石破 茂 です。
臨時国会は延長もなく、9日月曜日に閉会となりました。
日韓問題、中東海域への自衛隊派遣、日米貿易交渉、社会保障改革等々について国民の納得が得られる議論が展開されるべきであったにも拘らず、二閣僚辞任や「桜を見る会」問題に主に焦点が当たってしまったのは痛恨の極みでした。政府の説明が理解困難と受け止められ、野党やマスコミからの質問が延々と続き、これで肝心な国会審議の時間が奪われてしまったことへの責任は、政府やこれを支える与党の我々が負わなくてはなりません。己の非力を申し訳なく思っております。紀元前の中国の王朝・秦の丞相(宰相)であった趙高は、部下の重臣たちの自分に対する忠誠心を試すため、二代皇帝・胡亥の前に鹿を連れてきて「これは珍しい馬です」と言いました。皇帝は「馬ではなく鹿だろう」と言ったのですが、趙高は居並ぶ重臣たち一人一人に「馬に見えるか?鹿に見えるか?」と聞き、彼の権勢を怖れて「馬です」と偽りを言った者はそのまま重用され、正直に「鹿です」と答えた者は難癖をつけられて処刑されてしまいました。その後、趙高に逆らう者は誰もいなくなりましたが、やがて人心は離反し、国は乱れ、遂には楚の項羽によって滅ぼされてしまいました。
司馬遷の「史記」の中にあるこの話は、「馬鹿」の語源として有名ですが、最近これを耳にすることが多いように思います。今の日本の政治と重ねて語られているとすれば由々しきことです。前回、「政治が嘲笑の、官僚が憐憫の対象となってはならない」と記しましたが、我々は与党の構成員なればこそ、真実を見極め、誤りを糾す誠実さを持たなくてはならないと痛切に思います。11日水曜日、私が会長を務める「CLTによって地方創生を実現する議員連盟」で「ROOFLAG 賃貸住宅未来展示場」(江東区東雲・現在建築中)「新豊洲Brilliaランニングスタジアム」(江東区豊洲)「CLT PARK HARUMI」(中央区晴海)を見学したのですが、実際に現場を見て、民間の発想と意欲に大きな感銘を受けました。
CLT(直交集成板)はコンクリートに近い強度を持ちながら重さは半分以下のため、工場から現場までの資材の運搬が容易、基礎も簡易なもので足り、コンクリートのように乾燥する時間も省けるため工期も短く、騒音も排出ゴミも極小、作業人員も大幅に少なくて済み、材料を国産ですべて賄え、CO2削減にも寄与するという優れもので、今後価格が低下すれば日本を大きく変える可能性があるものと期待しております。
森林率が先進国第三位である日本の利点を生かし、ヨーロッパで飛躍的に拡大しているこの技術の普及に向けて、今後さらに努力して参ります。皆様にもご関心を持って頂ければとても幸いです。9日の自民党憲法改正推進本部は、篠田英朗・東京外大大学院教授の「活力ある日本のための改憲とは」と題する講演でした。
同教授は以前から、私の憲法に関する提言などを引用してコメントされており、国際法の大家との有意義な論議を期待して臨んだのですが、私の質問に対して正面からのお答えは頂けなかったように感じ、残念な思いが致しました。教授ご自身のご対応云々というよりも、総じて国会内や自民党内の言論空間が歪になってしまっているのではないかという感覚が拭えません。正面から正々堂々と議論が交わされる雰囲気を取り戻さなくてはなりません。週末は14日土曜日が自民党岡山県連・鳥取県連学生部交流会で憲法改正について講演(午後1時半・自民党鳥取県連)、盤山会(親族中心の集まり)研修会で講演(午後3時・白兎会館)、「税理士による石破茂後援会」で講演(午後4時半・鳥取ワシントンホテルプラザ)、「どんどろけの会」クリスマスパーティで国政報告(午後7時・ホテルモナーク鳥取)。
15日日曜日はイシバチャンネル100回記念番組収録(午前9時半~体育イベント、若桜鉄道乗車、父祖の地である八頭町大御門地区にて撮影)という日程です。珍しく土・日の2日間、地元に帰ります。
イシバチャンネルも100回となるのですね。キャスターの名越涼さん、スタッフの皆様、本当に有り難うございます。
「体育イベント」なる催しでは、久しぶりに自転車の輪転がし(昭和の運動会では「銀輪競争」と言っていました)に挑戦する予定です。私は小学校の運動会では入賞に全く縁がなかったのですが、あまりに口惜しいので昭和42年、5年生の個人種目である「銀輪競争」の猛練習を行い、2等賞の黄色いリボンを獲得しました。後にも先にも運動会で入賞したのはこの一回きりでしたが、その時の思い出は今も鮮烈に残っています。そんな種目があったな、と思われた方はおそらく同世代ですね。
今週の都心は金曜日まで師走とは思えない暖かな日が続きました。
今年もあと半月を残すのみとなりました。皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。