日本の労働者人口の減少を解消するため、政府は出入国管理法を改正し、5年間で最大34万5,150人の外国人労働者を受け入れることを発表しました。
介護もその受け入れ職種のひとつとなっており、2019年4月からの5年間で約6万人の介護人材受け入れの方針を示しています。
介護はすべての産業の中で最も受け入れ見込み人数の多い業種となっています。
過大な受け入れ数ではないと政府側は見解を示していますが、果たしてどうでしょうか。
日本はこれまで、インドネシア・フィリピン・ベトナムからEPAに基づく介護福祉士候補者の受け入れを行ってきました。
平成30年度までに、国内で受け入れを行ってきた介護福祉士候補者の合計は、10年でおよそ4,300人。
そのおよそ14倍にもなる6万人という膨大な数の外国人介護人材の受け入れ。
これによる現場の混乱はおそらく避けられないでしょう。
受け入れる側の事業所・施設での待遇にも様々な課題があります。
不当な長時間勤務やパワハラ、賃金の未払いなどの様々な問題が次々に明るみになっています。
外国人技能実習生の失踪などにつながるケースも増えています。
受け入れる環境づくりが不十分なままでは、外国人介護人材の定着も難しいと考えられます。
日本の介護労働の環境は外国から見ても必ずしも好ましいものではなく、介護労働の賃金水準もアメリカ・ドイツなどの欧米諸国と比較しても安く、日本を敬遠する介護福祉士候補者も多いといわれています。
また、現在外国人介護福祉士候補者等は特別養護老人ホームやデイサービス、グループホームなどの集団でケアを行う事業所で勤務をしています。
単独で利用者宅を訪問してケアを行う訪問介護サービスの提供は原則禁止にされています。
外国人を大幅に受け入れたとしても、圧倒的に不足している訪問介護サービスの人材不足に対しての解決にはつながりません。
業務に必要とされる日本語レベルを満たしているのか、利用者とのコミュニケーションをとることのできる能力を持っているか、語学の習得の部分も大きな障壁になっています。
介護の人材不足に関しては、単純に介護に携わる人の数を増やせば解決できる問題ではありません。
現場が混乱するだけで終わることのないよう、受け入れる側が職場環境を作っていくことが重要です。
適切な指導が行える環境にあるか、チームとして機能しているか、悩みやストレスを抱えていないか。
そういった視点を持ち、外国人介護人材にとっても、共に成長できる職場環境が必要になります。
まずは外国人にとってというより、そこで働いている人にとって魅力的な職場づくりをしていくことが第一に求められるのではないでしょうか。