石破 茂 です。
アメリカ合衆国第46代大統領にジョー・バイデン前副大統領が就任することはまず確実と言われております。
私自身は、幹事長在任中にホワイトハウスで一時間程度、お会いする機会があっただけなので、人物や政策について予見めいたことを記すことは差し控えますし、国務長官や国防長官などの顔ぶれを見なければ方向性はわかりませんが、「サスペンスとディール」を真骨頂とするトランプ現大統領のように「その時々によって発言が変わる」「大統領と閣僚の言うことが違う」「スタッフが頻繁に交代する」などということはなく、老練かつ周到な政策を展開するものと思われ、日本にとってはむしろトランプ大統領よりも手強い相手となる面もあるように思います。
大統領選挙について、それぞれの州で一票でも多く取れば、割り当てられた選挙人を総取りするという方式(メーン州とネブラスカ州を除く)を以前から不思議に思っていたのですが、これはやはり各州が強い独立性を持った『国』のような存在(United States)であるアメリカの国の形によるもののようです。「それぞれの『国』の意思は一つでなくてはならず、複数あってはならない」と言われれば、成程そんなものか、とそれなりに納得致しました。
最近でも、全米の得票数ではアル・ゴア氏やヒラリー・クリントン女史の方が多数であったのに、獲得した選挙人の数が多数であったブッシュ氏やトランプ氏が勝利した際、何か妙な気がしたものですし、アメリカ国内でも議論はあるようなのですが、民主主義にも様々な形があるものだと改めて思います。
今国会で審議中の種苗法改正については反対意見がかなり見受けられますが、誤解に基づくものも多くあるのではないでしょうか。
種苗法の主たる目的は「品種育成者の権利保護」であり、それが十分になされていない現状を改正しようとするものです。
新品種の育成には多大の労力・時間(だいたい5~10年)・費用が掛かり、これが容易に海外に持ち出されるようなことがあってはなりません。今回原則として禁止される自家採種も、農家が自家消費用に使うものは問題がないのに加えて、もともと禁じられていない一般品種が国内栽培の9割を占めており、国内生産に与える影響はさほど大きくないように思われます。今回の改正で自家採種に育成者の許諾が必要な対象となるのは「ゆめぴりか」「つや姫」(コメ)、「あまおう」(苺)、「シャインマスカット」(葡萄)、「紅はるか」(サツマイモ)などの登録品種であり、これらの自家採種はそもそも難しいともされています。生産費のうち種苗費の占める割合も3%程度であり、消費者が大きな不利益を被ることもありません。
一方で、中国では日本から持ち出された種苗を使って多くの新品種が堂々と売られています。このようなことが罷り通れば日本で新品種を開発する意欲は失せ、今後日本産の農産品が世界に進出することも困難になることが危惧されます。
政府としても、提起されている多くの問題点に誠実・的確に答える努力をしていただき、本法案が良い形で成立することを願います。
昨12日木曜日の国防部会では、武居智久・元海上幕僚長を講師に迎えて、今後の海上防衛力の在り方についての議論が交わされました。
たしかに防衛省側に多くのミスがあったとはいえ、イージス・アショア(陸上イージス)の導入の本来の趣旨が捨て去られていいものだとは思いません。もともと陸上イージスは、①本来は幅広い任務を担当できるイージス艦をミサイル・ディフェンス対応専門艦よろしく日本海において24時間365日任務に当たらせることがあまりに非合理であること(イージス艦は中国の活動が活発化している南西海域に進出させるべきこと)、そして②乗組員の負担があまりに大きいこと、の二点を解決するために考えられたものです。
この二点の問題点は引き続き解決を求められるものであり、ブースターが地上に落下する危険については別途解決の方策を考えるべきと思います。
艦船勤務の海上自衛官の数は今でも足りていません。加えて、今後30年で適齢期人口は29%も減るのであって、「大型のイージス艦を更に建造するべきだ」との一部の論には全く賛成しかねますし、限りなく本来の地上イージスの趣旨に戻るべきものと考えています。
なお、仮に敵基地攻撃能力を保有するとしても、この能力がミサイル防衛システムの能力を代替できるわけではありません。
現在俳優座で公演されている、高橋是清を描いた「火の殉難」(作・古川健、演出・川口啓史)を観たのですが、これは実に感動的なものでした。高橋是清、原敬、井上準之助、犬養毅…命を懸けて国家国民のためにその身を捧げた政治家たちの姿の描き方には強い感銘を受けましたし、金解禁の是非と財政政策を巡って高橋と井上が激しく論争する場面は特に印象的でした。コロナウイルス感染防止のため、場所は六本木の俳優座ビル5階の稽古場、観客数もごく限定されたものとなっていますが、22日日曜日まで上演されていますので、ご関心のある方はどうぞ足をお運びください。
さる10月30日、政治評論家の中村慶一郎氏が逝去されました。享年86。読売新聞の政治記者を退職後、三木武夫総理の政務秘書官を務め、その後政治評論家に転身、日本テレビ系の報道番組で解説者やコメンテーターとしても活躍しておられました。ポジショントーク的な発言に終始したり、権力に迎合したりといった振舞いが増えた中で、常に権力に対して公正な立場から是々非々で評論を加える数少ない硬骨のジャーナリストであったと思います。30年以上前から存じ上げてはいたのですが、近年特にご厚誼を賜り、お亡くなりになる直前にも病を押して事務所をお訪ねくださり、叱咤激励を頂きました。ご指導にお応えできないままにお別れすることになったことが残念でなりません。御霊の安らかならんことを切にお祈り申し上げます。
今週末も自民党鳥取県連総務会、県連大会、地域での懇談会等の用務で選挙区へ帰ります。
皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。