名古屋市観光文化交流局は、令和2年度当初予算に向けた「市民会館の基本構想の策定」関連要求を財政局に対しおこなっている。1月10日には財政局段階における査定内容について議会に対し説明が行われるが、「市民会館の基本構想の策定」関連予算4,500万円は財政局段階では全額見送られる見通し。1月中旬から行われる市長査定の中で復活に向けた調整が行われることになるが、未だ、行方は見通せない状況だ。
さて、市内の大規模・中規模ホールの閉鎖が相次いだことで、劇場不足による魅力的な公演の名古屋飛ばしが顕在化している。市民会館の稼働率はほぼ100%に達しており、この地域における役割は極めて大きい。一方、開館から47年が経過し、設備の老朽化が激しいほか、天井脱落防止工事も未実施であるなど耐震上の問題も解決していない。建て替えは待ったなしの状況だ。
観光文化交流局は令和2年度予算の中で、市民会館の建て替えを前提とした「市民会館の基本構想の策定」関連予算の獲得を目指しているが、課題が整理されないまま予算要求に至っているのが実情だ。
■ 市民会館の基本構想の策定等に向けた整理されていない課題
・2008年には愛知県厚生年金会館(1,666席)、2010年には愛知県勤労会館(1,488席)、2015年には名鉄ホール(922席)、2018年には中日劇場(1,440席)が閉館している中で、名古屋地域におけるホール不足は深刻な状況となっている。しかし、観光文化交流局は「名古屋市はホール不足ではない」との主張を繰り返すだけで、どのくらいの規模のホールがどの地域にどの程度不足しているかの検証が十分に行おこなわれていない。この点については議会でも指摘している。
また、「市民会館が老朽化したから建て替える」というのはあまりにも安易な発想だ。ホール不足の現状を把握するとともに、どの程度の規模のホールをどの地域にどのような戦略をもって整備するのか、整備主体は自治体なのか民間なのか、自治体の場合には民間活力を発揮するための仕組みをどう考えるのか、市民会館の建て替えは現地なのか、それともアスナルなのか、はたまた伏見地区なのかなど、十分議論がなされないまま予算要求に至ってしまったところに重大な瑕疵がある。少なくとも、古沢公園を廃止して一体的に市民会館を整備するというのは住民理解のハードルが高すぎる。
それらの課題について明確にした延長線上に「市民会館の基本構想の策定」関連予算の要求があるはずだが...
■ 市民会館の基本構想の策定等 4,500万円のうちわけ
・整備検討懇談会 500万円
・基本構想の策定 800万円
・基本構想の実現に向けた検討事項の整理 1,700万円
・基本構想の実現に向けた調査検討 1,500万円