介護職員の多くが直面しているのが利用者や利用者家族によるハラスメントの問題です。
過剰な要求を介護職員に押し付けるパワーハラスメント。
女性ヘルパーに対して性的な嫌がらせをするセクシャルハラスメント。
このような被害に介護職員は頭を悩ませています。
介護現場で働く人の74%がサービス利用者や、その家族からのハラスメントを受けたことがあるという調査結果も公表されています。
訪問介護の現場では男性利用者が身体介護を行う女性ヘルパーに必要以上に接触しようとしたり、性的な発言を繰り返すということがあります。
責任感の強いヘルパーはそれでも自らの業務として介護を行い、上司や同僚にそれを報告することもできず、苦痛を感じているケースも少なくありません。
自分のケアの質が低いからと自分自身を責めるヘルパーもいます。
そして、利用者は行っている行為が黙認されたものと勘違いし、それが常態化したり、さらにエスカレートしていくことがあります。
訪問介護だけでなく、デイサービスや特別養護老人ホームなどでも、利用者によるハラスメントが見られます。
介護職に対する嫌がらせ行為をそのまま無視してはいけません。
ハラスメントによる被害を減らしていくために、男性ヘルパーに交替したり、複数名のヘルパーで対応することが推奨されています。
しかし、少ない人員で現場を回さざるを得ないヘルパー事業所にそれだけの余剰職員がいないのも、ハラスメント問題を解決困難にしている大きな要因のひとつでしょう。
事業所単位で解決できない問題で、契約上明らかな不信行為である場合、受け入れを拒否するというのももちろんひとつの手段です。
ただ、次にサービスを提供する事業所でまた別の被害者が生まれる可能性もあります。
こういった行為にストップをかけるために、地域で事業所連携することも重要です。
地域包括支援センターや地域ケア会議、事業所連絡会などで対応していくことが必要なケースもあります。
ハラスメントに対応した事例について情報共有することなどで、効果的な解決策が得られる場合もあります。
市町村の職員が自宅を訪問することなどで利用者や家族を牽制することもひとつの方法になるでしょう。
苦しんでいるのはこれからの社会を支える貴重な介護人材です。
介護職員が苦痛を抱え込むことなく、介護職としてのプライドをもって業務を行える環境を作っていく必要があります。
問題を共有しながら、地域でのフォローアップできる仕組みを活用していくことが求められます。