「ウクライナと並ぶ穀倉地帯であるロシアの侵攻が論外なのは明々白々。が、であればこそ非資源国ニッポンは、カロリーベースの食料自給率が38%という冷厳な現実を踏まえた食の経済安全保障構築こそ急務だ」。
「『ニッポンの真の国益』私はこう考える」と副題を冠して倉重篤郎「毎日新聞」元論説委員長が「底なしのウクライナ侵攻に出口はある!」と「サンデー毎日」に寄稿の特集の中で僕は『脱・従米一本足打法』を提言しました。
正確には37・17%。統計開始の1965年以降で最低数値を2020年度に更新した日本は大豆消費量の94%を輸入に依存しています。SDGsを掲げて持続可能な開発目標を喧伝(けんでん)する21世紀。各種エネルギー資源リサイクルは声高に語られるも、食料リサイクルの“特効薬”は食品廃棄物の発生抑制以外に見当たりません。
戦時も平時も着た切り雀で凌(しの)げても、人間はクマやラクダと異なり食い溜め不可。資源輸入国と見做(みな)され勝ちな人口14億人の中国はエネルギー自給率8割、穀物自給率9割超とVol.102「黄色いバナナ」でも紹介しました。
物事には戦略と戦術が有るように、時々刻々の戦況の先に如何(いか)なる様相が訪れるかを伝えてこそジャーナリズム。なのに、海外メディア向けプレスセンターを用意周到にキーウに設けたウクライナと米英メディアが発信する「情報」を裏取りもせずに流し続ける日本メディア。「先の大戦の敗戦国だからこそ、一刻も早い停戦を実現すべく日本政府は汗をかけ、と論陣を張るべきだ」と僕はインタヴューの最後で語りました。
国際連合は4月22日、「ロシア軍がジェノサイドを行った証拠と情報を我々は得ておらず、ウクライナ側も無差別な影響を及ぼす武器使用で民間人に死傷者を齎(もたら)している」旨、国連人権局長のミシェル・バチェレ人権高等弁務官が会見した動画をアップ。が、米欧日メディアは一向に報じません。
ロシアの「侵攻」が認められぬのは大前提。然(さ)れどWTOワルシャワ条約機構解散から31年。名称も目的も一向に変わらぬNATO北大西洋条約機構を主導し、「戦争こそ最大の公共事業」と嘯(うそぶ)く軍産複合体と一心同体なジョー・バイデン政権こそ“冷戦脳”。戦争の長期化を望むが如く「人道的」武器供与を続けています。
国際法上、軍医や衛生兵は戦闘員でなく文民であるように、イラク戦争で悪名を馳せたブラックウォーターUSA改めアカデミに象徴される民間軍事会社の契約者は、正社員の正規兵と異なり非正規雇用の「文民」と見做(みな)されます。白人至上主義で極右思想なフーリガンが母体のウクライナのアゾフ連隊。「義勇軍」と称揚される面々の犠牲者は今回、軍人・文民の何れにカウントされているのか、膨大な戦況報道の中で見事に抜け落ちているのです。
広告代理店が「制作」した真っ黒な水鳥の映像が情緒的世論を喚起した湾岸戦争時、「嫌米(けんべい)」なる惹句(じゃっく)を僕は創出します。米語文化の「豊かな物質的消費社会」に生きる日本の世代が“なんとなく”感じた無体(むたい)なアメリカの所業(しょぎょう)に対する、「親米VS反米」の不毛な二項対立を超えた違和感です。
殺到した米英仏中台豪の海外メディアの取材陣に僕は、「諌米(かんべい)」の心智(メンタリティ)の重要性も述べました。相方が歩むべき道を間違えている時には臆せず助言・諫言(かんげん)・提言してこそ真の友人だと。それはスタンフォード大学出身の祖父(おっと)を日本脳炎で喪(うしな)い、同じく西海岸のミルズ・カレッジで学んだ敵国語を語る「非国民」と白眼視された祖母が、問わず語りで僕の幼少期に教えてくれた「弁証法」的思考でもあります。
米国中心の一極化から中印含めた多極化への世界の潮流の今、改めて想起します。