野党質問など

 石破 茂 です。
 今週行われた衆・参両院の予算委員会を聴いていて、いつものことながら野党側の姿勢には強い疑問を感ぜざるを得ませんでした。政府・与党にとっては有り難いことではあるのですが、議論の場としての国会のあり方がこれでよいはずがありませんし、野党の追及があのように甘ければ、政府の側もこんなものだと高を括ってしまい、能力も低下して国民に対する緊張感も失われ、国家国民のためには全くなりません。
 最近昔話ばかりが多くて大変恐縮ですが、私が閣僚を務めていた小泉・福田・麻生内閣時代の野党の予算委員会での質問は、岡田克也氏、前原誠司氏、長妻昭氏等の名だたる論客が質問に立ち、一人が最低でも一時間、多いときは二時間近くの質疑時間を使って鋭い質問を政府に浴びせていました。我々閣僚は時計を見ながら早く時間が経たないかと念じていたのですが、そのような時にはなかなか時間が進まないように思った記憶があります。ベテラン閣僚の中には、わざと論点をずらしたりして時間稼ぎをするテクニックを得手とする人もいたのですが、時間が多くあるとこの技があまり効果を発揮せず、畢竟真剣勝負にならざるを得ませんでした。
 今週の野党質疑では、立憲民主党の逢坂誠二議員や、有志の会の吉良州司議員の質問が問題点を明確に突いたものでしたが、質疑時間が20分から30分という短さだったゆえに、議論が全く深まらなかったのは残念なことでした。
 これはすべて野党の責任です。野党全体では数時間の持ち時間があるのですから、質問者を質疑能力の高い議員ごく少数に絞り、数日をかけて質問を練り上げる努力をすべきです。自民党が野党の時は、論ずべきテーマや資質を問うべき閣僚などの目標を明確に定め、徹底的に民主党政権を追及し、それなりの成果を挙げたと自負しておりますが、今の野党にはそのような気魄が全く感じられません。それは予算委員会で総理に訊くことではあるまい、なんという勿体ない時間の使い方なのだろう、と今回も何度も思ったことでした。
 以前の国会がもう少しレベルが高かったように思うのは、単に議歴を重ねた者の懐古趣味だけではないように思います。中選挙区制時代のキメ細かな選挙区回りがあまり行われなくなったために有権者との意識の乖離が起こっているのかもしれません。アメリカ議会のような学級崩壊状態ではないだけまだマシなのかもしれませんが。

 

 「成長の果実としての税収増を物価高に苦しむ国民の皆様に還元する」というのが政府の経済対策の大きな柱であり、本日の総務会でもこれが了承されました。「税収増は『成長の果実』なのか」「物価高の主因は大規模な金融緩和による円安であり、当面減税などで対応しても根本的な解決にはならないのではないか」「物価高の影響は行政サービスの主体である政府にも当然及ぶのであり、『還元』する原資はどこに存在するのか」等々、世の中の人が抱く素朴な疑問は、予算委員会での質疑を聞く限り氷解されたとは思えず、ここを上手く説明しない限り国民の「なんだかよくわからないモヤモヤ感」は解消されないのでしょう。折角の政策が国民に支持されないのではどうにもなりませんので、本日の総務会でポイント案の早急な作成を政務調査会長にお願いしておきました。

 

 「異次元の金融緩和」は、カンフル剤的な効き目はあったとしても決して永続的なものではなく、円安はなお止まる気配がありません。かつてケインズは「社会の存続基盤を転覆する上で、通貨を堕落させること以上に巧妙で確実な方法はない」と述べたそうですが、我が国がその道を辿ることのないよう、我々は心して臨まねばなりません。

 

 パレスチナの状況は今週、より一層緊迫の度を高めています。ハマスのイスラエルに対するロケット弾の飽和攻撃に対してイスラエルが空爆で対抗するのは、国連憲章第51条の定めるものかどうかは別として、自衛権による措置ですが、そこには比例の原則が働かねばなりません。自衛権であれば何をやってもよいというものではないのであって、事前の警告(実効性が伴うもの)のない民間人の殺戮などは、国際人道法違反であると断ぜざるを得ません。イスラエルは「ハマスの攻撃はイスラエルの存亡に関わる脅威なので、子供を含む多くのガザ地区の民間人が死傷したとしても『過剰な被害』には当たらない」と主張していますが、これが国際法で禁止されている「集団的懲罰」に該当しないかどうかも含め、きちんとした検証が必要です。
 ジュネーブ条約などの国際人道法について、我々国会議員に知識がほとんど欠けていることは極めて問題であり、大いに反省しなくてはなりません。同条約はこの内容について国民に対する教育を行うことを定めていますが、日本では全くと言っていいほどに実行されていません。日本国憲法第9条第2項にいう「交戦権」とは「戦いを交える権利」ではなく、ジュネーブ条約などが定める「戦争におけるルール」のことだ、というのが政府解釈ですが、それをふまえて字面通りに読むと、「日本国憲法は国際的な武力行使の際のルールを認めない」という恐ろしいことを言っていることになります。このような規定を残して、自衛隊だけ明記すればよいという議論がいかに暴論であるか、改めて痛感させられます。

 

 今週の都心は夏日が戻ってきたような妙な天候が続きました。
 明日から三連休の方もおられることと思います。ご健勝にてお過ごしくださいませ。

 

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石破茂
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