総務省で行われているNHK問題についての民放連の考え 民放連良いこと言っています。

1. 日時 令和2年11月9日(月)10時00分~11時46分 

2. 場所 総務省内会議室 

3. 出席者 (1)構成員 多賀谷分科会長、大谷構成員、小塚構成員、関口構成員、長田構成員、新美構成員、西田構成 員、林構成員 (2)総務省 谷脇総務審議官、秋本情報流通行政局長、湯本大臣官房審議官、犬童同局総務課長、井幡同局 放送政策課長、内藤同局国際放送推進室長、佐藤同局放送政策課企画官、富岡同局放送政策課 企画官、萩原同局放送技術課長、林同局地上放送課長、三島同局情報通信作品振興課長、吉田 同局衛星・地域放送課長 (3)ヒアリング対象者 一般社団法人日本民間放送連盟永原専務理事、一般社団法人日本新聞協会メディア開発委員会 通信・メディアの将来像と法制度に関する研究会稲葉幹事、日本放送協会松坂専務理事、同協 会松崎理事 

4. 議事要旨 (1)一般社団法人日本民間放送連盟・一般社団法人日本新聞協会・日本放送協会からのヒアリン グ 【永原専務理事】

 日本民間放送連盟の永原です。本日は、NHKが要望されましたテレビの設置届出義務と居住者 情報の照会の是非を中心に、当連盟の見解、基本的な考え方を申し述べたいと思います。 1ページをご覧ください。テレビの設置届出義務に関して、私どもは9月のヒアリングの際、「導 入した場合の国民・視聴者の不快感・反発、それに伴う一層のテレビ離れの可能性、そして受動受信 問題の解消、適正な受信料水準への引下げが全く手つかずのままであることを思えば、受信料の支 払い率向上や営業経費の削減という部分的な利益を追求するあまり、全体の利益を損ねる制度変更 はやめるべきです」と申し上げました。この考えは今も全く変わっておりません。 10月16日の検討分科会でNHKが正式に要望を表明した直後の新聞各社の報道ぶりやネットメデ ィア、SNS上の反応を見れば、私たちが懸念したとおり、国民・視聴者の不快感・反発を巻き起こ しているように見えます。 受信料制度は、2017年の最高裁判決が示すとおり、NHKと視聴者の契約関係によって成り立っ ております。国民・視聴者から忌避されてしまえば、制度の存立を危うくしかねません。そのため、 新しい制度を検討する際は、国民・視聴者の目から見て納得感のあるものかが重要な判断基準とな ります。言い換えれば、テレビの設置届出義務や居住者情報の照会は、その導入によって国民・視聴 者が何を得るのか、それは国民の納得を十分得られるものなのかという観点で検討されるべきです。 参考資料 -2- NHKは、設置届出義務と居住者情報の照会を要望する理由として、公平負担の徹底と同時に、 営業経費の大幅削減とクレーム抑止を挙げております。 2ページをご覧ください。民放連は、5月と9月のヒアリングで、無料または低廉な動画配信サ ービスが普及する環境下において、現行の受信料水準は若年層にとって過重な負担となっているの ではないかと指摘しました。営業経費の大幅削減が実際に可能で、それが受信料水準を引き下げる 原資に充てることができて、その結果、相当程度の引下げが確約されるのであれば、国民にも納得 感が広がるかもしれません。 クレームの抑止については、3ページをご覧ください。今年3月に国会でも取り上げられており、 公明党の國重徹先生がこのように指摘しています。「全国の消費生活センターに寄せられたNHK関 連の相談は8,124件。これは、1つの企業に対する苦情としては非常に多いです。その中には、女性 の単身世帯に深夜に訪問する、訪問員が名前や訪問目的を言わない、土足で上がり込むといった、 これはひどいのではないかと思われるものも数多くあります」。設置届出義務や居住者情報の照会を 認めることで、女性の単身世帯に深夜に訪問したり、土足で上がり込むなど、行き過ぎた訪問トラ ブルがゼロになるのであれば、国民にも納得感が広がるかもしれません。