立花 孝志 先生
お世話になっております。
エヌリンクスやグラスの件について、
色々と裁判例を調べてみました。
職場での事故やパワハラの事案などでは、
労働契約の付随義務としての安全配慮義務違反(民法415条)
又は、人格権の侵害として不法行為に基づく損賠償請求(民法709条)
のいずれかを根拠として、請求し、認められている例があります。
ただ、職場から「違法行為」を指示され、
その違法行為に従って安全配慮義務違反や人格権侵害を
根拠として裁判が行われているドンピシャ事案はまだ見つかりません。
今回、「会社からの違法行為の指示」を賠償の根拠とするのは、
新しい視点からの請求になると思われます。
なかなか裁判例として見つからない理由は、
たとえば、会社からの違法な指示が仮にあった場合、
詐欺や恐喝、窃盗の指示などであれば、それ自体当然に違法で、
その指示を受けた従業員も当然違法行為だからその指示に
従うものでないし、そういう事案があったとしても事件にすら
なっていなかったのだろうと思われます。
しかし、今回のように一般素人では理解の難しい弁護士法違反が
認められたとすれば、エヌリンクスやその他の委託会社などは
NHKと共に弁護士法違反になる集金業務などを
法的知識のない従業員に行わせていたという点では、
上記の安全配慮義務違反の範疇として、
適法かつ安全な職務環境の整備をすべきであったのに、これを怠っていた
という理由から裁判所に訴えていくことは十分できると思います。
安全配慮義務とは、使用者が、事故の起こらないように職場の安全環境を整えるとか、
パワハラなどないように職場環境を整えるなどが典型例ですが、
今回、法的にも適法かつ安全な安全配慮義務があると求めることは
非常に有益であり、社会的意義も大きいと思います。
これに対し、どれだけの損害を認めてくれる可能性があるかですが、
従業員たちはこうした安全配慮義務違反から職を失ったとすれば、
請求として慰謝料100万円+一年分の賃金相当額を請求総額として、
実際に認容される額はその3割くらいかなと、私は予想します。
いずれにしても11月10日、さいたま地裁で弁護士法違反が
宣言されたとすれば、NHKの委託会社の社員はもはや集金行為は
事実上不可能となり、就業不能となりますので、全国的にこうした
状況を踏まえて、NHKと委託会社をそれぞれの会社の従業員が
安全配慮義務違反を理由に損害賠償をするという動きを大々的に
やってみてもいいと思います。
弁護士法違反が宣言されさえすれば、委託会社のみならず、
NHKがこれを指揮して業務委託をしていたという点では、
NHKも委託会社と一緒に訴訟の被告としていいと思います。
もし、宜しければ私以外の弁護士にも、
会社が従業員に弁護士法違反という違法な指示を
した場合において、労働契約上の地位に基づいて、
どのような賠償請求が可能かを聞いてみてください。
宜しくお願い致します。
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弁護士 村岡 徹也