令和2年(ワ)第5276号 損害賠償等請求事件
原 告 NHKから国民を守る党 外1名
被 告 東京メトロポリタンテレビジョン株式会社 外1名
原告第三準備書面
令和2年10月15日
東京地方裁判所 民事第44部合議1A係 御中
原告訴訟代理人弁護士 村 岡 徹 也
第1 被告準備書面(1)に対する認否
(1) 被告準備書面(1)について、後日提出された、「別紙 司会者とコメンテーターのやり取り」とする内容に記載された発言の事実は、その全てを認める(以下では、これら発言全てを総じて「別紙発言」という)。
今回被告から提出されたもののほうが前後の文脈もわかり正確である。
(2) 被告準備書面(1)については、前項の認否部分を除く事実関係については否認し、その余の事実解釈及び法的解釈については、否認し争う。
第2 弁護士法違反の点について
1 弁護士法73条の確立している法理
被告らの反論した弁護士法違反の論点については、既に確立した裁
判例が存在するだけでなく、不良債権処理が進められた2000年以降、多くのサービサーや法律事務所が、事業の仕組みしてとして設立・企画しており、社会慣習上合法として許容されている。
つまり、債権の管理回収業は、サービサーや弁護士しか行い得ないが、その投資対象となる集合債権については、それぞれの投資家ごとに特別目的会社(SPC)を組成する必要性が高く、株式会社や合同会社などをSPCとして、こうした集合債権の譲受けの「箱」として利用するのである。
原告代理人も過去、法務省に弁護士法73条について質問をしたところ、『譲り受けた債権を、債権譲受人がそのまま「管理」や「回収」することは確実に違法となるが、債権譲受人が「保有」をするのみで、「管理」と「回収」を完全に弁護士に委託しているならば違法とならない。』と回答を得ている。
その見解を法的に確実なものとするために、当時、手掛けていた債権回収業において、明らかにしたものが甲9号証の裁判例であり、ここで示されたとおり、弁護士法73条の要件に形式的に該当する場合であっても、その譲り受けた債権の「管理」と「回収」を弁護士が完全に行うならば、国民の法律生活上の利益を侵害せず、正当業務行為として許容されると結論づけられたのである。
2 本件について
(1) 本件事案について
この裁判例を理論的根拠として、原告代理人は本件ではさらに加重し、弁護士法への配慮をしていた。以下、事実を挙げる。
ア 原告会社は本件事件のためだけに設立し、その設立後は社員すらおかず、管理・回収業務を全て原告代理人が受託し行っている
イ 原告会社設立前においても、原告代表者から任意の話し合いや裁判外での紛争解決を何カ月にもわたり被告らへ提案したこと
ウ 原告代理人が選任された後も繰り返し、任意の話し合いと裁判によらない解決を提案していること
エ 原告代理人は、委任契約をするにあたり、契約事項に任意の解決を心掛け、被告側の意見をよく確認し、極力和解に基づく解決を目指す義務を負っていること(甲2号証第7条)
オ 本件の債権譲渡額は、本訴の一人当たりの訴額1000円と同額であり、仮に原告会社が本訴で勝訴したとしても、原告会社に利益が生じる結果とならないこと
カ あえて原告会社を設立した理由は、応募者が多数であると予想され原告数が多くなった場合の裁判所の事務処理に配慮したからである。原告側の手間としては、債権譲渡も、債権の原保有者らから個別に委任を受けて集団訴訟をしても特段の不利益はなかった
キ 本訴の相手方は東京都をも株主に要する我が国の主要マスメディアであり、「国民の法律生活上の利益」の点からは法益侵害性が高くないこと(法的防御力の高い相手方に限られている)
(2) 以上のとおり、被告は弁護士法73条の法理、立法趣旨を曲解しているにすぎない。弁護士法73条は「国民の法律生活上の利益」を、つまりは法的弱者を守ろうとしているのである。
被害者団が一致団結して一つの法人に債権を集約させ、実質的に集団訴訟の体で各自の被害救済を実現しようとする本件事案は、弁護士法が保護しようとした典型事案とは乖離しているのである。
仮に、本訴の手法を許容させたとしても、こういったケースに相手方となるのは、不特定多数に多額の損失を与えた大企業など相手方はごく少数の個人や法人に限られ、弁護士法73条の「国民の法律生活上の利益」をことさら侵害するものではないのである。
