身寄りのない高齢者の死後事務についての質問は、地域住民と共同で作り上げた質問。ご協力いただいた伝馬学区民生児童委員協議会の原剛道会長さんはじめ民生児童委員の皆様、近隣住民の皆様には感謝申し上げます。
さて、ひとり暮らし高齢者の孤立死の死後事務が大きな社会問題となる中、8月末の1週間の間に、南区のある学区のあるご町内会で、孤立死事案が3件相次ぎ発生した。8月22日には近隣に悪臭が漂っていることから警察がAさん宅に立ち入り。死後2週間ほど経過したご遺体を発見。8月20日に高齢女性Bさんがやはりご遺体で、8月27日、高齢女性Cさんの姿を見かけないことから、近隣住民がCさん宅に立ち入ったところ、家の中で倒れ、生命の危機状態にあったCさんを見つけ、救急車で病院に移送するという事態となった。
このご町内の方々は、3件続けて孤立死事案が発生したことにショックを受けるとともに、死後もご遺体から流れ出た体液からでる悪臭や大量のハエに苦しめられ、大変なご苦労をされた。
もともとこの学区では、ひとり暮らし高齢者を対象とした「ふれあい喫茶事業」や、民生児童委員が中心となり学区あげて実施していた「ひとり暮らし高齢者給食会事業」、民生委員さんや町内会が中心となって実施していた「地域見守り活動」、「いきいき支援センター(地域包括支援センター)の見守り支援員による「見守り訪問・電話活動」などが継続して重層的におこなわれていた。孤立死された高齢男性Aさんも近所の民生委員さんから誘われ、「ひとり暮らし高齢者給食会事業」などに頻繁に参加していたが、新型コロナウイルス感染症の拡大により今年度の高齢者ふれあい事業のすべてが自粛されていたさなかに、孤立死が立て続けに発生したことで、関係者の間には徒労感が漂っている。
さらに死後事務の遅延が住民を苦しめた。Aさんの場合、ご家族は重度の認知症で施設に入所中。また、他のご家族も重い障害を持っていた。そこで、南区保健センターは、悪臭のもととなっていた布団やカーペットの処理、はえの駆除などの消毒作業を業務外事務として実施しましたが、やらざるをえない背景には、ご遺族だけでは対応が困難であり、このままでは住民の平穏な生活が脅かされるという判断があっただろうと思っている。
南区では、孤立死後の、居室の原状回復が大家さんの負担となっており、孤立死された方に身寄りがなく、家族・親族がみつからない場合には、葬儀や住んでいた部屋の原状回復といったいわゆる「死後事務」がスムーズに進まず、いつまでたっても遺品を部屋に保管しなければならないケースが多く、ご苦労されているといった話が近年頻繁に起こっている。
こうした問題は、身寄りのない方が孤立死をされた場合に、ご遺体と遺品を引き取り、火葬まではそれぞれ区の担当部署が行うことになっているが、それ以外の事務については定めがないため、ご本人と関わりのあった地域の方々、大家さん、相談機関等のご協力により対応されているという実態に課題があるのではないかと考えている。
家族や親族など身寄りのない高齢者ご自身の中には、亡くなられた後の葬儀やお墓の問題をはじめ、部屋の退去、病院の支払い、私財の整理等について不安を抱いている方は多いのではないかと考える。
そこで、「自分が死亡した後のことが心配」という方が生前において死後事務委任契約を結び、本人の意思に基づき、亡くなった後の死後事務の不安を解消できるような名古屋独自の仕組みの構築について、健康福祉局長の見解を尋ねた。
■ 健康福祉局長答弁
頼れる家族のいない高齢者が、自分の亡くなった後の葬儀、家財処分等を、本人の希望に沿った形で行われるよう、生前に契約する死後事務委任契約は、個人の尊厳を尊重するうえで重要なことであり、身寄りのない高齢者、地域の方々それぞれの安心のためにも意義のあるものと認識している。
この死後事務委任契約については、弁護士や民間事業者などにより多様なサービスが提供されており、まずは本人の希望に沿った契約を結ぶことができるよう、サービスの情報収集を行うとともに、いきいき支援センター等の相談職員の資質向上を図っていく必要がある。
さらに契約時に一定の金額を受任者に預託しておく方法が一般的であり、高額の預託金の支払いが困難な低所得者層の方も死後事務委任契約を結ぶことができるような仕組みも必要であると認識している。本市独自の事後事務委任契約に関する仕組みづくりのための調査をおこない、令和4年度の実施に向けて取り組んでいきたい。