ケアマネジメントの質の向上

ケアマネジメントの質の向上を目的に、平成30年4月に行われた介護保険制度改正で、ケアマネジャーが所属し、在宅の要介護高齢者の介護サービス計画を作成する、居宅介護支援事業所の管理者の要件として、主任介護支援専門員の資格を持っている。

ということが必須となりました。

 

この主任介護支援専門員という資格は介護支援専門員の実務経験が5年以上で、主任介護支援専門員研修を受講することで認定されるものです。

アンケートなどの結果から、主任介護支援専門員のいる事業所の方が、より質の高いケアマネジメントを実践できているという見方から、主任介護支援専門員を居宅介護支援事業所の管理者要件として追加したものになります。

 

ただ、本当に主任介護支援専門員がいるというだけでケアマネジメントの質が向上しているのかは疑問が残ります。

実際にケアプランの内容を見比べて調査をした結果ではなく、決め手となったのは事業所への調査の結果で、主任介護支援専門員のいる事業所の方が、研修計画や事業所内での会議などの実施率が高いという評価によるものでした。

 

主任介護支援専門員が配置されている居宅介護支援事業所の中には、報酬を多く受け取ることのできる特定事業所という指定を受けている事業所が多数あります。

特定事業所には主任介護支援専門員の配置が必須となっており、また指定の要件として会議や研修計画が義務付けられています。

そのことから主任介護支援専門員のいる事業所の方がその割合が高くなることは当然であり、この調査も結果がわかりきった出来レースのような調査でした。

 

しかし、主任介護支援専門員の資格を持ったケアマネジャーがいない事業所は3年間の猶予期間終了とともに事業所閉鎖となります。

事業所の閉鎖とともに職を失うであろうケアマネジャーや、居宅介護支援事業所の変更を余儀なくされる利用者も多数生まれることが想定されます。

昨年10月の段階で、事業所管理者が主任介護支援専門員の資格を持っていない居宅介護支援事業所は全体の43.7%もあり、残り2年を切った猶予期間では研修受講の要件を満たせないという事業所も2割近くあることがわかっています。

 

日本介護支援専門員協会も猶予期間の延長を提言していますが、今後小規模の居宅介護支援事業所は淘汰され、居宅介護支援事業所の大規模化が進んでいくことも予想されます。

 

主任介護支援専門員の研修は事業所の管理者としてのスキルや知識を学ぶ場ではありません。

はたして実務経験が長く研修を受けた主任介護支援専門員が事業所の管理能力に優れているのか、質の高いケアマネジメント能力を備えているのか、そもそも質の高いケアマネジメントとはどのようなものか、今一度検証することも必要ではないでしょうか。

 

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山口和之
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