介護保険制度がスタートしてから20年が経とうとしていますが、生涯を介護の専門職として生きていくための介護福祉士のキャリアプランの構築はまだ不十分なままです。
現在、介護福祉士養成校では入学希望者が減っていることから、多くの学校では定員割れし、入学定員の半数にも満たないという状況です。
制度改定により介護福祉士の受験資格は厳格化され、実務者研修の受講を義務付けて以降、介護福祉士の受験者数は大幅に減っています。
以前は15万人以上だった受験者数も、過去4年間連続して10万人を下回りました。
たとえ介護福祉士になっても給料は増えない、介護福祉士を受験するための実務者研修を受講する費用や時間を確保できないなど、介護福祉士へのステップアップには様々な壁があります。
国家資格である介護福祉士となってからもキャリア形成として魅力を感じない、そして費用や時間をかけて取得するメリットを享受できないという現状があります。
さらに、介護福祉士を取得したその先のキャリアプランについても課題があります。
介護福祉士になってからの介護職のキャリア形成のため、2015年より介護福祉士の上級資格として認定介護福祉士という資格が新設されました。
ただ、この資格を取得するには、5年以上の介護福祉士としての現場経験や介護福祉士ファーストステップ研修の受講。
介護職のチームリーダーとしての実務経験などの受験資格を満たす必要があります。
さらに、30万円を超える高額な受講費用と、カリキュラム時間数にすると600時間にもわたる研修受講が必要になります。
受講費用の補助や研修受講のためのシフト調整など、職場の理解などが得られなければ取得することは難しい資格です。
各都道府県の介護福祉士会などで研修開催をしていますが、開催している都道府県もごく一部で、受講したいと思っても受講する環境がない場合もあります。
日本に160万人いる介護福祉士有資格者のうち、この認定介護福祉士と認定されているのはわずか55人。
キャリアプランとして、上位資格を取得することは難しく、介護福祉士としてキャリアデザインを描くことは非常に困難になっています。
介護福祉士会では認定介護福祉士を配置することで介護報酬上の加算を取得できるようにするなど、この資格によるメリットを施設や事業所が受け取ることができる制度を要望しているようです。
しかし、まだ55人しか有資格者のいない資格を介護報酬に組み込むことには時間がかかるでしょう。
介護福祉士の上位資格を定着するために、受講費用などを軽減する。
オンライン学習ができる環境づくりを行う。
実務経験の一部をもってカリキュラムの時間数を削減する。
などをして、より現実的な上位資格にしていくこと、そして介護福祉士が誰でも目指すことのできるキャリアプランを整備することが必要ではないでしょうか。