「神戸新聞」永見将人編集委員にロングインタヴューを受けました❣

1995年の阪神・淡路大震災から27年

50ccバイクに跨がって震災ヴォランティアを続けた阪神間

神戸“市営”空港建設の是非を問う住民投票ムーブメント

2009年から衆議院議員を務めた兵庫県8区(尼崎市全域)

ゆかりの地・阪神間がフランチャイズの「神戸新聞」で編集委員を務める

永見将人さんによるロング・インタヴューが掲載されました。

PDF>>>「神戸新聞」編集委員インタビュー

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2022年1月9日付け「神戸新聞」 編集委員インタビュー

旧民主党政権から見えるものは

「官対民」の発想は不毛 政権交代は目的でなく手段

2012年に民主党から自民党に政権が交代して今年で10年になる。有権者の民主党政権への失望は今も尾を引き、立憲民主党をはじめとする野党の支持率は低迷したままだ。09年の衆院選で、民主党を中心とした野党への政権交代の立役者の一人だった田中康夫さん(65)は、長野県知事時代には、「脱ダム」宣言で、公共事業の在り方や国と地方の関係に一石を投じた。今の政界や地方の現状をどう見ているか、聞いてみた。(永見将人)

――09年の衆院選で、新党日本代表だった田中さんは兵庫8区から出馬し、当時の自公政権の元国土交通相を破って注目を浴びました。民主党政権の問題点は何だったのでしょう。

「一番の問題は『政治主導』の名の下で役人を軽んじ、排除したことです。その後、自民党の安倍政権や菅政権は人事で役人を萎縮させましたが、そもそも『官対民』という発想は、不毛な二項対立なんです。公務員になった時には『人々のために尽くしたい』という思いがあったはずなのに、先輩に『前例がない』『法律にない』と言われて冷温停止状態になっている官僚や職員に、初心を取り戻させることが必要、と僕は考えます」

「僕が44歳で長野県知事になった時、部長会議で『われわれは県民から先にお代を頂戴する総合サービス産業だ』と言ったら、多くの部長が手を挙げ『私たちがどうしてサービス業なんだ』と反論しました。サービスを一段低く見ていたのです。でも僕は、ボランティアも恋愛も行政も相手に喜ばれてナンボだと思います。民主党政権では、連立を組んだ亀井静香氏も警鐘を鳴らしましたが、聞き入れられせんでしたね」

――民主党政権への有権者の失望感は根強く、自公政権に失敗があっても野党の支持率は低いままです。

「自民党本部で過去に選挙を取り仕切っていた久米晃氏が、興味深い分析をしています。昔は自民支持が6割、野党2割で、残り2割が政治問題に関心を示さない『ノンポリ』だった。それが1988年のリクルート事件の頃から変わってきた。自民支持が4割に減り、野党は変わらず2割。残り4割が無党派層になった、と言うのです。その人たちがおきゅうをすえたり、期待を込めたりで一票を投じるんですね」

「労働生産性も平均年収も、韓国を下回ってしまった今の日本で大丈夫なのか。そう心配する人はたくさんいる。それなのに、どんな社会をつくるかという具体的で分かりやすい改善策を、与党はもちろん、野党第1党の立憲民主党も昨年の衆院選で示せなかった。政権交代は手段であって、目的ではないはず。だから自民にも立民にも飽き足らない有権者が、東京都議選では都民ファーストの会に流れ、昨年の衆院選では日本維新の会に流れたと思います」

――衆院選で維新は、大阪、兵庫を中心に全国で41議席を獲得しました。

「大躍進と伝えられますが2014年に維新の党が獲得した議席数と同じですよね。05年選挙の小泉チルドレン、09年選挙の小沢チルドレンに続く『維新チルドレン』の誕生です。舌禍事件も少なくありませんし、維新の中でも先が見える人は戸惑っているのではないでしょうか。今までも『ゆ党』と言われていたが、自民に近すぎると存在感を失うし、現在の野党の側にすり寄るわけにもいくまい。(1976年に河野洋平氏らが結成した)新自由クラブの頃から、第三極というのはなかなかうまくいきません」

