「VERDAD」連載「田中康夫の新ニッポン論」Vol.99 「官」対「民」

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「官」対「民」を選んだので表彰式に出て来い。「新語・流行語大賞」選考委員会が伝えてきたのは信州・長野県知事就任直後の2000年晩秋です。硬直した二項対立の惹句(じゃっく)を立候補前も選挙中も当選後も、一度たりとも使っていない僕は辞退。すると他県知事に当選した(現在は立憲民主党所属衆議院議員の)御仁が嬉々(きき)として出席する勇姿が報じられました。

解雇も倒産も無縁。上の顔色ばかり窺(うかが)う「ヒラメ」公務員も、任用当初はパブリック・サーヴァントの気概を持ち合わせていた筈。土木部に配属された“技術屋”は脚の不自由な独居老人の為に歩道の段差を改修したい、教育委員会に配属された“事務屋”は軽度な障碍児(しょうがいじ)を地域の小学校で一緒に学ばせたい、と考えていた筈です。

が、前例踏襲な組織の中で何時(いつ)しか冷温停止状態に陥ってしまう。選挙という洗礼を受けるサーヴァント・リーダーは、そうした哀しき公僕に“人間の体温”を取り戻させる触媒役たるべき。

元「毎日新聞」論説委員長・倉重篤郎(くらしげ・あつろう)氏の仲立ちで外務審議官を務めた田中均(たなかひとし)・日本綜合研究所理事長と、発売中の「サンデー毎日」年末年始特大号で「憂国対談」と銘打ち、「2022年 日本の自立像」を語りました。

「日本は今こそ慎み深いDecent(ディーセント)な(見苦しくない)誇りを持とうとツイッターでも発信する均さんは鋭い。弁証法なき空威張りな『日本凄いゾ論』の面々とは対極だ。諫言(かんげん)という傾聴すべき提言。なのにメディアは不毛な二項対立で『批判』と一括(ひとくく)りする」。

僕が述べると彼は「僕自身が政府の中に居たし、役人の気持が判る。物言えば唇寒しの霞が関で、誰かが自由に言わねばと政治を叩く事になる。メディアはそう考えない。役人叩きが常道。役人頑張れとは書かない」と呟きました。

誰もが分け隔てなく入れる公園こそ「公」の象徴。が日本では、公共事業のイメージを引き摺(ず)る「官」と同義語と認識し勝ち。公を行う為に官と政の機能が存在し、官が歯車という宮仕えなら、官を動かす為に「的確な認識・迅速な決断と行動・明確な責任」を併せ持った人物が行うのが政(まつりごと)にも拘らず。

『City Hall』が原題のフレデリック・ワイズマン監督『ボストン市庁舎』が“洛陽(らくよう)の紙価(しか)”ならぬ映価を高めています。ジョー・バイデン政権で労働長官に就任の、ジョン・F・ケネディと同じくアイルランド系カトリック教徒のマーティ・ウォルシュ氏が市長だった、静岡市と同規模な人口70万人自治体に於ける「行政サーヴィス」を活写した長篇4時間34分。

在任7年半、常に現場に出掛ける首長の彼は職員や市民との直接対話を通じて「市民に扉を開く公正な行政」の「意識改革」を志します。「外交」にも通ずる「話せば判る」ならぬ「話しても判りきれない」からこそ話し続けねばならぬ、との信念に基づきます。

「人々を従わせるのは容易でも、従うべきだと納得して貰うのは至難の業」が原義だった『論語』の「民は之(これ)に由(よ)らしむべし、之を知らしむべからず」を、「理由など教えても為ん方(せんかた)ない。有無を言わさず従わせてこそ政治と行政の真骨頂」と曲解した日本との彼我(ひが)の違いは歴然です。

故に“選良(せんりょう)”は暗黙知(あんもくち)「この国のありよう」を一向に国民に示さず、形式知「この国のかたち」の主張に終始し、“誤送船団”記者クラブも「改革を止めるな」と時代遅れな抽象的テープレコーダーを回し続けているのです。

論より証拠。第一次安倍晋三政権以来都合28人の「拉致担当大臣」の一人として平壌に出掛けて接触もしないのに北風だけ吹かす“やってる感”。太平洋を挟んで向き合う米国と中国の「同時通訳国家(シェルパ)」を果たすなど夢の又夢です。

「サンデー毎日」年末年始特別号の巻頭を飾る
田中均×田中康夫の憂国対談「2022年 日本の自立」まとめサイト
https://tanakayasuo.me/wtanaka/

「サンデー毎日」「田中康夫の憂国政談」「『消費者重視の政治』で『ウルトラ無党派層』を掬い上げよ」まとめサイト
https://tanakayasuo.me/seidan

「ソトコト」2022年1月号 浅田彰氏との「憂国呆談」
総選挙の「結果」を踏まえ、新しい資本主義から、地球環境問題、米民主党の政策から、対中国の立ち位置まで。
https://tanakayasuo.me/archives/31133
「ソトコト」2021年11月号 浅田彰氏との「憂国呆談」
横浜市長選挙から、軍事施設の跡地の活用、米軍が完全撤退したアフガニスタンまで。
https://tanakayasuo.me/archives/30834
 
「田中康夫の新ニッポン論」Vol.98「日本の選挙制度」
https://tanakayasuo.me/archives/30962
「田中康夫の新ニッポン論」Vol.97「帰納法 弁証法」
https://tanakayasuo.me/archives/30807
「田中康夫の新ニッポン論」Vol.96「#横浜市長選挙」
https://tanakayasuo.me/archives/29501
「田中康夫の新ニッポン論」Vol.95「消費者資本主義」
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「田中康夫の新ニッポン論」バックナンバー
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