安倍総理大臣を議長とする未来投資会議において、
「目の前の高齢者ができないことをお世話すること」が中心の介護から
「自立支援に軸足を置いた」介護へ、パラダイムシフトを行っていくことが明言され、科学的な新しい医療・介護システムを2020年までに本格稼働させることが示されました。
お世話をする介護から、自立支援を促進する介護へ。
今後の介護の在り方として方向性が示され、いま、自立支援介護が注目を集めています。
高齢者に不足しがちな水分を摂取すること、
必要な食事量を確保すること、
トイレに行き自力で排泄をすること、
歩行を中心とした十分な運動をすること。
日々の生活の中に、これらの基本があって初めて高齢者は自立の方向に向かっていきます。
基本ケアに加えて大切なのが生きる力への動機づけです。
加齢に伴い、疾病や気力の減退などから一度失った身体機能や生活動作を取り戻すということは、一人で簡単にできることではありません。
それを実現するのが自立支援を目指す介護の力です。
日本自立支援介護・パワーリハ学会や理学療法士会や介護福祉士会の地方支部などで
自立支援介護をテーマにした研修なども開催していますが、
まだまだ十分に浸透しているとは言えません。
介護実務の国家資格である介護福祉士の養成カリキュラムの中でもより自立支援の位置づけを明確にしていくことが必要になるでしょう。
また、利用者の望む生活を明確化し、目標設定を行うものとして介護サービス計画(ケアプラン)があります。
介護支援専門員(ケアマネジャー)が個別に計画を作成しますが、個別性に乏しく、
自立に向けての動機づけを行うのに不十分なのではないかという議論もあります。
利用者の意欲を引き出し、自立支援に向けての目標を設定する自立支援型のケアプラン作成が求められます。
自立支援に向けて先進的な取り組みを行ってきた埼玉県和光市では、毎年要支援認定者の約四割が介護保険の自立認定や認定更新をしないことで、介護保険を「卒業」しています。
介護保険サービスを「卒業」することは、要介護状態の改善を意味する一方で、これまで利用していた介護保険サービスを保険適用で利用できなくなります。
利用してきたデイサービスの利用ができなくなり、馴染みのスタッフや仲良くなった利用者と会えなくなるなど、
利用者にとって必ずしもすべてがハッピーな結果ではないのかもしれません。
そのため、介護保険を卒業するだけでなく、その先の生活をイメージすることも介護支援専門員には求められます。
デイサービスに行かなくなる代わりに、地域の高齢者や子供たちも集うサロンや、
高齢者が参加できるスポーツジムやスポーツセンター等で行う運動教室を紹介するなど、
介護保険「卒業」をゴールとしないケアマネジメントも求められます。
地域ケア会議に、その地域に必要な地域の力づくり(地域ニーズ)が含まれる理由です。
こういった保険給付に直接結び付かないケアマネジメントも自立支援介護を促進していく上では評価されるべきなのではないでしょうか。