大国の論理、CLTなど

 石破 茂 です。
 バイデン・アメリカ大統領はプーチン・ロシア大統領を「戦争犯罪人」と断じて強く批判しましたが、国際刑事裁判所の定義のように字義通りの意味ではなく、「酷い奴」というような意味であるように思われます。相手国の指導者を口を極めて罵るのは決して珍しいことではありませんが、互いに憎悪を煽り、国内の世論を喚起していても事態が解決に向かうとはどうしても思われません。
 国際刑事裁判所(ICC)は2002年に60か国が「国際刑事裁判所に関するローマ規程」を批准して発足したもので、戦争犯罪人の定義がかなり詳細になされているのですが、そもそもアメリカはこれを批准していません。アフガニスタンやイラクでのアメリカの行為を追及された際に、トランプ政権の補佐官であったボルトン氏は「アメリカ憲法を超越した権威は認められない」としてICCを批判しましたが、その姿勢はアメリカの確信に近いものなのでしょうし、アメリカの他に、ロシア、中国、インドもこのローマ規程を批准していないことに留意しなくてはなりません。大国の論理とは往々にして実に自国中心の、かなり手前勝手なものです。
 昨日のゼレンスキー大統領の国会での演説は多くの共感を得たようですし、よく考えられたものであったと思います。この戦争を終結に向かわせるためには、一方を絶対悪と位置づけることは避けなくてはなりません。ロシア、というよりもプーチン大統領の判断が誤っていたことは論を俟ちませんが、無辜の民の人命がこれ以上失われていくことを避けるための方策を追求せねばなりませんし、ウクライナのNATO加盟を見直すことも場合によっては必要となるものと思います。国内的に絶賛を浴びるような外交姿勢や一方的な正義の主張は、往々にして悲惨な結果をもたらします。かつてソ連封じ込めを強硬に主張したジョージ・ケナンがNATOの拡大には極めて慎重であったことは、けだし慧眼であったと言うべきでしょうし、シカゴ大学のジョン・ミアシャイマー教授の主張もリアリズムの観点から大いに傾聴に値するものと思います。

 プーチン氏は今や悪の権化のように批判され、以前はあんなではなかったとの見方も散見されますが、急に人が変わってしまったのではなく、恐らく最初からそのような人格でありリーダーだったのでしょう。これを見抜けず、過度な期待や幻想を抱いたこともまた、我々の大きな反省としなければなりません。
 相当以前の著作ではありますが「プーチンのロシア」(ロデリック・ライン、ストローブ・タルボット、渡邊幸治著・日本経済新聞・2006年)は今読んでもとても示唆に富むものです。ロシア人については「ロシアを決して信じるな」(中村逸郎著・新潮新書・2021年)がとても平易で分かりやすいものだと思います。
 学生の頃からチャイコフスキー(特に交響曲第1番「冬の日の幻想」、第4番、第5番、第6番「悲愴」)、ムソルグスキー、ラフマニノフのファンであり、ロシアを題材とした五木寛之氏の初期の一連の著作(特に「蒼ざめた馬を見よ」「赤い広場の女」)を愛読していた私は、最近相当に複雑な感慨を覚えています。

 週末26日土曜日は㈱ミヨシ産業のCLTプレカット工場竣工式・工場見学会、㈱鳥取CLT訪問・見学(午後1時半・鳥取県西伯郡南部町内)、「どんどろけの会」懇親会(午後7時半・鳥取市内)。
 27日日曜日は自民党鳥取県智頭町支部による街頭演説会・街頭宣伝活動(午前8時~午後1時・智頭町内6カ所)、鳥取・倉吉市長選開票結果報告会(午後8時以降・鳥取・倉吉市内)、という日程です。
 CLTとは直交集成板(Cross Laminated Timber)の略称で、引き板を繊維の方向が直交するように接着したパネルのことを指します。コンクリートに比べて「軽い」「強い」「工期が短い」「作業にかかる人数が少なくて済む」「工事の騒音や現場の廃棄物が少ない」などの多くの利点を持ち、欧米を中心にマンションや商業施設の床や壁に多く用いられています。
 国土の約7割が森林である日本は、森林率も森林蓄積率も世界トップクラスであるにも拘らず、大型建築に木が使われていない残念な状況にありますが、これを打開する決め手としてCLTは大きな期待を集めています。
 10年近く前より自民党で「CLTで地方創生を実現する会」の会長を務め、地方創生大臣在任中にオーストリアの現場も視察しましたが、彼我の差の大きさに驚かされたものでした。先日議連の幹部会で、東京海上日動の隅修三相談役から東京・大手町にある同社本社ビルをこの技術を活用して新築する計画が進捗中とのお話を聞き、やはり国を変えていくのは民間の活力だと痛感し、立派な経営者がおられるものだと心より敬服した次第です。

 早いもので来週からもう4月に入ります。
 皆様、ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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石破茂
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