近年、医療をテクノロジーの力で支えるための取り組みが注目されています。
診療にAI(人工知能)を活用することもそのひとつです。
症例についての膨大なデータをAIが学習することにより、診断にかかるまでの時間を大幅に短縮することや、医師が指摘できない原因をAIが発見することも可能になります。
医療側のメリットだけでなく、治療開始までの時間を短縮することや治療の選択肢が増えるなど、患者側にも大いにメリットがあります。
もちろん、どんなにテクノロジーが進化したとしても、患者との対話の中から状態の変化に気づくことや、患者の精神的な支えになることはAIなどのテクノロジーでは代替できません。
医療がいかにAIやビッグデータをツールとして活用することができるのか、医師の働き方もテクノロジーの進化とともに大きな変革期を迎えています。
また、平成30年4月にオンライン診療も診療報酬に組み込まれ保険適用となりました。
テレビ電話システムなどのICT技術を使って患者と通信し、診療を行うものです。
これまで、遠隔医療といえば、へき地や離島などの医療が行き届いていない地域を想定していることが多かったのですが、地域に限定することなく、自宅でオンライン診療を受ける枠組みが作られました。
ただ、どんなケースでも保険適用となるわけではありません。
主な疾患が糖尿病や高血圧など慢性疾患であることや、同一の医師が六か月間継続して診療し、状態が安定していると判断しているなど、一定の条件が必要になります。
保険適用の対象となる患者も限られています。
オンライン診療算定の届け出をしていても一か月間の保険算定実績がない医療機関が6割を占めているという調査結果も示されています。
保険での算定ができないため、保険外の自由診療としてオンライン診療を行うケースも少なくありません。
この状況を受けて、対象疾患の見直しなどが検討されていますが、どこまでをオンラインで保険適用にしていくかが大きな課題になっていきそうです。
在宅診療でもオンラインを組み合わせ、これまで月二回訪問していた訪問診療を月一回の訪問と月一回のオンライン診療に切り替えることも多くなりました。
これまで患者宅への移動にかかっていた時間を削減することで、受け入れ可能な患者の数を増やすこともでき、訪問看護ステーションやケアマネジャーなどとの連携を図ることや、緊急対応などに時間もより多くの時間を割くことができるようになるでしょう。
先日、コミュニケーションアプリのLINEがオンライン診療分野に参入することを表明しました。
今後はより身近なツールを通して医療を受けることができる環境整備が期待されています。
遠隔診療だけでなく、遠隔リハビリテーションもICT技術により実現が期待されています。
リハビリテーションというと、病院や通所施設に行かないとできない、という認識を持っている人も少なくありません。
オンラインで自宅にいながらリハビリテーションを行うことで、より生活に身近なリハビリテーションを実現できます。
また、VR技術などを使うことで、ゲーム感覚で、より楽しくリハビリテーションに取り組むこともできるのではないでしょうか。
今後、理学療法士などのリハビリテーション専門職がオンラインを通して患者とつながる機会を持つことで、リハビリテーション専門職の働き方にも新たな可能性が生まれます。
自費のリハビリテーション診療を行うフリーランスの理学療法士など、様々な働き方が可能になるのではないでしょうか。
医療やリハビリテーションを必要としている患者をだれ一人取り残さないためには、ICT技術を活用し、医療やリハビリテーションを身近に感じられる社会環境づくりが求められます。