区割り案勧告など

 石破 茂 です。
 通常国会も閉幕し、来週22日水曜日から参議院選挙が公示となることが決まりました。
 世の中は「本当に選挙があるのか」といった感じの静けさです。参議院選挙に携わるのは今回で13回目となるのですが、こんなにも雰囲気が低調なのは初めてです。選挙区である鳥取は、島根と合区ということもあって低調振りは尚更のことで、よほど丁寧にお願いしない限り、投票に行っていただくこと自体、困難なように感じています。
 コロナ禍やウクライナ事変で明らかとなった医療体制や外交・安全保障政策の問題点など、有権者に選択を求めるべき重要テーマは数多くあるのですが、与野党ともに抽象的な公約は掲げるものの、敢えてそれらを具体的に問わない国政選挙の意義とは何なのでしょうか。選挙は勝ちさえすればそれでいい、というものではないはずです。せめて自分の遊説先では国政の課題と目指すべき方向について、出来る限り語ろうと思っています。

 

 先週末、シンガポールで3年ぶりに開催されたアジア・安全保障会議(シャングリラ・ダイアローグ)において、岸田総理は「被爆地である広島選出の衆議院議員として『核なき世界』の実現に向けて全力で取り組む」旨を表明されました。これと米国の拡大抑止の実効性の向上とはどのように関連付けて考えるべきでしょうか。
 2009年4月5日のオバマ大統領のプラハでの演説を、アメリカも「核なき世界」を目指すことを表明したものだと受け取る向きも多いのですが、同大統領は「核兵器の削減」と「核兵器不拡散の強化」については強く訴えているものの、核兵器「廃絶」への具体的な道筋については何ら言及していなかった点について注意が必要です。この演説後、当時の鳩山由紀夫総理は国連でオバマ演説を絶賛し、日本が今後とも非核三原則を堅持することを改めて明言しましたが、岸田総理のご認識はこれとは全く違うものだろうと考えます。
 「核」(弾頭)そのものではなく、核の使用の可否についての意思決定過程と政治的責任を共有する、という「核共有体制」について真剣かつ早急に考え、もって拡大抑止の実効性の向上を図るべきです。

 

 昨16日、政府の衆議院議員選挙区画定審議会は、衆議院選挙における一票の格差を是正するため、5都県で定数を10増やし、10県で計10減らす案を総理大臣に勧告し、これを受けて今秋にも開かれる臨時国会に公職選挙法の改正案が提出される見込みとなっています。
 人口最少である鳥取県は現在1区・2区で定数が2なのですが、これを1減らして定数を1とすれば、突如として鳥取県が全国で一票の価値が最も軽い県となってしまい、それはいくらなんでもおかしいだろうということで、今回の見直しの対象とはなっていません。
 選挙のルールについて、我々国会議員は対象者でもあることを考え、意見を述べる際に自身の損得を捨象すべきことは当然です。しかし国策として東京一極集中の是正を目指していながら、地方分権も徹底しないまま、過疎地の定数を減らすというのは一種の二律背反ではないかと思いますし、過疎地の有権者が主権者として候補者にアクセスする権利があまりに軽視されているのではないか、との感も否めません。消滅寸前の中山間地の集落に住む人々の寂しく哀しい気持ちに、もう少し理解があってしかるべきだと思います。

 

 今週読んだ本の中では「日本がウクライナになる日」(河東哲夫著・CCCメディアハウス)からいくつかの示唆を受けました。駐ロシア公使や駐ウズベキスタン特命全権大使を歴任された河東氏の視座は的確なもので、ご一読をお勧めいたします。また、少し古いものですが「米・中・ロシア 虚像に怯えるな」(草思社刊・2014年)も好著です。

 

 拙著「異論正論」(新潮新書)が発売になりました。この2-3年の間に書いた短めの文章を一冊にまとめたもので、比較的読みやすい仕上がりにはなっていると思います。自著の紹介をするのもいささか気が引けるのですが、お読みいただけますと幸いです。

 

 週末は、19日日曜日に「参議院千葉選挙区・臼井正一立候補予定者 総決起大会in佐倉」に出席致します(佐倉市民音楽ホール・佐倉市王子台)。佐倉市は地方創生大臣在任中に「ユーカリが丘」の視察で訪れたことがあるのですが、レンブラント、シャガール、モネ、ピカソなどの絵画を擁する川村美術館、唯一の国立の民俗博物館である国立歴史民俗博物館など、魅力的な見どころが多くあるようで、演説だけで帰ってしまうのはとても勿体ない気が致します。

 

 今週の都心は梅雨寒の日が続きました。天候不順の折、皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。

 

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石破茂
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