「大阪市の松井市長、ゲーム・スマホ利用を規制」記事は不正確。真相を解説します

こんばんは、音喜多駿(参議院議員 / 東京都選出)です。

本日から二日間、令和二年度予算案のヒアリングを各省庁から行う勉強会がスタートです。

膨大な規模となる国家予算ですが、国民の代表者としてしっかりとチェックの目を光らせていき、批判ばかりではなく対案を同時に出せるよう努力をして参ります。

そんな中、過日に私もブログで批判した香川県に引き続き、「ゲーム・スマホ利用の規制」を大阪市・松井市長が検討するのではないかというニュースが流れ、驚きました。

不登校…スマホ・ゲーム利用「条例、ルール化を」 大阪市の松井市長
https://www.sankei.com/west/news/200115/wst2001150041-n1.html

結論から言うと、こちらの記事は香川県の事案に引っ張られたのか不正確かつ煽りすぎな内容で、大阪市が実際に条例などでスマホ・ゲーム利用を規制する可能性は極めて低いと考えられます。

まず15日に大阪市役所で「教育総合会議」が行われ、その中で現場の校長から「ネット・ゲーム利用が不登校の要因の一つになっているのではないか」という意見が出されたことは事実のようです。

ただそれを受けて、松井市長は「本当にそうなのか、エビデンスを検証しなければ」「行政がルール化をするためには根拠が必要」(要旨)と極めて慎重な態度を明言しています。

本日(16日)に行われた記者会見の該当部分を文字起こししましたので、こちらをご一読下さい。

記者:
最後に一つなんですけど、昨日の教育総合会議で、スマホとかゲームというのが、長時間の使用が不登校の原因の一つになるという指摘をうけて、ルール化することも効果的だという話も出ていましたが、市長としては例えば条例化も視野に何か検討したほうがいいのではないかというお考えはお持ちでしょうか。

市長:
まずは、現場の校長先生から、スマホとスマホでのゲーム、これのやりすぎ、長時間化が子供の引きこもりにつながっているという、そういう現場からの指摘、これを受けて、何らかの対応はしなくてはならない思っていますけど、まずはやはり、専門家も入れる中で、そのエビデンス、本当にそうなのかの検証は必要だと思います

香川県のゲームの時間規制も、2,3年検証しながらやっているという、行政で、ルール、条例という形で、そういうルールを規制するということになれば、事実確認それから事態検証というものをやったうえで、根拠を持ってルール作りが必要だと思いますから、その検証の中で明らかに子供たちが不登校につながる、原因の大きな一つとなるのであれば、それは少しでもそういうマイナスを取り除いてあげるという、取り除くための手段を尽くすというのが、我々の使命だと思いますから、そういう結果が検証されれば、子どもたちがまさに、不登校とかそういうことにならないような手段を考え、提案をしたいと思っております。

言うまでもなく不登校・引きこもりには複雑な原因が存在します。そうした中で、ゲーム・スマホにその原因を単純化することは、現場で悪戦苦闘する当事者の方々からすると魅力的に映るのかもしれません。

また政治家にとっても、形に残る対応をしたという「実績」を残せることから、こうした「ゲーム悪玉論」に乗ってしまいがちです。

しかしながら、香川県のゲーム規制条例案の記事で詳述した通り、ゲームの悪影響を証明する科学的エビデンスは現時点では極めて乏しく、むしろゲームに生きがいを見出している多感な子どもたちの「逃げ道」を塞いでしまうことにもなりかねません。

少し古い記事&データですが、不登校の理由を本人に聞く当事者調査を行うと、学校への調査と異なり「教師との関係が原因」という回答がかなりの割合を締めることが判明しています。

参考:
不登校「先生が原因」 認知されず ―学校調査と本人調査のギャップから考える(内田良) – Y!ニュース

https://news.yahoo.co.jp/byline/ryouchida/20161016-00063307/

つまり、学校・教育関係者は不登校の原因に「教師・学校」があることを意識的に認めていない可能性があります。

こうした点も踏まえると、現場の声をそのまま受け止めて「ゲーム・スマホが不登校の原因」として短絡的な対策を講じることには、極めて慎重でなければなりません。

松井市長の記者会見における理性的な発言は、私が指摘するまでもなく以上を深く理解しているものと考えられ、改めて心強く感じたところです。

とりわけ現場関係者の「エピソード(思い込み、経験則)」ベースで進みがちな教育政策において、「エビデンス」に重きをおいて政策を進めることは極めて重要です。

香川県の事案とともに本件についても注視を継続し、続報があれば皆さまにお届けするとともに、私自身も安易な規制に頼らない政策提案をしっかりと続けて参ります。

それでは、また明日。

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おときた駿
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