(3) よって、本件において弁護士法73条による無効を主張することは失当である。
第3 名誉毀損及び名誉感情の侵害について補足主張
1 別紙発言による名誉毀損及び名誉感情侵害について
別紙発言は、それ自体として、人物の社会的評価、特に信用性を著しく低下させてその名誉を毀損し、かつ、名誉感情を害する。
2 名誉毀損であること
被告らの別紙発言を一般の視聴者の普通の注意と読み方を基準として理解すると、「NHKをぶっ壊す」とのフレーズの下に、動画サイトで320万回も再生されたこと、政見放送において「不倫、路上、カーセックス」との言葉を発していたことなどの事実を取り上げ、こう
した事実を根拠として、NHKから国民を守る党は、一種変わり者の集団であり、また、それを支持する支援者らもまともな政治思想を持たず安易かつ享楽的に選挙権をもてあそび、真摯に権利行使しない不真面目な選挙人たちであると理解でき、原告らの社会的評価を低下させる。
3 名誉感情の侵害(侮辱)であること
また、別紙発言のうち、事実を適示する以外の意見・論評に関する部分であったとしても、やはり一般の視聴者の普通の注意と読み方を基準として理解すると、「気持ち悪い人」とは、近寄りがたく相手にしたくないという感情を示す点では極めて侮辱性の強いものである。
「宗教的」だと表現する点は、宗教にかかわる集団という意味を超え、ただ一心に物事の善し悪しにかかわらず闇雲に突き進む集団という異常者との印象を強く与える。日本人には過去のオウム真理教の記憶から「宗教的」との意味にはこうした反社会的団体であるという印象がなお根強く残っていることから、やはり極めて侮辱性の高い表現である。
つまり、別紙発言はその表現全体からして、NHKから国民を守る党の掲げる「NHKのスクランブル放送を実現する」という目的自体粗末な問題であり、多くの国民は受信料制度にはほとんど関心がないと勝手に断定し、受信料制度のみでは国政を論じるに値しないと一方的な評価を下す一方で、同党を支持する人間らも国政を真摯に考えない不真面目な人間たちの集まりであり、宗教的で気持ちが悪いというのだという印象をことさらに与えている。
このように本件発言は、原告らの名誉感情をも著しく侵害していることは明らかである。
4 被告の発言が受忍限度を超える不適切発言であること
これまで原告代表の立花孝志氏が何度も訴えてきたことであるが、わが日本国には選挙にふざけて行く国民などいない。
毎回選挙の度に投票率の低さは問題視されるも、大事な休日の時間などを利用して投票所へ足を運ぶ国民は、当然、自らの国民の貴重な権利を真剣に行使しに行くのである。
ふざけて選挙に行く人間がいるなどと独自の主張をさも真実かのよ
うに発言することは絶対に是認されてはならない
選挙権とは民主主義の根幹をなす重要な人権のひとつであり、今回の被告らの発言は国民に不適切な情報や印象を与えている点では極めて違法性が高く、受忍限度の範疇とは到底言えない。
5 原告らの本訴にかかる意見
確かに、現実に目を向ければ、マスメディアによる虚偽報道や明らかなる偏向報道、印象操作は毎日毎日繰り返され、その度に国民から嘘を指摘されても誤りもしない報道機関が多く存在している。
「事実を伝え広める」という報道の使命、正しい情報を国民に伝えることの重要性をマスメディアは本当に自覚できているのだろうか。広告収入が低下し、経営危機が叫ばれているテレビ業界は、国民に愛想を尽かされつつある現実に目を向けなければ未来はない。
こうしたマスメディアの横暴を是正させようと、国民に正しい情報を、正しい知る権利を実現するために活動しているのが「NHKから国民を守る党」であり、この目的に共感し、日本の正しいマスメディアの在り方を求め続けているのが同党を支援する人間らなのである。
マツコ氏にはNHKやその他の大手マスメディアからも多額の報酬を受ける立場から彼らを悪く言えないのだろうが彼らのやっている不正義を覆い隠し、その不正義を追求しようとする人間を抽象的な誹謗・中傷によって公共の電波を用いて傷つけることは、多くの日本人の名誉プライドを傷つける結果となることを自覚し、反省していただきたい。
以 上