所得税の定額減税に関し住民税も減税の対象となる案が10月26日、政府によって示された。
物価の高騰で家計の負担が増すなど日々の生活に苦しむ市民の皆様が多い中、納税者及び配偶者を含めた扶養親族の皆様1人について、令和6年分の所得税3万円、令和6年度分の個人住民税1万円の定額減税を行うことは、厳しい生活を少しでも和らげるものと歓迎したい。ただ、減税をおこなうのは来年のボーナス時期とのことであり、やや遅すぎるのが問題。マイナンバーの仕組みを利用して給付すれば、ただちに市民の手元に現金が届くことになり、そこまで減税にこだわる必要はなかったのではないか。また、生活支援が目的であれば、たとえば年収2,000万円をこえるような高額所得者にまで減税が必要かどうか再検討すべきだろう。
さて、ここで気がかりなのは、減税による住民税減収分の補填のあり方。政府は10月26日の政府与党政策懇談会において、個人住民税の減収分は、全額国費で補填すると説明している。また、所得税の減税を行った場合の地方交付税への影響についても、地方の財政運営に支障が生じないよう、年末に向けて財政当局と十分協議するとしている。
しかし、政府の言葉をそのまま信じている地方関係者は少ない。
過去に個人住民税の定額減税が実施されたケースでは、自治体の減収を補完するために「減収補てん債」、いわゆる地方債を発行し、減税分を穴埋めしたことがある。政府は地方自治体が発行した「減収補てん債」、いわゆる借金分を地方交付税で埋めると説明するだろうが、過去の例を見ると、地方交付税に十分反映されたためしはなく、結局は地方自治体の負担になることが多かった。
今後、税制についての詳細は、与党税制調査会において議論されることになるが、政府の言葉通り「個人住民税の減収額は全額国費で補填する」のかどうか、しっかり監視していきたい。