第992号 ワクチンなぜ遅れたか?

 東京を中心にコロナ感染拡大「第5波」が襲来する中、ワクチン接種が遅れています。政府は希望する高齢者に、7月末を念頭に各自治体が2回の接種を終えることができるよう取り組むとしてきましたが、例えば奈良県では14日時点で、高齢者の2回目接種率は54.5%にとどまっています。

◆政府の責任は明らか
 諸外国に比べワクチン接種が遅れていることに対し、野党が臨床試験等の慎重な扱いを要望したからだという一部の報道がありますが、それは全くの事実誤認です。ワクチンの申請を審査する機関(PMDA)は、国会審議前に「国内で臨床試験を実施し日本人被験者においてワクチンの有効性及び安全性を検討することは必要性が高い」と表明していましたし、国内での治験を求める厚生労働委員会付帯決議は与野党全会一致で可決しています。

 接種の遅れの理由は、政府のワクチン確保策の失敗にあります。まず、そもそも各国に比べ、ワクチン会社との契約締結自体が遅れていました。昨年8月には、当時の安倍総理が2021年前半までに全国民分のワクチンを確保すると発言しましたが、アメリカやイギリスが契約を締結したのが2020年7月なのに対し、日本が具体的に締結したのは2021年1月のことでした。初動の遅れで、結局、目標は未達に終わっています。

◆現場混乱招いた隠ぺい
 ワクチンの供給計画のいい加減さと情報隠ぺいも接種の遅れへとつながっています。政府は高齢者接種7月完了、全希望者完了を11月末までとしながら、具体的な供給の種類、配分量、日程等を全く明らかにしませんでした。

 モデルナ社ワクチンは当初、今年6月末までに4000万回分の契約でしたが、6月末までの実際の供給は1370万回分と、約6割も供給量が減少してしまいました。その事実をゴールデンウイークあたりに把握していながらも、2か月間にわたり公表されませんでした。

 供給が減ることを明らかにしないままで、大規模接種や職域接種だけを急がせた結果、供給不足で新規受け付けは中止となり、現場に大きな混乱が生じています。

◆感染症行政への斬り込み必要
 計画の甘さと不都合な情報の隠ぺい、結果としての目標未達は、ワクチン接種のみならず、いつまで経っても満足に受けられなかったPCR検査や、国産ワクチン開発、短期間に繰り返される緊急事態宣言も同じです。情報公開と科学的な議論による国民の納得こそが、国難と言えるコロナ禍の中で最も大切にもかかわらず、感染症行政の隠ぺい体質と利権がそれを阻み、政策遂行が行き詰っているのです。加えて誰が責任を持って具体的な指示を出しているのか分からない司令塔不在の問題もあります。

 コロナ禍自体がまだまだ収束の気配を見せないのに加え、今後も必ず新たな感染症流行はやって来ます。問題を根本的に解決し、感染症から国民の命を守るためには、小手先の人事や政策変更ではなく、厚労省の巨大な利権構造への斬り込みと組織変革による行政改革の徹底しかないと思っています。

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