北朝鮮「核武力政策についての法令」など

 石破 茂 です。
 北朝鮮のミサイル発射が続いています。日本国内ではあまり大きく報道されませんでしたが、北朝鮮は建国記念日前日の9月8日に最高人民会議を開催し、核兵器を使用する際の指揮権や条件などを明記した「核武力政策についての法令」を採択しました。ここで「国家存立や人民の生命安全に破局的な危機をもたらす場合」「国家指導部や核武力指揮機構に対する核および非核攻撃」などの要件が列挙されています。北朝鮮にとっての核使用のハードルがそれほど高くないこと、核保有国の中で初めて核兵器の先制使用を明記していること、に着目し、警戒すべきです。
 北朝鮮はおそらく、ウクライナが核を放棄し、その代わりに米・露・英・仏・中の核保有国がウクライナの安全を保障する、という(子細に読めばそのような内容ではないのですが)「ブダペスト覚書」があっさりと反故にされたのを見て、核を放棄しないという意思を更に強めたのでしょうし、核の使用を仄めかせばアメリカ自身は軍事介入をしないことも改めて学んだと見るのが自然です。
 北朝鮮の核ミサイル能力は変則軌道能力も含めて着実に向上しつつあるのに、我が国の対応のスピードが追い付いていないのは極めて問題です。我が国と距離が近接しているので、国民の避難に時間的な猶予がないことをやむを得ないものとする見解がありますが、イスラエルは昨年5月のハマスから受けた3000発のロケット攻撃の約9割をミサイル防衛システムで撃ち落としていますし、国民が避難するシェルターの整備率も100パーセントです。イスラエルにできることが何故わが国にはできないのか。Jアラートを改善することも急務ですし、シェルターの整備にいたっては本格的検討の俎上にすら乗っていません。
 政府は北のミサイル発射の度に「外交ルートを通じて厳重に抗議した」としていますが、それに北が痛痒を感じるはずはありませんし、そもそも一体誰に抗議し、その相手はどのように応答したのかも全く不明です。国民の不安感を払拭するために、我々は一層の努力をせねばなりませんし、ミサイル発射が常態化することにより、国民が「ああ、またか」と警戒感が薄れてしまうことにも私は強い危機感を持つものです。

 今週、武貞秀士・拓大教授の講演を聞く機会があったのですが、プーチン大統領が「ウクライナはもともとロシアと兄弟なのであり、独立すること自体認められない」としていることと、北朝鮮が「韓国はアメリカの傀儡国家であり、その存在は認められず、北朝鮮による統一こそが正義である」としていることは極めて酷似している、との指摘を聞き、なるほど然りと深く納得したことでした。我々の理解を遥かに超えていても、そのような国が(どちらも)我が国の隣国として現実に存在していること、中朝、露朝、中露はそれぞれが密接に関係しており、それらが今後一層連動するであろうことにも強い警戒が必要です。

 このような状況を踏まえれば、防衛費の増額自体は間違いなく必要ですが、必要な項目の積み上げについても、陸・海・空各自衛隊それぞれがバラバラに行うことなく、宇宙やサイバーも含めた統合的なオペレーションを前提としてなされなくてはなりません。財源についても安易に国債に依存するとの姿勢は持続性を損なうものです。国家の独立と安全が全国民の利益である以上、財源もできる限り「今」を生きる国民全体の負担によるべきことを基本とすべきですし、これを正面から訴える気概を政府・与党は持たねばなりません。

 「国賊」発言をしたとされる村上誠一郎議員に対して、役職停止一年間の処分が自民党党紀委員会においてなされました。
 村上議員も発言した記憶はないとしながらも、これを撤回して謝罪すると述べているので、これで決着ということになるのでしょうし、意見を述べる立場にもありませんが、自民党総務は執行部の役職とは異なり執行部の方針に対して意見を述べる立場なので、また別の選択もあったのかもしれません。遠藤総務会長が述べたように、礼節を守りつつ、自由闊達な議論が行われる自民党であるべきですし、村上議員には今後とも経験と見識を生かして正論を述べていただきたいと思っています。

 寒暖差の大きい日々が続いています。皆様どうかご自愛の上、ご健勝でお過ごしくださいませ。

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