介護職員による高齢者虐待のニュースが後を絶ちません。
2010年に埼玉県の特別養護老人ホームで起きた連続傷害致死事件。
2014年に起きた川崎の有料老人ホームでの連続転落死事件。
今年5月にも品川区の有料老人ホームでも入居者を殺害した介護職員の事件が報道されました。
これら事件も含め、介護職員による虐待件数は年々増加傾向にあり、平成29年度は510件が虐待として行政判断されています。
この数字は前年度と比較しても12.8%増加。
平成18年度には54件だった件数が10年あまりで10倍近い数字になっています。
もちろん、虐待に対する社会的な意識が高まっていることや、高齢者や要介護者数が増加していることも要因になるでしょう。
高齢者の権利や生活を守るべき介護職員がなぜ虐待をしてしまうのでしょうか。
特別養護老人ホームなどの介護の現場は時間でスケジュールが決められており、介護職員には時間までに業務を終わらせることを求められます。
食事、排泄、入浴など、それぞれの時間が決められており、その時間に間に合うように効率よく業務をこなす職員が職場では求められ、評価されます。
ただし、利用者のケアを時間で簡単に区切ることはできません。
排泄のトラブルや認知症による行動障害、利用者同士のトラブルなど、介護の現場では予測もできない出来事が起こります。
時間通りに業務を進めたいという介護職員の苛立ちなどが、利用者に対する暴力という形で表面化することが起こってしまっています。
また、それだけではなく、人手不足が深刻なため、事業所が求める人材を採用することができてないという側面もあります。
本来であれば採用を見送る人材も、条件を満たしていれば人手不足を解消するために採用せざるを得ないという状況があります。
それに付随し、現場が新人教育やフォローアップに十分なエネルギーを割くことができないという現実もあります。
夜勤を任され、不安や焦りなどと直面しつつも、先輩職員などに直接相談する機会もなく、一人で多くの利用者を任されるケースも少なくありません。
虐待の要因についての調査においても、「教育・知識・介護技術等に関する問題」が最も高くなっています。
介護職として必要な要素は、介護の技術や知識だけではありません。
アンガーマネジメントやストレスマネジメントなど、介護職としてのメンタルヘルスの教育も必要ですが、介護福祉士のカリキュラムなどでも介護職のメンタルヘルスについての教育は不十分な状況です。
オンとオフをしっかり分けること。
利用者に対して怒りを感じた時には時間を置くこと。
そういったことも職場内でフォローアップしながら、共有していける環境を作っていく必要があるのではないでしょうか。