参議院議員選挙告示など

 石破 茂 です。
 先週末から参院今週初めにかけて、福岡、松江、堺、秋田と廻ってまいりました。
 4日から参議院選挙が告示となり、4日は鳥取県内の鳥取・倉吉・米子・境港で出陣式、5日は松江で朝八時半からの出陣式の後東京に戻り、大田区・新宿区で東京選挙区候補の応援演説をしてまいりました。
 参議院鳥取選挙区は前回からの島根選挙区と合区が続きますため、鳥取県出身の自民党公認である舞立昇治候補の遊説はほとんど馴染みのない島根県中心とならざるを得ず(鳥取県の東端から島根県の西端まではほぼ東京・名古屋間の距離があり、島根は隠岐諸島まで含みます)、選挙期間中、鳥取県内は候補者が不在となりがちです。
 先日、選挙区のある地方議員さんから「石破さんは総選挙中ほとんど全国を回っていて鳥取に帰らないし、合区となって以来、参議院の候補者もあまり見かけない。国政から見放されたようで寂しい、と言っている住民がいる」と聞かされ、ハッとさせられました。これではあまりに有権者に申し訳がありません。そんな思いをさせてしまっていることを深く反省させられました。
 全国遊説の合間を縫って、舞立候補が不在の日は出来るだけ選挙区を丁寧に回り、地元の課題と共に地方創生や農林水産、憲法、社会保障、外交・安全保障などの在り方を訴えたいと思っております。久し振りに選挙区を廻り、有権者の皆様にお会いできることを心から楽しみにしています。

 衆議院議員として参議院選挙を経験するのは今回で10回目となります(衆参同時選挙となった86年の参院選の時、私は新人候補でした)。鳥取選挙区は今まで8勝2敗とまずまずの成績ですが、参院選挙に限らず、他の選挙の応援に懸命に回るのは本当に勉強になり、自らの力ともなります。時折、候補者より自分の売り込みに熱心な応援弁士もいますが、そもそも自分の選挙は熱心でも、他の選挙は知らぬ顔という人はえてして自分の選挙も決して強くはないというのが私の体験的印象です。

 自民党が野党時代、衆議院においては頻繁に予算委員会が開かれ、政調会長や予算委員会野党筆頭理事として私も幾度となく質問に立ち、民主党政権を徹底的に攻撃したものでした。民主党の総理や閣僚の答弁があまりに稚拙であり、それが短期での政権崩壊に繋がった一因でもあったのですが、それを逆手にとって国会の議論を避けるような態度は決して良いことではありません。政策に自信があるのであればなおさら、積極的に議論に応じ、正面から国民に訴えるべきなのです。
 先般の党首討論で憲法改正について問われた安倍総裁は「私は党内議論に参加していないので答える立場にない」と述べられましたが、「憲法第9条第1項第2項を残したまま、第3項に自衛隊を明記する」と発言され、「大きな一石を投じた」のは総裁ご自身です。「大きな一石」を投じておきながら後は答えないというのはどういうことなのか、との批判を避けるためにも、党内での議論を整理していくべきではないかと思っています。党内議論が明確に整理されていないからこそ、「それによって自衛隊の任務は変わるのか」との野党党首の問いかけに総裁がお答えになれないのであり、このままでは仮に憲法審査会を開くことができても、憲法論議を深めることは出来ないのではないでしょうか。
 記者会見でトランプ発言について問われた防衛相も「日米安保が片務的とは思わない」と答えたと報じられていますが、ここももう少し丁寧な説明が必要だったと思います。大臣のおっしゃるとおり、条約は双務的なものです。ただし、履行する義務は非対称的です。関係者にとっては常識ですが、一般には認識されていないことをきちんと伝えないと、議論がすれ違いになり、国民の深い理解や議論を喚起することができないままとなってしまいます。

 電撃的な板門店訪問において、トランプ氏は北朝鮮の短距離ミサイルを問題視しない旨発言しましたが、短距離ミサイルは概ね射程1000キロ以下のものとされており、平壌から1300キロの距離がある東京は射程外であるものの、日本海側の多くや九州・中国地方は言うに及ばず、距離が990キロの大阪も射程内に入ります。トランプ大統領に言わせれば、「だからアメリカ製のミサイル防衛システムをさらに導入すべし」ということなのでしょうが、抑止力の在り方と併せて日米同盟の今後を精緻に論じ、結論を得ることが我が国にとって決定的に重要です。

 総裁は参院選の各党討論会において、消費税率は今度10%に上げた後は、10年間くらいは引き上げる必要がない趣旨を述べられたそうですが、それを不安なく実現するためには国民的な議論が必要です。
 人口急減と超高齢化の中にあって、このまま推移すれば2040年に高齢者の人口は3868万人のピークに達し(数のみならず、比率である高齢化もほぼ同様と思われます)、介護にかかる費用は今の2.4倍、医療が1.7倍、マクロ経済スライドがかかっている年金でも1.3倍になると予想されています。一方で人生100年時代、どれだけ元気で現役でいられるか、定年制はどう変化するか、収入と支出のプランはどうなっていくか、健康長寿で社会保障のコストはどのように変化するのか、など、社会のあり方の変革とともに前提が大きく変化するのであり、それを踏まえて、なおかつ子育て世代への福祉をより手厚くするために、現物給付も含めて全体のプランを考えなくてはなりません。
 これらの前提も考慮しないままに「消費税率引き下げ」や「消費税廃止」を唱える野党の姿勢も無責任極まりないものです。
 30年前の消費税導入時と比べて、所得の格差は拡大・固定化し、企業が最高収益を上げる一方で実質賃金と可処分所得(総雇用者所得ではなく)が伸び悩む中にあって、逆進性を持つ消費税の果たす役割は、税全体の在り方の見直しと併せて変わるべきものと考えております。学者・識者によってもこの問題についての見解は大きく異なっており、多様な年代やステークホルダーを大きく巻き込んだ議論が必要です。

 故・堺屋太一氏の絶筆となった「三度目の日本」と、藤井聡・京大教授の「令和日本・再生計画」を遊説の帰路の機内や車内で読んでいますが、ともに政権のブレーンである内閣官房参与を長く務めてこられたお二人が述べておられることには、共感するところが多くあります(もちろん意見を異にする点もありますが)。よく精読して咀嚼・理解したいと思っております。

 選挙期間中の来週と再来週、本欄の私の投稿は原則的にお休みとさせていただきます。
 皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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