだか全くわからない内容になったことによるものだと考えています。
 国民ウケを狙えばよいというものではないのはもちろんですが、主権者の共感を呼ばない「改革」は決して成功しない、ということをもう一度再認識する必要があると痛感しております。
 憲法改正については、衆議院の自民・公明・維新・国民で条文化の作業を行い、百人以上の賛成を得て改正原案を発議すべきとの議論もあるようですが、発議した後の展望が全く開けないまま、ただ痕跡を残すとのことであれば、あまり賛成は出来ません。くどいようで誠に恐縮ですが、「衆・参いずれかの四分の一の賛成で要求された際の臨時国会の召集期限を20日とする」という憲法改正であれば、すべての党の賛成が得られ、次回の総選挙においても直ちに国民投票が可能となるのではないでしょうか。「憲法改正は実際に出来るのだ」という体験を国民に共有して頂くことがまず第一だと思っています。併せて、憲法改正の発議は国会のみならず内閣も出来る、という点を再確認することも重要で、これは「憲法改正は専ら国会が決めること」との政府の傍観者的な姿勢を正すことにも繋がります。

 

 最近、大学のゼミ生を対象とした講演に呼ばれる機会が多く、昨6日は明治大学・政治経済学部の西川伸一教授の国会での「郊外ゼミ」でお話をして参りました。同教授の著書「城山三郎『官僚たちの夏』の政治学」(2015年・ロゴス刊)、「最高裁裁判官国民審査の実証的研究 『もうひとつの参政権』の復権をめざして」(2012年・五月書房刊)、「覚せい剤取締法の政治学」等を、この機会に大変興味深く、とても面白く読みました。自分の知らないことのいかに多いことか、今週もまた思い知らされたことでした。

 

 ゼミといえば、さる1日、大学時代のゼミナールの指導教授であった新田敏・慶大名誉教授(民法)の卒寿(90歳)のお祝いの同窓会に出席して参りました。1期生から30期生まで、参加者が200人を超える盛況で、昔と全く変わらぬ頭脳明晰ぶりの先生のお元気な姿に接してとても嬉しく思ったことでした。
 新田ゼミは指導の厳しいことで有名で、毎週1回、A4の用紙に出題される課題についてのレポート提出が義務付けられていたのですが、これが大変な難作業で、毎週ゼミの前夜は艱難辛苦、地獄の苦しみであったように記憶しています。当時はワープロもパソコンもなく、質の不足を量で補おうとばかりに鉛筆で小さな文字を書き連ねて提出していたのですが、先生はあの出来の良くないレポートを丁寧に添削してくださり、「ここは論理が飛躍している」「この部分の記述は説得力がある」等々のコメントを付して、A゜(エーマル)、A、A⁻(エーマイナス)からⅭ⁻(シーマイナス)まで評価を付けて翌週返却してくださいました(Ⅾ評価はなく、何も書かないで返却された場合は「評価に値せず」という意味だったそうです)。我々学生も大変でしたが、あれを毎週十数枚、丹念に読まれて評価される先生の方が何倍も大変なことだったろうと思います。多少なりとも論理的に物事を考えられるようになったのは、先生のご指導の賜物と心より感謝しております。卒業後45年が経ちましたが、学生時代に戻ったような久々に楽しいひとときでした。白寿(99歳)、百寿に至るまで、先生がご健勝であられますことを心より祈っております。

 

 本日は午後8時より、BSフジ「プライムニュース」で先崎彰容・日大教授と派閥の意義について討論します。先崎教授は見識の高い若手の論客で毎回学ばされることが多く、議論を楽しみにしております。
 明8日は鳥取市で、かねてより敬愛してやまない地元八頭町の自動車整備・販売会社の経営者である小河守氏の「平和への祈り 出征兵士と家族の記録」の出版記念会に参加する予定です。平和への願いと戦争の悲惨さが切々と綴られたこの小冊子が、広く鳥取県民の皆様に読まれることを願っております。
 皆様、ご健勝にてお過ごしくださいませ。

 

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石破茂
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