民主主義社会の根幹をなす「選挙」のさなか、応援のため遊説にかけつけた岸田首相が襲われた。昨年には、安倍晋三元首相が銃撃され、死亡した事件があったばかり。自由な言論を暴力で封じようとする暴挙は、いかなる理由があろうとも絶対に許されない。
さて、こうした事件があるたび、警察は不審な様子に気がつかなかったのかなどの批判が起きることがあるが、自らの経験で感じたことを今日は申し上げてみたい。
先に行われた名古屋市会議員選挙において、麻生太郎元内閣総理大臣に横井利明の応援におこしいただいた。日本を代表する有力国会議員の登場で、会場が大いに盛り上がったことは言うまでもないが、一方で、南警察署、県警本部による警護準備は相当ご苦労をいただいた。
麻生元総理が横井利明の応援に駆け付けることが決まったのは3月27日(月)の夜。翌日には南警察署警護課から「現場の確認をさせてほしい。」連絡。私と鈴木市議で対応したところ、南警察署警護担当者からさまざまな要求が出た。
■ 南警察署の要求や確認事項と対応
・演説の聴衆は麻生元総理から最低でも9mは離してほしい。
→ 演説台から9m離れたところに柵を設置し一般の方が入れないように配慮
・聴衆の最前列は後援会の方々で固めてほしい。
→ 学生さんや後援会の若者が最前列で体操座り
・元総理の側方には人が立たないようにしてほしい。
→ 仮設壁を設置し側方に聴衆が立たないように
・暴漢に襲われた場合に備えて、元総理の車がすぐに発車できるようにしてほしい。
→ 演説台脇に駐車場を確保。
・万が一に備え、防弾壁を設置したい。
→ 演説台のまわりに幅2m、奥行き1m分の防弾壁設置場所を確保。
・近隣にお住まいの方の確認
→ 後援会の方であり大丈夫です。
・向かいのビルの上に人は上がれるか。もし上がれるなら出入口を閉鎖してほしい。
→ ビル屋上に上がる出入口を封鎖
・スタッフは一目で識別できるようにしてほしい。
→ 赤ジャンバーや腕章を着用
これらの打ち合わせは、元総理が名古屋入りすることが決まった翌日の3月28日(火)から4月3日(月)まで毎日のように続いた。県警本部から、また南警察署長も毎日のように現場を訪れただけでなく、私自身もほぼすべての打ち合わせに立ち会うこととなった。
結果として何事もなく終わったものの、聴衆の中に暴漢が紛れ込んでいたらと思うとぞっとする。また、その場合にどんな対応ができたかといえば不安が残ることも事実。一方で、「警護」があまりに徹底し、有権者と政治家の距離が離れてしまうと、親近感が薄れてしまう。有権者の近くにいることが支持の拡大につながることは否定できず、「警護」と「支持の獲得」の両立は本当に悩ましい。こうしたことが原因で、一般市民と政治家の距離が離れてしまうようなことがあれば本当に残念。