受信料が相当程度引き下 げられるか、行き過ぎた訪問トラブルが是正されるかという2点が判断基準になると考えます。 では、設置届出義務や居住者情報の照会によってこの2つが本当に実現可能かといえば、私ども は難しいのではないかという疑問がどうしても拭えません。その理由を説明します。 4ページをご覧ください。未契約者は、テレビを所有しているが契約していない、いわゆる「フリ ーライダー」と、テレビを所有していない、そもそもNHKと契約義務がない人たちに大別されま す。最大の問題は、フリーライダーとテレビを持っていない人を外形的に見分けることは極めて困 難であり、恐らく不可能であることです。テレビを持っていない人は、設置届出義務を課しても、そ もそもテレビがないので届け出ることはありません。なお、NHKはテレビを持っていない人にも 届出を求めることを要望していますが、NHKと全く無関係の人に届出を求めることは難しいと思 いますし、前回の分科会で、その法的根拠に疑問が呈されたと承知しております。届出がなければ、 自動的に訪問活動の対象から除外されるのであれば、テレビを持たない人たちへの行き過ぎた訪問 トラブルはゼロになります。しかし、本当はテレビを持っているのに、届け出ないケースや、偽って 未設置の申告をしたケースも混ざっているかもしれません。それは、設置届出義務を課しても見分 けることはできません。 居住者情報があれば、テレビを持っていない人とフリーライダーを見分けることが可能でしょう か。それも不可能です。住所が分かっても見分けることはできません。結局は、ドアチャイムを鳴ら してドアを開けてもらい、未契約者にテレビを持っているかを確認しなければ、フリーライダーと 本当に持っていない人を区別することはできないのではないでしょうか。しかも、この場合のテレ ビは、現状、ワンセグ機能のついたスマートフォンやテレビチューナー付きのカーナビも含まれま す。こんな場面を想像してみてください。ドアチャイムが鳴って、応対したらNHKの訪問員で、 「テレビはお持ちですか」と聞かれ、「いえ、持っていません。スマホやパソコンでYouTubeやNetflix を見ているので、テレビはありません」と答えたとします。そのとき、恐らく訪問員は「では、スマ ホを見せてください」と聞くでしょう。そのとき、スマホにワンセグ機能が付いていれば、「あなた は受信契約を結ぶ義務があります」と言われることになります。それだけではなく、「いつからこの スマホをお持ちですか。あなたは設置届出義務をずっと果たしていませんね」と言われ、フリーラ イダーと認定されるわけです。スマホもカーナビも、陰で隠れてテレビ番組を見たいから買ったわ けではなく、たまたま高機能だからワンセグやテレビチューナーが付いているだけというケースが 圧倒的に多いはずです。最低限、設置届出義務の対象を建物内のテレビに限り、ワンセグ機能付き のスマホやカーナビは支払い対象から除外するといった精緻な制度設計をしなければ、国民生活は 混乱を来すでしょう。 民放事業者にとっても悲しいことですが、テレビを本当に持っていない人は、若年層を中心に確 実に広がっています。スマホで動画サービスを見れば十分という若者も多く、今やチューナーレス -3- テレビなどの商品名で大型ディスプレーが量販店やネット通販で売り出されています。43インチで 4万円台、55インチで6万円台で購入でき、それにAmazonのFireTV Stickのようなデバイスを挿せ ば、自宅のリビングでYouTubeやNetflixといった様々な動画配信サービスを大画面で楽しむことが できます。これは放送波を受信する機能がないので、テレビではなく、当然、NHKとの契約義務は 発生しません。テレビを本当に持っていない、NHKと無関係の人たちが確実に増えているのです。 それにもかかわらず、そのようなNHKと全く関係のない人たちがどこまでも居住地を捕捉され、 引っ越すたびにNHKの訪問員が訪ねてきて、その都度、「私は本当に持っていません」と言い続け なければいけないのでしょうか。