――1994年に導入された小選挙区制についてはどう考えますか。

「お金がかからない、政策本位の政治になると言っていたのに相変わらずではないか、と多くの有権者は感じています。(トップ会談で制度導入を決めた)細川護煕、河野洋平の両氏も失敗だったと語っています。心ある自民党の政治家も今の日本に危機感を抱いているが、党の執行部が公認権という生殺与奪を握っているから、ものが言えない状況でしょ。まずいですね」

――田中さんは長野県知事、参院議員、衆院議員を務めました。地方行政と国政に関わった経験から今、何を思いますか。

「極論を言うと、国政を根底から変えるのは今の日本ではなかなか難しい。批判を恐れず申し上げれば、党議拘束があるから、議員は採決のボタン押し要員なわけですよね。一方、基礎自治体の行政というのは、住民に公正に開かれた取り組みをさまざまな分野で実現できます。最近、4時間34分もの長編映画『ボストン市庁舎』が話題を呼んでいるようですが、日本でも政令指定都市は、県立高校と県警本部以外のすべての予算と人事を扱い、ありとあらゆる行政サービスをよりよくしていける場所だと思います」

「国会議員をしていた人が、都道府県や政令市、中核市の首長に立候補するのは、たぶん彼らも『自治体ならば変えていける』という思いがあるんじゃないでしょうか。単に大臣になれなかったからとか、野党のままだから、という理由だけではないと思います」

―― それでも、神戸市などでつくる政令指定都市市長会は、政令市の権限を強化する「特別自治市」制度の法制化を求めています。

「政令市には既に多くの権限があるのに、『かたちを変えればバラ色だ』という小選挙区制導入時と同じ論法に思えてなりません。それぞれの都道府県の他の自治体は置き去りで構わないんですか? それでは国民の理解を得られないでしょう」

―― 田中さんは昨年8月、政令市の一つ、横浜市長選に立候補し、落選したものの、20万票近くを得ました。

「矛盾を感じながらも声を出せないでいた市民の皆さんが、政党や組合、団体とは無縁の選挙戦を支えて下さり、当時の現職市長に肉薄する得票を得ました。僕は6年前から横浜の地元FM局で音楽番組を担当していますが、横浜は神戸と同様、明治維新までは漁村、山村でした。維新後の殖産興業で重厚長大な産業ができて、急速に都市化しました。港町というのは、開明的なイメージの一方で階層社会でもあり、光と影がある」

「横浜市は待機児童16名と胸を張っていますが、一方で保育施設に入れずに育休を延長したり、退職して求職中だったりという保護者の児童が2842人もいる。なのに『保留児童』という独自呼称を使って、現実から市民の目をそらしています。中学給食がないのも、20政令市で横浜市だけです。引き続き横浜市内18区の各地で車座集会を続けていますよ」

 

たなか・やすお 1956年東京都武蔵野市生まれ。一橋大学在学中に小説『なんとなく、クリスタル』で文藝賞。阪神・淡路大震災の被災地ボランティアが政治活動の原点となり、長野県知事、参院、衆院議員を務めた。ホームページは https://tanakayasuo.me/

 

 

神戸新聞デジタル

https://www.kobe-np.co.jp/rentoku/feature/202201/0014974719.shtml

独占インタヴュー120分「なぜ僕は、横浜市長選に挑むのか!」

「サンデー毎日」2021年8月1日号 PDFデータはこちらから

https://tanakayasuo.me/wp-content/uploads/2022/01/sunday_trim.pdf

「創る・護る・救う」田中康夫 横浜市長選挙特設サイトhttps://yokohama2021.me

「2022年 日本の自立像 元外務審議官・田中均氏との憂国対談」まとめサイト

https://tanakayasuo.me/wtanaka/

「『消費者重視の政治』で『ウルトラ無党派層』を掬い上げよ」田中康夫の憂国政談まとめサイト

https://tanakayasuo.me/seidan

浅田彰氏との「憂国呆談」最新回

https://tanakayasuo.me/archives/31133

田中康夫の新ニッポン論Vol.99「官VS民」

https://tanakayasuo.me/archives/31218

田中康夫の新ニッポン論Vol.95「消費者資本主義」

https://tanakayasuo.me/archives/29037

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