三文書改定など

 石破 茂 です。
 「安全保障三文書(国家安全保障戦略・防衛大綱・中期防衛力整備計画)」の改定に併せて、防衛政策の見直しが議論され、「有識者会議」の報告書も公表されました。総理大臣はこれについて「内容・予算規模・財源を一体的に示す」との「三点セット論」を述べておられたはずなのですが、先月28日に財務相と防衛相に対して「補完する経費も含めて安全保障関連費を2027年度に対GDP比2%とするように指示した」とのことで、これらをどう整合的に理解すればよいのか、悩ましいところです。
 必要なものを精緻に積み上げた結果が対GDP比2%を超えたとすればそれはそれで構わないのですが、内容も財源も示さないまま、まずは金額ありきだという指示だとすればこれは明らかにおかしい。「補完する経費」とは一体何なのか、今の時点では全くわからない。「海の警察組織」である海上保安庁の経費を含めるなら、警察の経費も含めなければ理屈としては合いませんし、国土交通省所管の空港や港湾の整備はたしかに防衛に寄与するところも大きいのですが、これを「安全保障関連費」として位置付けるのもいささか無理のある議論です。
 財源論も、「国債か、増税か」との二極論に分かれてしまっていますが、本来は基幹三税で賄うべきものです。スウェーデンは酒税・煙草税・銀行税を財源とするようですが、このやり方には負担の公平性の議論が残るのではないでしょうか。
 基幹三税のうち、消費税はその使途が社会保障目的に限定されており、逆進性も強く持つことから除外するとすると、残りは所得税か法人税ということになります。安全保障は国家の根幹であり、これを安易に国債で賄うことは、国民の安全保障に対する意識を弛緩させることにつながりかねません。ドイツも増額分は国債で賄っている、と言いますが、財政事情は日本よりはるかに健全で、基金を造成するとの手法も安易な国債論とは異なります。
 大切なものは決してタダではない、フリーランチなどは存在しない、というあまりにも当たり前のことを、政治は語らねばなりません。人口の激減が現実となっている我が国において、安易な国債発行は、次の世代からの搾取を意味します。赤字国債発行の原則禁止を定めた財政法第4条が、戦時国債を乱発し国民に塗炭の苦しみを強いた先の大戦の反省から生まれたことも、今一度想起すべきです。
 このような議論が積極財政論者から大変な反論を浴びることは必定ですが(「正論」2023年1月号「財務省とメディアの罪」収録の諸論考等)、経済の成長は財政政策に偏重して語られるべきものでは当然ありません。この点、「緊縮財政で景気がダメになったのではなく、景気がダメなので積極財政を行ったにもかかわらず、効果がなかったというのが実態」であり「財政出動をしても効果がないほど低成長体質が深刻であることを意味している」と説く加谷珪一氏の論はなかなかに示唆に富むものです。同氏の論は「国民の底意地の悪さが日本経済低迷の現況」(2022年・幻冬舎新書)に述べられておりますが、新たな気付きを多く得た好著でした。

 議論が偏った装備品に集中しがちですが、予備役(予備自衛官)の確保、医療・衛生の体制整備、掩体(シェルター)の具備等々、継戦能力を保持するための施策も、この際きちんと整備充実すべきです。「反撃能力が不要だとは言わないが、その前にやるべきことがある」とする香田洋二・元自衛艦隊司令官の主張(「正論」2023年1月号)に、我々は真摯に耳を傾けなくてはなりません。日米同盟が効果的に機能するためには、常設の日米統合司令部の創設も必要不可欠です。この創設は極めて大きな抑止力となるものであり、米国の態度を忖度するのではなく、日本側から提起しなくてはならないと考えております。年末に向けて、まだまだ詰めなくてはならない論点は山積しています。

 寄付不当勧誘防止法など、統一教会の被害者救済に向けた諸法案が来週から審議入りする予定です。実際に被害者救済にどれほどの効果があるのか、考えうる具体的事例にあてはめながら、よく理解せねばならないと思っております。

 とうとうカレンダーも残りあと一枚となりました。慌ただしさが加速度的に増してまいります。
 皆様、ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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