獣医学系の知見など

 石破 茂 です。
 自民党、公明党の衆院議員4人が午後8時以降も銀座のクラブを「訪問」していた問題で、公明党議員は議員辞職、自民党の3議員は自民党離党ということになりました。
 後輩議員を庇うためであったとしても(それ自体は「兄貴分としての思い遣り」や「男気の発露」なのでしょうが)、国民に対して「一人で行っていた」との虚偽の説明をしてしまったことは、我々としても率直にお詫びしなければなりません。また、国会運営を切り回す国会対策委員会は体育会的・同志的な繋がりが強く、若手の側に「先輩議員との付き合いを疎かには出来ない」という思いがあったことは想像に難くありませんが、それは内輪の理屈であって何を言っても言い訳にしか聞こえないことをよく承知しております。
 我々は国民に辛くて苦しいお願いをしている立場として、自らを律していかねばならない、ということです。私自身のことも含め、主権者である国民に対する怖れの気持ちをもう一度思い起こさねばならないと痛感しております。
 離党勧告は自民党内では除名に次ぐ厳しい対応で、これを受諾して三氏は無所属となり、政党中心で設計されている現行制度の下での政治活動や選挙活動に多大な制約が課されることになります。
 これで十分ではない、議員を辞職すべきだというご意見も当然あるでしょうが、行為と量刑の均衡、可罰的違法性の理論など、学生時代の刑法総論や刑事政策の時間に習ったことを思い出しました。

 新型コロナが我が国に入ってから一年、その間にこのウイルスの持つ特性についても随分と解明が進んだはずです。
 引き続き感染症第二類相当の扱いのままであること、緊急事態の宣言によるメリットとデメリットについても検証していかなくてはなりません。

 唐木英明・東京大学名誉教授や宮沢孝幸・京都大学准教授などの獣医学系のウイルス学者から傾聴すべき意見が表明されています。
 「新型コロナウイルスの多くは獣医が研究をしている」「ウイルス自体が人を殺すのではなく、ウイルスが引き金となって、基礎疾患を持つ方々の症状を悪化させ、あるいは死に至らしめるのであって、若者や持病の無い人が過剰に心配する必要はない」(宮沢准教授)
 「評価の対象は、軽症者の多い『感染者数』ではなく『死亡者数』にすべきであり、医療対策は基礎疾患がある高齢者の保護に集中すべき。このような選択と集中により多くの人命を救うことが可能となり、国民はほぼ通常の生活を送ることができる」「病床不足の責任を認めず国民の自粛不足に転嫁してはいけない」(唐木名誉教授)
 これらの指摘には相当の説得力があります。
 未知のウイルスであるからこそ、感染症系、呼吸器系の医師の意見だけでなく、両氏のような獣医学系のウイルス学者の意見もメディアでも取り上げるべきではないかと思いますし、国会の議論でもこのような観点は殆ど取り上げられることがなかったのは残念なことでした。ちなみに、国家戦略特区として加計学園獣医学部が愛媛に新設されたのは、このような新種の感染症に対応するためでもあったので、是非とも今回その知見を活かしてもらえればと思います。

 議員も、メディアに登場する専門家も「新型コロナを甘く見るのか」とのバッシングを怖れます。厳しい意見を述べた方が個人的立場は安泰なのでしょうが、それが「正しく怖れる」ことには繋がらず、結局国民を守れないことになり、社会全体を停滞させ、納税者の長期的な利益に反する結果を招くとすれば、それはあってはならないことです。
 今週「コロナパンデミックは本当か?コロナ騒動の真相を探る」と題する本を出版社(日曜社)からお送りいただきました。著者であるスチャリット・バクディ博士とカリーナ・ライス教授はドイツの著名なウイルス学者・感染症学者で、ロックダウンという手段への疑問を提起した本書はドイツでベストセラーになっているそうです。新型コロナの状況が日本よりもはるかに厳しいドイツにおいてもこのような見解が示されていることは驚きで、何とか週末に読んでみたいと思っています。

 滋賀県守山市の方から、今回のコロナウイルスへの対応を、昭和20年7月20日付、佐藤尚武・駐ソ連日本大使の東郷外相宛「終戦意見電報」に擬えたご指摘を頂き、とても面白く拝読しました。佐藤大使がこのような電報を打ったことは知っていましたが、電文全体は今回初めて読みました。先人の英知と、今の世の中にも深い教養と見識を持たれた方が居られることに感謝するとともに、自分の知識の無さを恥じるばかりです。以下、一部引用させて頂きます。
【原文】 戦争終結ノ暁ニハ 国内各方面ニ徹底シタル改革ヲ施シ 一般政治ヲ民象化シ官僚ノ跋扈独善ヲ廃シテ 真ニ君民一如ノ実ヲ挙クルニ努ムルヲ要スヘク 又満州事変以前ヨリ 余リニモ外交ヲ軽侮シ 国際関係ニ無頓着ナリシコトカ 即チ今日ノ禍ヲ招キタル原因タリ
【擬文】 コロナ禍終結の暁には、国内医療体制各方面に徹底したる改革を施し、一部専門家と医師の跋扈独善を廃して、真に安心の医療の実を挙ぐるに努むるを要すべく、又昨春来、余りにも社会経済活動を軽侮し、一般国民の生業に無頓着なりしことが、即ち今日の禍を招きたる原因たり

 森喜朗・東京オリンピック・パラリンピック組織委員長の発言は、その場に出席していた人の中から諫言する人が誰も居らず、笑い声さえ起こっていたことが一番の問題だったのではないかと思います。今回の件は決して森委員長のためにも、日本のためにもならなかったのですが、もしその場に自分がいたなら諫言していたと断言出来ない自分の勇気の無さを恥じています。

 河井案里参院議員が辞職し、広島選挙区では補欠選挙ではなく再選挙が四月に行なわれることになりました。一昨年の選挙において、自民党本部はその総力を挙げて有権者に河井候補の支持を訴えたことの責任を負わなくてはなりません。党本部の徹底的な応援がなかったなら河合候補は絶対に当選していなかったはずであり、これも自民党が有権者に対して真摯な畏れの気持ちを持っているかが問われる問題です。

 今回は予算委員会の合間を見ながら少しずつ書いたため、いつも以上に脈絡のない構成となってしまったことをお詫び申し上げます。
 皆様ご健勝にて週末をお過ごしくださいませ。

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