石破 茂 です。
本日夕刻より衆議院島根一区補欠選挙のにしこりのりまさ候補の応援のため、島根県奥出雲町と雲南市へ参ります。この地区を訪問するのは地方創生大臣在任中の2015年以来になりますが、10年近くを経た今、地方創生がどのような進化を遂げたのか、是非観てみたいと思っております。
松本清張の傑作「砂の器」の舞台の一つである奥出雲町は、須佐之男命(スサノオノミコト)が降り立った地とされる、魅力に富んだまちです。雲南市も訪問介護ステーション活動や移住者が集う「おっちラボ」など、地方創生の先駆けとなったまちです。10年目を迎えた地方創生プロジェクトの発展が楽しみです。
「砂の器」は加藤剛・丹波哲郎主演で映画化されて(1974年・松竹・野村芳太郎監督)大ヒットしましたが、加藤剛扮する天才ピアニストの薄幸の愛人役を演じた島田陽子の美しさが際立っていました。加藤剛も島田陽子も既に亡く、時の流れを感じずにはいられません。
地方創生の取り組みが始まったばかりの2015年頃は、全国各地で地方創生に向けた期待と熱気が感じられたように思いますが、だんだんとその熱量は下がっていってしまいました。担当する衆議院の特別委員会の名称も「地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員会」となり、「地方創生」という言葉自体が消えてしまいました。
地方創生プロジェクトの2年目に、突如として「一億総活躍」なる新しい政策が登場し、地方創生は徐々に主役とは言い難い位置に追いやられてしまったように思います。都度都度に鳴り物入りの政策が掲げられ、世間の耳目を集めることには成功しましたが、結果を見ないままに次々と重要政策が変わっていき、とても残念な思いもしました。
出雲国と私たちの因幡国とは、出雲の神である大国主命(オオクニヌシノミコト・大黒さま)と、因幡の美しい女神・八上媛(ヤカミヒメ・鳥取市河原町に居たと伝えられる)との恋物語に始まり、いくつものご縁で結ばれています。
今回も出来る限りの支援をしてきたいと思っております。
昨18日木曜日には、衆議院本会議において総理の訪米報告と質疑が行われました。華やかな外交成果を誇る報告でしたが、これに比べて地方の衰退に歯止めがかからない現状を我々は政府・与党として厳しく受け止めなくてはなりません。
「唯一の同盟国であるアメリカとの信頼関係の一層の強化」は確かに重要であり、「今日のウクライナは明日の東アジアかもしれない」との認識も恐らくは正しいのでしょうが、同盟国がアメリカ一国しか存在しないということの恐ろしさも、そしてそれが憲法の集団的自衛権についての解釈に由来することも、同時に認識せねばなりません。
冨沢暉(ひかる)元陸上幕僚長がつとに指摘されるように、集団的自衛権行使による安全保障と集団安全保障によるそれとは、信頼性という点において大きく異なるのであり、憲法第9条の議論においてこれを欠かすことは出来ません(冨沢暉著「逆説の軍事論」・バジリコ刊・2015年)。「今日のウクライナは明日の東アジア」というのはロシアを中国に、ウクライナを台湾或いは日本に置き換えた議論なのでしょうが、わかりやすい議論には注意が必要です。
ウクライナの現状について、アメリカの責任もないとは言えません。バイデン大統領がわざわざ、「ウクライナはNATO加盟国ではないので、アメリカは直接的な軍事支援はしない」旨を表明しなければ、プーチン大統領がウクライナ侵攻の決断をしなかったかもしれない、という説は根強くあります。NATOとロシアの直接対決は避けなくてはならない、とのアメリカの意思は十分に理解できますが、抑止力を損なわない形で立場を表明することは十分に可能だったはずです。
抑止力のあり方についても、我が国の安全保障を語る限り、必ず根底に憲法問題が横たわっています。更なる議論と結論を得る努力が必要です。