ごみ焼却工場で眠る武家屋敷 (3)

IMG_0448「公園の池のほとりに江戸時代の武家屋敷・茶室を復元し、子どもたちから高齢者の皆さんまで誰もが身近に日本の文化に親しめる空間をつくる。」「茶道や華道等を通して、文化的なまちづくりを進める。」「わが町にも文化財を」そんな夢を持ち、山田工場に眠る武家屋敷を訪ねた。

山田工場の2階に上がると、そこには小学校の体育館3~4個分の広い空間が広がっていた。あちらこちらにブルーシートで覆われた山がいくつも点在。ブルーシートには、「山田如信邸」「日下部邸」「神谷邸」「豊田大吉郎邸」「森川邸」などと記され、ひとつの山ごとに武家屋敷や門が保管されていることがわかる。その下に歴史遺産があるのは容易に想像できた。

IMG_0449ブルーシートをめくると、武家屋敷に使われていた柱や梁、天井板や壁板、礎石や瓦等が積みあげられていた。200~400年前、私たちの祖先が現に使用していたという歴史を考えるとき、1日も早く復元し、多くの市民のご覧いただいたり利用していただくことが、寄贈していただいた遺族の方々の期待に応えることだと感じた。

しかし...

IMG_0450建築・材木会社社長は厳しい評価だった。「ヨコイさん、今、目の前にある「神谷邸」の復元は、まず無理だと思う。材木の多くがシロアリにやられ、中がスカスカになっている。まあ、スポンジのようなものだと思ってもらっていい。また、材木の多くは性(しょう)がなくなっている。材木が持つ本来の性質・形状・強度・力が失われている。油も抜け切った状態だ。使える材木は1割ぐらいだろう。解体したときにすでにシロアリにやられていたのか、保存方法に問題があったのか、今直ちに判断できないが、もったいない話だ。」

IMG_0454社長は続けた。「下級武士の住宅ということもあり、そもそもいい材木を使っていない。多大な費用をかけ復元することに意味があるのかどうか。ただ当時の下級武士の暮らしを知る上では、貴重な資料であることは間違いない。

「日下部邸」等、他のについても、材木はすでに厳しい状態にある。復元はもちろん無理ではないが困難だろう。ただ、ここにある住宅すべての材木を選別し、使える材木だけを使ってひとつのあたらしいものをつくるというなら可能だ。ただ、そのことにどれだけ意味があるのか。」

IMG_0456また、宮大工さんは、「森川邸の状態は最もいい。天井板や飾り等もかなりいいものがつかわれている。復元は可能だと思うが、やはり材木の多くは性(しょう)がなくなっており、天井板など割れやすい状態だ。材木ひとつひとつを洗ったり、たわんでしまった柱を元のようにまっずぐに戻したり、不足する材木をあらたに調達する必要があり、大変な労力と時間、費用が掛かる可能性がある。」

期待に胸躍らせ山田工場へ向かったものの、専門家の厳しい意見に、困惑と戸惑いが広がった。素人の私たちは保存された木材等を組み合わせれば容易に復元できるものと思っていたが、厳しい現実に打ちのめされた形に。また、これら武家屋敷を数十年にわたって保存してきた文化財保護室にとっても、今後、これら材木等をどのように活用するのか、寄贈された遺族の方々の思いもあり検討が求められる。私個人としては、何とか復元できないものかと願うが...

※ 最下段写真が森川邸。もっとも状態はいい。
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横井利明
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