日本の高齢化は他国に類を見ないスピードで急速に進んでおり、今後の医療・介護の財源確保は大きな課題になっています。
では、社会保障制度を持続可能なものにしていくためにはどうしたらいいのでしょうか。
その答えは、20年前に作られた介護保険法の第四条に書いてあるのです。
国民は、自ら要介護状態となることを予防するため、
加齢に伴って生ずる心身の変化を自覚して常に健康の保持増進に努めるとともに、
要介護状態となった場合においても、進んでリハビリテーションその他の適切な保健医療サービス及び福祉サービスを利用することにより、
その有する能力の維持向上に努めるものとする。
(介護保険法第四条)
大きなポイントはふたつあります。
ひとつは「予防」です。
常に健康の保持増進に努めること。
介護予防というと高齢者になってからと考える人がほとんどだと思いますが、若いうちから生活習慣の中に運動を取り入れておくこと。
栄養バランスの整った食生活を送ること。
など、予防はいつでも取り組むことができます。
健康的な生活スタイルを若いうちから培っていくことが、高齢になった時の生活習慣病予防にも大きく役立ちます。
もうひとつはリハビリテーションです。
要介護状態になった後にもリハビリテーションによる能力の維持向上に努めることを介護保険法は義務として定めています。
介護・医療のサービスに依存する生活ではなく、利用者の自立を促進するための介護サービスが必要になります。
「介護は究極のサービス業」という意味を勘違いし、ただただ利用者の言うがまま、望むとおりにサービスを提供することが、介護保険で目指すべき介護サービスではありません。
介護サービスが目指す顧客満足は、自立に近づくことで得られる達成感が生む顧客満足であるべきであり、それを応援するのが介護職員として目指すべきプロフェッショナルの姿でもあります。
介護サービス事業所にはその意識づけを行う意味でも、介護は「自立支援介護」にパラダイムシフトしていくことが求められます。
20年前の介護保険制度設計時の理念に立ち返ることで、持続可能な社会保障制度の実現に近づけていくことができるのです。
医療も予防医療を積極的に推進していくべきです。
国民ひとりひとりが予防や健康に目を向ける必要があります。
これまで、特定検診や特定保健指導などを通して行ってきた生活習慣病予防ですが、実施率は低調で、特定検診は53.1%、特定保健指導は19.5%。
これまでのやり方だけでは予防には十分な効果を発揮できません。
たとえばウェアラブルデバイスを利用し、日々の健康状態や健康維持への取り組みなどを記録できる仕組みづくりをし、テクノロジーを利用して国民全体が進んで健康維持や介護予防に取り組むことで結果的に医療費の大きな削減も期待できるでしょう。
医療や介護が必要になったときの自己負担割合の軽減や、提携する企業から商品が受け取れるなどの何らかのインセンティブも考えていくべきですし、行政や民間企業も巻き込んで社会全体で取り組んでいくべき重要な課題でもあります。
予防に取り組み、健康を維持することは、その人が自分らしく過ごせる時間を長くすることにもつながります。
それを支える社会づくりをしていかなければいけません。
予防・健康維持に国民ひとりひとりが高い意識を持ち、介護が必要になったとしても可能な限りの自立を目指し、それを応援する社会を作っていく。
それが持続可能な社会保障制度として目指すべき姿なのではないでしょうか。