石破 茂 です。
ようやく本欄を落ち着いて更新できるようになりました。改めまして、今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。アメリカの大統領選挙のトランプ大統領対バイデン候補のテレビ討論会の、まるで子供の喧嘩のような有り様を見て、悲しく情けなく思い、アメリカという国は一体何処へ行くのか危惧の念を抱いた方は多かったと思います。
アメリカ人は学校教育において、ディベートを積極的に取り入れ、そのルールを会得しているものと思っていたのですが、大統領選挙という最高のディベートの場においてあのようなことになるのなら、それもかなり怪しいと思わざるを得ません。世界の在り方も、国家の理想もほとんど語られることのない、罵詈雑言の応酬はこれで最後にしてもらいたい。あと二回残されている討論が少しでも実り多いものとなることを祈るような気持ちで切に期待します。日本学術会議会員の任命にあたって、推薦された候補者のうち6名を任命しなかったことが取りざたされています。総理大臣が任命権者である以上、任命権があるのなら拒否権も当然あるものと考えるのが自然でしょう。ただ、従来の内閣との関係(推薦された候補者全員をそのまま任命する)がなぜ変わったのか、ということについては、政府側が十分な説明を尽くす必要があるでしょう。
日本学術会議は文部科学省ではなく内閣府の所管ですから、その担当大臣がいます。組織のルールとして、いきなり総理大臣が任命を拒否するとは考えられず、内閣府の担当大臣の承認を経て総理に上がると考えるのが自然ですが、今回どういう手続きを踏まれたのかも明確にしておいた方がいいのではないでしょうか。
なお、この件に関連して、自民党の憲法改正草案では、国民の権利と義務の章に「国は国政上の行為につき国民に説明する責務を負う」と定めています。憲法改正は第9条や緊急事態に限られるものではありません。自民党で党議決定した唯一の案であるこの草案が等閑視されているのは本当に残念なことです。杉田水脈議員の発言は、自民党もその責任の一端を負わねばならないものでしょう。杉田議員は衆議院中国比例ブロックの比例名簿1位に登載されていたのであり、それはほぼ当選確実ということであったからです。このたび、下村政調会長が当議員に注意をされたとのことですが、自民党のイメージを低下させている点にも鑑み、党としてきちんとした対応が必要ではないでしょうか。
このようなことの積み重ねが、「有権者を甘く見ている」との印象を国民や党員の方々に与え、大きな報いとなりかねないことを我々は知らねばなりません。中国ブロック所属の議員としてだけではなく、自民党所属議員の一人として、強くそう思います。ぜひとも週末に時間の合間を縫って読みたいと思っているのは、「『帝国』ロシアの地政学」(小泉悠著・東京堂出版・2019)、「ソ連はなぜ8月9日に参戦したか」(米濱泰英著・オーラル・ヒストリー企画・2012)、「中国海軍VS海上自衛隊」(トシ・ヨシハラ著・ビジネス社・2020)、「中国、日本侵攻のリアル」(岩田清文著・飛鳥新社・2019)、皇室典範改正への緊急提言(大前繁雄・中島英迪著・新風書房・2020)です。何が起こっても不思議ではない時代にあって、知識の習得と頭の整理が出来ておらず、国家国民のためにも、祖国の未来のためにもお役に立てないことを最も恐れます。
10月となって、急に秋らしくなってきました。
皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。