世の中で一番難しいのは、ないことを証明することだといいます。 NHKと全く無関係の人たちが、なぜどこまでも住所を捕捉され、ないことの証明を強いられなけ ればいけないのでしょうか。その応対をする物理的な負担や心理的ストレスの大きさを思えば、こ のような制度が国民の理解を得られるとはとても思えません。 仮に居住者情報を得ても、テレビを持っていない人とフリーライダーを見分けることが不可能で あるため、その効果のほどは甚だ疑問です。スマホやカーナビの扱いなど、細かな点も不明確であ り、まだまだ生煮えの議論であると言わざるを得ません。設置届出義務も居住者情報の照会も、導 入には時期尚早であるというのが民放連の見解です。 そもそも、設置届出義務や居住者情報の照会といった、ある種強権的な取立てを行う根拠をNH Kに与えなくとも、受信料の引下げや訪問トラブルの是正は十分可能です。 5ページをご覧ください。NHKの前田会長は9月のヒアリングで、「受信料収入が6,000億円台 でもやっていける」と明言しています。向こう3年間の中期経営計画には500億円の削減を盛り込ん でいます。昨年度末の受信契約数が約4,200万件なので、単純に割り算すれば、1契約当たり年間 1,200円弱は引き下げる余地があります。一層の構造改革に取り組み、衛星・地上契約の一本化に合 わせて引下げに踏み切れば、営業経費の削減分をあてにしなくとも、相当程度の引下げが可能であ るはずです。行き過ぎた訪問トラブルの解消は、強権的な取立てを行う制度を入れる以前の問題で す。女性の単身世帯に深夜に訪問する、土足で上がり込むといった悪質な委託業者は即座に契約を 解除する、悪質なケースは消費者庁がホームページで公表するなど、方法は幾らでもあるはずです。 先般、携帯利用料の引下げに向けたアクションプランが発表されました。その実効性を担保する ために、総務省は公正取引委員会や消費者庁と協力してチェックすると承知しております。携帯事 業者は民間企業です。それでも他省庁と協力してチェックするのであれば、特殊法人であるNHK に対しても、全国の消費生活センターに寄せられた訪問トラブルに関しては消費者庁に協力を仰い でよいのではないでしょうか。大事なことはNHK任せにしないことです。 6ページをご覧ください。NHKが要望されている中間持株会社についても一言申し上げます。 民放連は常々、NHKに対して、グループ全体のガバナンスを向上させ、国民・視聴者の目線に立っ たコスト意識の徹底、公共放送の使命に照らした業務の精査、民間といたずらに競合しない節度を 持った事業運営を求めています。ガバナンスの向上に中間持株会社という仕組みが適切かどうかは、 法律や経営論などの専門的見地から構成員の皆様でご議論いただきたいと思いますが、組織の階層 が1つ増えることへの懸念も示されていると承知しております。民放連としては、仮に導入するの であれば、NHKグループ全体のガバナンスの向上を強く期待するとともに、コスト意識の徹底な ど期待された成果が得られているか、継続的にチェックする仕組みを考える必要があると思います。 事後の検証でガバナンスの向上につながっているとは言い難い状況が明白になるようえあれば、改 廃する余地も残しておくべきです。 最後に、7ページをご覧ください。NHKの要望に対する民放各社の社長や役員の発言をまとめ ました。いずれも、国民の納得が得られるのかと疑問を呈しております。前回の検討分科会で長田 構成員が、何もかも義務化されていくことは、国民とNHKの間の距離が遠くなることにつながる と指摘しております。私も全く同感です。国民とNHKの距離が遠くなれば、国民のテレビ離れを 推し進めかねません。民放各社の社長、役員が口々に懸念を表明しているのも、まさしくこの点で す。設置届出義務や居住者情報の照会については、ぜひ一旦立ち止まっていただき、国民目線に立 -4- って、本当に必要なことは何であるか熟慮を重ねていただきたいと申し上げまして、私の発言を終 えたいと思います。