若桜鉄道など

 石破 茂 です。
 政府・与党として新型コロナウイルスのもたらす影響への対応を打ち出し、効果を期待するところですが、イベントや各種行事、旅行や外出など、自粛ムードが蔓延しすぎて経済・雇用そのものが破壊されつつあるように思われてなりません。どうしてこのように極端に振れ、オール・オア・ナッシングになってしまうのか。政府として対象を細かに分析した、ガイドライン的なメッセージと対策を早急に発する必要があります。

 バス旅行やコンサートなどのイベントは、たとえお客様が半分になっても一席ずつ開ける、換気を頻繁に行うか、換気装置の整った会場に限る、乗車や入場前の体温検査やアルコール消毒、マスク着用などを徹底させる、などの方策を講じた上で、必要な経費や損失補填は助成してでも行うべきと思います。屋外で開催されるお花見なども、全面的な禁止は行き過ぎではないでしょうか。健全な良識を持った日本人には、自ずと秩序ある行動をとる人が圧倒的に多いことは震災などの災害時にも実証されていることであり、日本が世界の先導的役割を果たさなくてはなりません。前回も記したとおり、症状が軽く、致死率が低い新型コロナウイルスはそれ故に逆にとても厄介な存在であり、その故にこそ相応しい対応を採らなくてはならないと考えます。
 17日火曜日に開催された超党派の「新型コロナウイルスからライブ・エンタテイメントを守る議員の会」で、コンサートや演劇などをはじめとするライブ・エンタテイメント業界の方々の窮状をお伺い致しました。自粛要請以来、1500以上の講演が中止となったとのことですが、歌い手さんや役者さんのみならず、バックバンド、大道具・小道具、照明、着付け、メイク、花、グッズ販売、関連ジャーナリズムなど裾野は相当に幅広く、損失は16日時点で450億円以上に上るそうです。当日は5人の方からお話を聞きましたが、涙ながらに訴える方もおられ、自分の認識不足を恥じたことでした。
 2月末に公演を実施した「東京事変」の椎名林檎女史に猛烈なバッシングが浴びせられたことが大きく報ぜられましたが、これに心を痛めた人もおられるはずです。そのようなものは不要不急ではないかとのご批判は承知しておりますが、音楽や演劇に生きる希望を与えられる人もまた数多く、人間には「身体の健康」とともに「心の健康」「精神の健康」も必要です。
 社会的活動の自粛・禁止レベルを高めるほどに感染リスクは低下しますが、それと反比例する形で社会的・経済的損失は高まります。オール・オア・ナッシングではなく、その二つの描くカーブの交点が必ずあるはずであり、「国民的被害の最小化」を念頭に、時限性を強く認識しつつ日々努めたいと思っております。

 今週発売の週刊誌に載っている、自ら命を絶たれた財務省近畿財務局職員の方の手記には胸が塞がれる思いです。事実関係について知悉しておりませんので軽々に論評をしてはなりませんし、予断をもって述べることも厳に慎むべきですが、弱い立場の人に負担を押し付けるようなことが断じてあってはなりません。今後行われるであろう民事訴訟において、事実の確認や因果関係についての精緻な議論がなされ、御霊が報われるような司法の判断がなされることと思います。
 責任をとる、と口で言うことは容易ですが、とても難しいことです。9年前、イージス艦「あたご」の事故に関して防衛大臣として海上自衛隊の幹部に対して退官や降格などの処分を行った際、対象となったある幹部の方が大臣室にお見えになり「大臣、この度は責任を取らせていただき有り難うございました」と言われ、深く感銘を受けた時のことは今も鮮明に記憶に残っています。その方はその後重要な地位に就かれましたが、人間として、公人として、武人として身をもって責任の取り方を示されたことは実に立派なものだと思いました。

 14日土曜日、若桜(わかさ)鉄道・八東(はっとう)駅に列車の行き違い施設が完成し、従来の1日10往復が15往復となり、郡家(こおげ)駅で大阪・京都・岡山方面への特急に9本が30分以内に接続できることとなり、利便性が大幅に向上しました。
 昭和5年に鉄道省の路線として開業以来、旅客や貨物の利用が多かった昭和30年代から40年代初めにかけても、行き違い施設が一カ所もなかったため一日10往復しか走らせることが出来ず、日中数時間も運転間隔が空いてしまうこともありました。第3セクターへ移行した後も乗客は減少傾向で、廃線も何度か取り沙汰されたものですが、車両もそのほとんどがJR九州の「ななつ星in九州」をデザインされた水戸岡鋭治氏の手による「昭和」号、「八頭」号となったことや、改装された終点の若桜駅でサントリーが監修するアルコール飲料(サントリーオールドがベース)や軽食が販売されるようになったことと併せ、今回の事業は新しい鉄道の在り方を示唆するものとして実に画期的だと思います。
 数年前、千葉県の「いすみ鉄道」を見学した際、「乗ること自体を目的とする『乗って残そう〇〇線』などと言っているうちは駄目で、『乗りたくなる鉄道、乗って行きたくなる地域』を創らなければ地方鉄道の存続はあり得ない」と言われたことが強烈に印象に残っているのですが、本当にその通りと思います。
 新型コロナウイルスの影響により、関連行事も簡素で、報道の扱いも小さかったことは残念でしたが、このような明るくて希望の持てる出来事はもっと大きく取り扱っていただくべきと思っています。京阪神から三時間弱で行ける若桜町は、間もなく桜の季節を迎えます。味が抜群の吉川(よしかわ)豚や中山間地産米、ジビエ料理、原料米の収穫される田圃ごとに管理されている地酒等々、食の質も全国屈指のものと思います。全国最少の鳥取県の中でも最も人口減少率の高いこの町だからこそ、全身全霊で生き残りをかけた取り組みを展開しています。同町内の宿泊施設は舂米(つくよね)地区に「氷太くん」があり、隣町の八頭町大江地区には廃小学校を改装した「大江バレーステイ」もあります。
 自慢することではありませんが、我々鳥取県、特に県東部の因幡地方は相当な宣伝下手と言わざるを得ません。「大江バレーステイ」については次回ご紹介しますが、これも実に素晴らしい画期的なホテルです。今回は地元の宣伝が多くて恐縮ですが、何卒ご容赦くださいませ。

 週末は、21日土曜日に「福岡NEWSファイルCUBE」出演(10時25分・テレビ西日本・福岡市内)。
 22日日曜日は彼岸のお墓参りの後、自民党鳥取市美保南支部総会に出席致します(午前11時・数津公民館・鳥取市数津)。
 皆様、ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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