石破 茂 です。
瀬戸内海周防大島沖において発生した海上自衛隊呉基地を母港とする護衛艦「いなづま」の事故はどうにも不可解です。天候も良好で海面も静穏な状況で、瀬戸内海という、いわば「自分の庭」のような海域で、低練度艦でも老朽艦でもない「いなづま」が何故このような事故を起こしたのか。今後の防衛力強化の議論に支障をきたさないためにも、早急な実態の解明が急がれます。
因島のドックでの定期検査を終えて呉基地に戻る中途の公試中に発生した事故だということで、造船所との関係はどうなっているのか、「ドックマスター」(船渠長)は乗艦していたのか、誰がいかなる権限を持って操艦していたのか等々、単に自衛隊の管理下にあった場合よりは複雑なようですが、事実の確認そのものはそれほど困難なことではないようにも思います。
防衛大臣在任中、イージス艦「あたご」が漁船との衝突事故を起こした時は、明らかになった情報は出来る限り速やかに開示するという対応を致しました。不確かな情報をお伝えして後で訂正するなどということもあり、様々なご批判もいただきましたが、国の独立と平和を守る自衛隊として、情報を隠蔽したり、操作したりなどということが絶対にないように、という考えに基づくものでした。
「ことに臨んでは危険を顧みず、身をもって職務の完遂に努め、もって国民の負託にこたえる」との服務の宣誓をして職務に精励する自衛官に対して、最大限の敬意をもって接することは当然ですが、敬意を持つことと阿ることは全く違います。「あたご」の事故から相当の年月が経過し、あの教訓が風化しつつあるのではないかとの危惧を最近強く抱いておりましたが、それが現実のものとなっていないことを願うばかりです。
週末から寒さが戻りそうです。皆様、ご健勝にてお過ごしくださいませ。