障害当事者だから、厚生労働委員会へ配属を?「合理的配慮」濫用への違和感

こんばんは、音喜多駿(参議院議員/東京都選出)です。

国会開会初日を前にして、重度障害者である国会議員が2名誕生した参議院は大きく動いています。

重度障害 議員活動中の介護サービス 当面は参院が費用負担へ
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190730/k10012014771000.html

とりわけ論点に上がっていた、「介護サービスが使えない」という点については、参議院が当面負担する(≒税金で負担する)ということが議院運営委員会で決定されました。

これに対して維新は「反対」を表明し、私も同意見です。

理由については東とおる参議院議員が述べている通りで、国会の役割はまさに制度を変えていくことです。

まだ多くの障害者の方々が同様の制度の狭間で悩んでいる中、国会議員だけが特権的・例外的にサービスを受けることは適当ではないと考えます。

「まずは隗より始めよで、国民の代表たる国会から変わるのは良いことだ」
「できる部分から始めなければ、何も変わらないではないか!」

というご意見もありますし、それも一理あるとは思います。

ただ国会議員の歳費は年収2千万円を超えており、活動をサポートするための文書通信交通滞在費が月100万円(!)支給されます。

様々な事情はあれど、各国会議員はこうした収入の中から人件費などをやり繰りして、政治活動を行なっているわけです。

一般から見れば目玉が飛び出るほどの待遇を約束されている国会議員に対して、さらに特例的にサービスを認めることは不適当ではないでしょうか。

ただすでに、参議院議院運営委員会で「特殊ルールを認める」と決められた以上は、制度そのものの改正を急ぐことに全力を挙げなければなりません。

報道によると、れいわ新選組の当事者お二人も、「参院が負担する」というその場しのぎの対応には否定的とのこと。

おそらく他の会派もそのつもりで今回の特例を認めたのだと思いますが、一刻も早く制度を改正して、特権的な状態を解消し多くの障害者にサービスを提供することがいま参議院に求められる最大の役割です。


(写真は車椅子調査隊に参加した際のもの)

今回の対応に反対した維新も当然のことながら、障害者が活躍できる環境づくりに反対しているわけでは決してありません。

国会議員だけが特権的にサービスを受けられる状態の早期解消に向けて、全力で努力をして参りたいと思います。

そして関連して、もう一つ気になることがありました。

以下は、れいわ新選組代表の山本太郎氏より、各会派に申し入れされた要望の全文です。

大きく3点の要望があり、1番が上記の重度訪問介護サービスについて。そして2番が所属委員会の希望、3番が移動用福祉車両の確保です。



3番もなかなか議員特権との兼ね合いが難しいところでありますが、私が特に気になったのは2番です。全文を改めて掲載しますと、

ⅱ. 所属委員会への合理的配慮のお願いについて

厚生労働委員会の委員に。

舩後・木村ともに、障がい者当事者であり、
その分野のスペシャリストです。
具体的改善に向けて最も適格な提案ができる人材であります。
両議院の能力を最大限発揮できる厚生労働委員会の委員として活躍できる場を、
合理的配慮によりご提供賜ります様、お力をお貸し下さい。

(上記申し入れ書より抜粋、強調筆者)

申し入れ書では「合理的配慮」という言葉を幾度となく使用して強調されているのですが、この委員会配属を「合理的配慮」という文脈で使うのは、率直に非常に大きな違和感を覚えました。

それはあくまで「要望」であって、「合理的配慮」という文脈で考慮することなのかな?と。

確かに当事者であれば厚生労働委員会で主張したいことは沢山あるでしょうし、説得力のある提案ができる可能性は高いと思います。

しかしながら国会議員は、それぞれがスペシャリストの集まりでもありますし、またそれぞれが代議制民主主義の中で民意を代表している存在でもあります。

「当事者でなければ!」というのは代議制民主主義の否定にもなりますし、そこに障害者だから入れることが「合理的配慮」であると考えるのは、なかなか難しいのではないかと個人的には思っています。

ここは「合理的配慮」を理由とするのではなく、当事者を委員会に入れることには大きな意味があるのだから、少数会派であっても席を与えてくれないか?とストレートに要望されるべきだったのではないでしょうか。

なお委員会の配置というのは、基本的に大会派順に割り振られて所属が決定していきます。

希望する委員会ポストを得るために熾烈な選挙を勝ち抜き、時には選挙後に他党の議員とも会派を組み、なんとか発言権を手に入れているのが国会の仕組みであり、我が国の民主主義としての基本ルールとなっていることを付言しておきます。

これを期に国会内のバリアフリー化などを進めることは良いことですし、国会にも社会にも大きな一石を投じた今回の流れには非常に大きな意味があると思います。

一方で過剰に「合理的配慮」を金科玉条として求める行為が続けば、こうしたせっかくの流れにむしろ水が差してしまうのではないかとも感じています。

健常者も障害者も垣根なく、どの委員会に配属されても力を発揮できる環境を整えることこそが、本当の「合理的配慮」であるはずです。

結論としてれいわ新選組会派には、厚生労働委員会の枠は割り振られなかったようです。

ただいずれにしましても、質問主意書を提出するなど、委員会に所属しなくても国会で活動する手段は無数にあります。

当事者ならではの、これまでにない視点で国会で活躍される二人の姿を心より期待するとともに、今の国会に足らざる「合理的配慮」「バリアフリー対策」については積極的に推進されるよう尽力して参りたいと思います。

それでは、また明日。

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おときた駿
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