鉄道と漁業など

 石破 茂 です。
 領土問題を所管する内閣府の入るビルの側面に掲げられていた大きな看板には、かつて「北方の領土かえる日平和の日」という標語が掲げられていたのですが、いつの間にかこれが「北方領土を想う」という意味不明の、何の意志も感じられない不思議なものに変えられていました。自民党の外交部会や国防部会で何度かこの不当性を指摘したからか、この度また元の標語に戻り、ひとまず安堵しております。
 いつ、どのような理由で「想う」となったのか、定かではありませんが、日ロ間の首脳会談が頻繁に行われるようになった時期ではなかったかと思います。2020年の本欄にも書きましたが、ある方からご指摘を頂いて以来、強い違和感を覚えてきました。領土問題が解決しない限り、平和条約は締結されないし、真の意味での平和は到来しない、という強い認識を国民が共有することこそが必要です。
 この件に関する報道が、いわゆる保守系のメディアにほとんど見られなかったことも不思議でなりません。ロシアを刺激してはならない、という忖度が働いたのだとすれば、それは本末転倒というべきものです。
 憲法9条に関するいわゆる加憲案もそうです。憲法第9条第1項と第2項はそのままに、第3項を新設して自衛隊を明記するという案は、すなわち「自衛隊は国際法的には軍隊だが国内法的には警察的な法執行機関」「集団的自衛権の全面的な行使が憲法的に認められないので、外国(米国)の軍隊の駐留を条約上の義務として受け入れる」という、独立主権国家としては誠に相応しくない現体制を、日本国民の意思として固定させてしまう、ということになりかねないのですが、この観点からの議論がいわゆる保守系のジャーナリズムから出てこないことをとても奇異に感じます。北方領土の件も、これと似たような構図なのかもしれません。プーチン大統領は北方領土の議論の際、米軍の駐留を是とする日本について「ほんとうに独立主権国家なのか」という疑義を提起したと聞いています。そのような発想だからこそ、ウクライナ侵攻という暴挙に出たとも言えますが、ある意味で本質を突いているといえるでしょう。

 ウクライナに関する報道もやや少なくなってきたように思われますが、一刻も早い停戦に持ち込むべきだという思いは変わりません。まずは人道措置、そして停戦、停戦監視にこぎつけて、はじめて「戦後賠償」や「戦争犯罪」の問題に取り組むことができるのでしょうが、あらかじめそこまで考えておかねば、どのような形で停戦できるのか、も導き出されないのでしょう。日清戦争、日露戦争、日中戦争・太平洋戦争(大東亜戦争)、ベトナム戦争等々において、どのような処理がなされたのか、よく資料に当たってみたいと思っております。

 安倍元総理の国葬について、世論も分かれているようですが、旧憲法下において行われた国葬が、ただお一人の主権者であった天皇陛下からのご下賜によるものであったことと比較すれば、現行憲法下においては主権者である国民の意思によるべきものであることが求められます。この観点からは、閣議決定のみならず、国民の代表者としての国会の議決を経ておいた方がよりよかったように思います。
 吉田茂元総理の国葬においても賛否両論があったためか、当時の佐藤内閣は国葬後に法整備の必要性について言及していたのに、これもまた先送りにした結果、今日の状況を招来してしまったことは、極めて痛恨事でした。

 自民党として、所属議員に対して今までの旧統一教会との関係について悉皆的な調査を行い、旧統一教会と「絶縁宣言」を行うことは、可及的速やかに行うべきことと思います。その際、国会議員に限るのか、統一地方選挙を控えて、地方議員にまでその範囲を広げるのかはかなり悩ましい問題ですし、一般の党員をどう取り扱うかも深刻かつ複雑な問題となります。現在の自民党の党員資格は「18歳以上の日本国籍を有する者」となっているはずですが、これにさらなる要件を加えるべきか。議論を突き詰めるとこのような問題にも逢着するように思われます。

 先週21日日曜日、東京ビッグサイトで開催された「国際鉄道模型コンベンション」で「令和鉄道放談」と称するトークショーに前原誠司議員と参加して参りました。「乗り鉄・呑み鉄・客車派」の私と、筋金入りの「撮り鉄・SL派」である前原氏とは全く流派が違うのですが、政治の話を一切抜きにした、楽しいひとときでした。インターネットで傍聴記もアップされておりますので、鉄道好きの方はご覧になってみてください。
 昨日は同じくビッグサイトで開催された「ジャパン・インターナショナル・シーフードショー」(大日本水産会主催)に行ってまいりました。排他的経済水域は世界第六位、その海水の体積は世界第三位、生息する魚種は三千種以上と、日本の水産業は大きなポテンシャルを持っているのですが、漁獲量は最盛期の三分の一に落ち込んでいるのが現状です。漁業者の所得向上のためには適切な資源管理、高付加価値化、経費削減が必要で、スマート水産業の普及と輸出の促進が大きなカギとなります。この観点から大きな示唆を得られた貴重なひと時でした。

 今週は「鉄道復権」(宇都宮浄人 関西大学教授著・新潮選書・2012年)、「国鉄」(石井幸孝 元JR九州会長著・中公新書・最新刊)、「新中国論」(野嶋剛著・平凡社新書・2022年)の三冊をとても面白く読みました。
 残暑厳しき折、どうかご健勝にてお過ごしくださいませ。

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石破茂
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