本市における減災と狭あい道路の解消について

狭あい道路の抱える問題点につきましては、地震や火災といった災害発生時に、避難路確保や延焼防止の観点から障害となることが挙げられる。特に南海トラフ巨大地震や首都直下地震など大規模災害の発生が想定される中、各都市の状況に応じた効果的な取組みが必要であることは言うまでもない。

名古屋市では、戦後の復興土地区画整理事業を皮切りに、民間の区画整理組合事業の推進にも積極的に取組んできた結果、市域の多くで面的整備を実施し、狭あい道路の解消も含めたインフラ整備に努めてきた。本市の区画整理割合は他都市に比べ非常に高いが、それでもなお、局所的に老朽建物が密集している地域が残っており、狭あい道路も散在している実態がある。

昨年2月の市会本会議において、岡本市議(中川区:自民)が狭あい道路の解消に関して本会議質問を行い、市当局からも「他都市の事例を参考にしながら、条例化も視野に入れ取組む」との答弁があった。また、今年度、名古屋市は、条例を制定している代表的都市へのヒアリング調査や、災害発生時に住民への影響が大きいと考えられる木造住宅密集地域に対して減災に向けた取組みに関する聞き取りを行っている。

本市の多くの地域で実施されている土地区画整理事業のような面的整備は、かつては経済成長に伴う地価の上昇もあり、土地所有者や市民の十分な理解が比較的容易で、その結果として狭あい道路の解消を含めたインフラ整備に一定の成果を出してきた。それゆえ、面的整備を十分に行うことができなかった都市では、狭あい道路の問題も顕著となっている。

しかし、今日のような高齢化が進み経済成長が伸び悩む環境では、面的整備にかかる住民理解は得にくくなり、それに代わる取り組みが必要になってきている。

各都市とも、狭あい道路に対する対策はそれぞれの都市環境を背景に、市民意見の高まりなどそれぞれの事情に応じて取組みを進めているというのが実情で、本市においても参考となる都市との基盤形成の違いも十分に考慮した上で、市民の意見を反映し、かつ根本である減災・防災という行政目的の趣旨を実現できるよう、本市の実情にフィットする制度をしっかりと設計していく必要がある。

さて、ここで、条例化に向けた課題や検討について考えを述べたい。

まず、条例の制定にあたっては、効率的でかつ実効性の高い制度とするためには、緑政土木局の「寄付制度」、住宅都市局の「建築確認申請時の指導」との連携など、担当部局同士の連携が欠かせない。

建築確認申請時にはセットバック用地の整備や管理にかかる事前協議、道路用地提供に向けた寄付等の制度活用と、その利用を促す助成措置など、複数の部門にまたがるシステムをいかに効果的に連携させるかがポイントとなる。

そこで市当局には、まずは現行制度である「生活こみち整備促進事業」の内容拡充や対象区域の拡大、道路寄付制度との連携強化を促すなど、効果が期待できる仕組みづくりを求めたい。

また狭あい道路の改善を進めるためのもう一つ大きなポイントとして、住民の理解と意識醸成を促す必要がある。事業にあたってそれぞれの地域の歴史に根付いた界隈など街並みにマイナスとならない考え方や、地域住民の意向も含めた制度の仕組みづくりも大切だ。

そして、二項道路の延長・幅員・地形等を始めとした対象道路に関する現況調査などの事業規模把握に必要なデータ整理など、総事業費の概算にかかるデータも必要となる。

次に、条例に向けた2つの方向性については、他都市制度も参考に、現行制度の改善、例えば、助成内容の拡充・対象地区の増加等を先行して実施するなど、制度運用上の課題や影響を把握し、条例化に当たって参考となるデータも収集する必要がある。また、条例化に当たっては、最終的には現在の木造住宅密集地域だけでなく、市全体への展開も視野に入れて組み立てることも必要だろう。

なお、今後の条例制定に向けた流れとして、令和元年度は、参考となる岡崎市、横浜市、杉並区など他都市情報収集とその分析研究に取り組んできた。令和2年度には、本市の状況に合わせた制度設計や条例の考え方を整理し、事業規模や予算要求に繋げるデータ整理・分析等を実施する見込みとなっている。令和3年度の最終である令和4年2月定例会に条例案を提出し、議会の審査を経て、条例成立となることを目指したい。

いずれにしましても狭あい道路の解消は本市においても、引き続き“待ったなし”の重要な行政課題であり、土地家屋調査士会の皆様のお力を借りつつ、市関係当局とも一丸となって議会としても取り組んでいきたい。
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横井利明
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