みなさんはバリアフリーという言葉を知っていますか。
障害のある人や高齢者が日常生活や社会参加をする上で物理的または精神的に障壁(バリア)となるものを取り除くという考え方です。
もともとは建築関連の用語だったこともあり、一般的なイメージとしては段差をスロープにすることや、点字ブロックを設置することなど、ハードの面における障壁を取り除くという印象が強いかもしれません。
しかし、バリアフリーには制度・文化・情報など、ソフトの面のバリアフリーも同時に求められています。
さらに、社会的認識や価値観など、心理的に存在するバリアを取り除いていくことが重要になっています。
認知症になった方へのかかわり方についてもバリアフリーは重要なテーマです。
2015年に厚生労働省が発表した統計では、日本の認知症疾患の患者数は462万人、
65歳以上の高齢者のおよそ7人にひとりが認知症疾患の患者であり、高齢者のおよそ4人に一人は認知症またはその予備群とされています。
「認知症があっても地域で暮らすこと」を目標に厚生労働省が掲げたのが、新オレンジプランです。
認知症の方が自分らしく生活をしていくためには周囲のサポートが不可欠です。
一般的に、焦らせたり、失敗を指摘したり、否定したりすると、認知症の方は心理的に不安定になり混乱に陥ります。
混乱に陥る要因を取り除いていくことが必要です。
物忘れがあっても適切なサポートを受けることで生活を続けることはできますが、精神的に不安定な状態から徘徊や攻撃性などの周辺症状が強くなると、介護負担が大きくなります。
そうなると地域・親族等の協力を受けることができなくなり、在宅生活を続けることが難しくなっていきます。
周囲の関わり方ひとつで認知症による周辺症状を少なくすることができ、その人らしい生活を続けることが出来るのです。
認知症の方へのかかわり方を学ぶ機会として認知症サポーター養成講座があります。
認知症の方とどう接するべきか、認知症を予防するための生活習慣などの講義を受けることで、認知症サポーターとして登録されます。
各市町村や地域包括支援センター、企業や自治会などでも積極的に開催されるようになり、
現在認知症サポーターとして登録されている人数は全国で11,442,490名(平成31年3月末時点)を数えます。
このように、認知症があっても地域で暮らすことのできるソフトの面でのバリアフリーが広がりつつあります。
さらに、認知症カフェという認知症の人やその家族が気軽に立ち寄ることができ、地域の人や介護福祉の専門職とつながる機会を持てる場所も全国に数多く生まれています。
一般企業やNPO・行政が設置しているものなどもあり、その形態はさまざまです。
新オレンジプランでは2020年度までに全市町村に普及させるという目標を掲げています。
現在、4267の認知症カフェが全国で開催されています。
ただ、実施地域には偏りがあり、平成28年度の調査結果では全国の1724市町村のうち、認知症カフェが開かれている市町村数はまだ1029となっています。
認知症カフェのような認知症の方の居場所が日本中どこにでもあり、認知症の方と認知症の方を介護する人とが安心して暮らせる社会の実現は重要な課題になるでしょう。
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