第953号 任命拒否の本質とは

 本来、推薦に基づいて政府が委員を形式的に任命することで、政治に左右されない自由な研究が国内外に発信される日本学術会議に関し、政府に対して批判的な立場の会員候補6名の任命が拒否された問題は、菅政権の本質を理解する上で非常に重要と考えています。

◆進んだ公権力の私物化
 
 菅政権の前身である安倍政権の大きな特徴は、公権力の集中と私物化でした。本来、内閣は国家三権の一つに過ぎず、国会との緊張関係の下に法律が運用されなければならず、また、学問やメディアには政治権力に影響されない自由な立場での研究や批判が必要です。

 ところが、安倍政権下で進んだのは、人事権を通じた与党、官庁の統制による強引な政権運営と、巧みなメディア戦略によるコントロールでした。結果、権力間の緊張関係は失われました。疑惑解明の説明責任が果たされずに論点をずらしたり、過去の法律解釈と矛盾した答弁が繰り返されて国会審議は形骸化し、政権に近い「御用学者」やジャーナリストがメディアで政権を擁護することが増えていきました。皇位継承に関わる退位の特例法審議の時に、御用学者での有識者会議が安倍総理の意向を受けた見解を示した時には、正直呆れ果てた記憶があります。

◆菅政権の本質
 今回の件は政府に批判的な学者には学者としての「お墨付き」を与えないという印象を持たせるものであり、権力の私物化を疑わせるもので、政治への健全な批判を委縮させてしまうことに繋がりかねません。なぜ特定の候補のみを排除したのか「総合的・俯瞰的に判断した」とするだけで全く説明責任は果たされていません。

 会議の役割である政府への勧告が機能していないのではないかという問題提起も重要ですが、それは別の議論です。問題は、法に従って適正な手続きがなされたかどうか、それを政府が明確に説明できるかであって、議論を拡散させては批判のための批判となり、問題の本質を見失います。

 権力の私的運用疑惑、果たされない説明責任、論点のすり替え、これら安倍政権で繰り返されてきたことが政権発足早々に問題となった事実、これこそが安倍政権の基本的性格を受け継ぐ菅政権の本質を示しています。

◆対立構図の再考を
 その意味で、私はこの問題は枝葉末節の、批判のための批判だと与党から反撃されないように、憶測や不確実な事実を排し、焦点を絞って議論すべきだと思います。そうでないと、批判ばかりの野党だと言われ、公文書の改ざんや検察庁法の解釈など安倍政権が繰り返してきた国会審議の形骸化が、またもや起きてしまいかねません。

 安倍政権下では、野党の疑惑追及に対して政府の主張とは平行線のまま時間が流れて結局うやむやになることが多く、対案を示して追及すべき重要案件がおざなりになってしまうことも見られました。従来通りの国会戦術では国民の支持を集めるのは難しいと思います。

 逆に、菅総理としては、この問題に野党を釘付けにして他の政策を進めれば、結果的に支持率にはプラスになると考えている向きもあります。野党は、菅総理のある種の「罠」に陥ることなく、問題の追及は追及として重視し、バランスの取れた国会戦術で臨時国会に臨まなければならないと思います。

 

スタッフ日記 「児嶋さん、どっち??」

 先日最終回を迎えたドラマ「半沢直樹」ですが、後半は政治がらみのお話だったので、ついつい細かいところが気になってしまいました。

 その最右翼が最終回、柄本明さん演じる箕部幹事長が帝国航空のタスクフォースの場で悪事を暴かれ、失脚するクライマックスシーンです。

 与党の幹事長であって、内閣・政府の一員ではない箕部が国交省管轄のタスクフォースの場にいること自体がおかしいのですが、座席はよりによって国交大臣を差し置いてド真ん中。半沢の小気味よい啖呵に興奮しつつ、「なぜ?」が頭にちらついていました。

 そして秘書としてはアンジャッシュ児嶋さんの「秘書官」の身分が気になりました。

 大臣の秘書官には省庁から任命されて、大臣としての仕事をサポートする事務秘書官と、国会議員としての仕事のサポートを行う政務秘書官(事務所の秘書が就任することが多い)の2種類があります。

 児嶋さんは当初タスクフォースの場で大臣をエスコートするなど事務秘書官のような仕事をしていたにも拘わらず、いったん大臣が失脚するといつの間にか箕部幹事長の秘書になっていました。

 事務秘書官は省庁の一員ですから、もし秘書官から外れても、省庁内で新しい辞令が出て、新しいポストに就くだけです。そして政府の一員ではない与党の幹事長のところに行くような辞令が省庁から出されることはありえません。そう考えると政務秘書官だったのでしょうか?気になります。

 毎週放送を心待ちにしていましたが、仕事とリンクしていなければきっと1000倍楽しめたことでしょう。残念!(シズ)

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